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ドラゴンアヴェンジャー  作者: PIAS
第23章 ラテニア侵攻 後編

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第828話 殲滅には殲滅を


「おお……おおおぉッ! これがマルティネ様の御力……。あの凶悪なアンデッドが為す術なく倒れていくぞ!!」


「マルティネ様、ばんざーーーい!!」


「あれが……あれが真の奇跡っ! この目で見られただけでありがたい事じゃ……」


 光の使徒の参戦によって、一気に状況が変化した。

 ひとたび魔法を放つだけで、数百規模のアンデッドが倒れていく。

 その光景を見た帝国兵からは、心の底から歓喜が沸き上がってくる。

 しかしルドヴィークは苦い表情を隠しきれずにいた。


(彼らの犠牲に意味はあったのか?)


 ルドヴィークには予め光の使徒に対し、いざという時は協力を求めるように指示されていた。

 それはあくまで協力であって命令ではない。

 そして協力をお願いするにあたって条件が含まれていた。


 その条件とは、まず第一に水色の悪魔以外との戦いにおいては、基本的に手を貸さない事。

 ただし、復活の聖女の部位再生の魔法に関しては、治療対象が一定以上の強さを有する者に限ってはこれを許可する。

 またアメリアについては、【聖軍】が強力なので特別に戦闘への参加を許可するが、前線など危険な場所に出すことは認められない。


 そして水色の悪魔と戦う際にも、出来るだけ使徒たちの力は温存し、最初は帝国兵のみで当たるようにと言われていた。

 それも絶対的不利な状況……戦力的に9割程度の損失が出るまでは、光の使徒を戦場に出してはいけない、という厳しい条件もわざわざ指定されている。


 ルドヴィークも、水色の悪魔が強力なアンデッド軍団を有している事は知っている。

 だから最初にこの話を聞いた時は条件の変更を求めたのだが、一顧だにされなかった。


 光の使徒が所属しているのは教会であり、今回のこの指示は滅多に表に出てくることがない総大主教じきじきの指示である。

 そう伝えられても納得のいかなかったルドヴィークには、秘密裏にされていた事情も打ち明けられた。


 数年前のガンダルシア侵攻時、まだ帝国ではほとんど無名だった水色の悪魔によって、光の使徒がひとり命を奪われていたというのだ。

 だからこそ、今回は複数人の光の使徒を同行させ、なおかつ万全な状態で戦えるように、まずは帝国兵に戦ってもらう必要があるとの事だった。


(だが……あの様子を見るに、初めから彼女たちの力を借りた方が良かったのではないか? 肝心の水色の悪魔の姿も見えぬし、これでは兵はただ無駄死にしただけでは……)


 これまで何度も同じような事は経験してきた。

 神兵召集などというシステムと、国民の大半が狂信的な信者で構成されているこの国では、人の命ほど軽いものはない。

 だがだからこそ、ルドヴィークはこれまで自らの指揮によって少しでも犠牲を減らすべく、努力を重ねてきた。


 しかし現実はまたもや多くの犠牲を生んだ。

 アンデッド軍団との戦闘中に、光の使徒に何度も協力を要請したりもしたが、彼女達は教会から強く言い含められているので、目の前で同胞が死んでいこうと決して手を出そうとしなかった。


 次々にアンデッドを撃ち減らしていく様を見れば、例え開戦当初の5万のアンデッド相手だろうと、彼女達だけで対処出来たように見える。

 何せ彼女たちはあれだけの事をしでかしながら、マジックポーションなどの補給すらしていないのだ。


 魔力以外の何らかの力を消耗しているのかもしれないが、見た目から疲れなどは一切感じられず、凶悪な"奇跡"と呼ぶナニカを軽々と連続して使用している。

 そんな場面を見ても、犠牲者たる神兵や帝国兵は素直にマルティネの偉大さを喜ぶのみで、これをもっと早く使っていたらと非難する者はいない。







「これで終わり……か?」


 近くにいたアンデッドは最初の方で粗方倒したので、途中からは光の使徒が放つ魔法で、アンデッドが蹂躙される様子を眺めるだけだったルドヴィーク達。

 そうして30分もしない内に、まだ2万以上残っていたアンデッドの殆どが殲滅された。


 魔導具で弱体化されていたとはいえ、脅威度Ⅸのアンデッドをも含む大軍団をである。

 場合によっては、脅威度Ⅸの魔物1体で街が危機に陥るレベルと言われているので、とんでもない快挙だと言えよう。

 まだ戦場には範囲に漏れたのか、ギリギリ耐えたのか、完全に倒せていないアンデッドも残ってはいるが、ここまで来たらルドヴィークらが出るまでもなく、帝国兵だけで処理できる。


「結局水色の悪魔とやらはいなかったようですね! 戦場で出会ったら私のメイスで叩き潰してやろうと思っていたのですけど!」


「結局今回も俺の出番はあんま無かっ…………どうやら敵のお代わりみたいだぜ」


 あちらこちらに倒れたままのアンデッドの更に先。

 ヴロブリックに通じる街道の先から、大集団が迫ってきているのが見える。

 それはある程度距離があっても判別しやすい相手……妖魔主体のラテニアの軍勢であった。


「閣下! いつの間にかディルダグ方面の街道にも兵が回り込んでおります!」


 更には街道の反対側にも同じラテニア軍の兵が迫ってきていた。

 ただちに情報収集を行った結果、敵の総数は多大な犠牲を払った今の帝国軍の総数と同じ、おおよそ4万程度である事が判明する。

 しかし数は同じと言えど、すでに帝国軍は満身創痍の状態だ。

 このまま軍同士が戦っても勝ち目はない。


「はて、ラテニアの妖魔共は根絶やし対象ではあるが、我らが直接手出ししてよいものか」


「アメリアであれば問題なさそうですけど、すでに魔力の問題で聖軍も厳しいようですし、ここは様子見するのがいいのでは?」


 同数の敵が迫ってきているというのに、相変わらず光の使徒の面々は積極的に動こうとはしない。

 それだけ教会からの指示は彼女達にとって絶対であった。


「……奴らの動きが止まったな」


 ジッと前方を見つめていたサイラスが言う通り、地平線の先に見えたラテニア兵は、一定の距離に達すると足を止める。

 だがそのまま停止するのではなく、10人程の小集団に分かれて散発的に前に出てきた。


 それも全員がそうして前に出るのではなく、大半の兵はその場に留まっており、前に出ている小集団は極僅かだ。

 これは反対側の、ディルダグ方面の街道の兵も同じ動きを見せている。


「あれは……使徒殿の奇跡を恐れているのか?」


 凶悪な範囲攻撃魔術に対し、このように小集団で接近して術者を叩くという戦法もなくはない。

 だが疲弊した他の帝国兵とは違い、光の使徒を守るのはルドヴィークら精鋭中の精鋭だ。


「なればこちらから打って出る必要はない! 防御を固め、敵の魔術攻撃に備えよ!!」


 数十人程度が同時に襲い掛かってきたとしても、返り討ちに出来る自信がルドヴィークにはあった。

 ただこちらから打って出ても、他の兵たちが付いてこれない。

 敵からの接近を待ち、少しでも味方の兵を休ませようと、防戦の指示を出す。

 と、……そこまではまだよかった。

 だがルドヴィークの指示が実行されるより前に、戦場に異変が生じる。


「――――ッ!?」


 それはルドヴィークらにとっては天変地異のようなものであったが、それを行った人物達からすれば、既に何度か行った事のある見た事ある光景。

 広範囲を闇が覆い、大量の水が大きな津波となって襲いかかり、空から降り注ぐ隕石が湿原地帯に幾つもの穴を穿つ。


 4度に亘って起こったその天変地異は、ボロボロ状態だった帝国軍を完膚なきまでに叩きのめす。

 それはまるで、つい先ほど光の使徒によってアンデッド軍団が潰えていく様子を、そのままなぞっているかのようであった。


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