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ドラゴンアヴェンジャー  作者: PIAS
第23章 ラテニア侵攻 後編

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第826話 終わりの見えない戦い


「……水色の悪魔の動向が掴めないままだが、我々もアンデッド共の殲滅に加わる。ただし奴が現れた時の事を考え、全員で纏まって行動する」


 ルドヴィークが英雄クラスの者たちを集めて様子を見ていたのは、水色の悪魔が現れた際に全員でこれを討つ為である。

 それまでは戦いにも参加せず、力を温存しておく作戦だったのだが、肝心の水色の悪魔が現れなければどうしようもない。

 そこで少し作戦を変更し、自分達もアンデッドの対処を行う事を決める。

 ルドヴィークを中心とした超精鋭の一団が、戦場へとなだれ込んでいった。



◆◇◆



 一方生者と死者が入り乱れる戦場では、毎秒ごとに人の命が奪われるような過酷な状況にあった。

 未だ数の上では帝国軍の方が上であり、包囲も維持した状態だ。

 そしてアンデッドと言えど、無限の魔力を持っている訳でもないので、魔術メインのアンデッドは徐々に攻撃頻度が下がっている。


 ……にも関わらず、これだけの数で押しても倒れるアンデッドの数が少ない。

 正面から詰め寄る神兵ならまだしも、左右から押し寄せる方面軍ですら1体1体のアンデッドに苦戦している状況だ。


 最低レベルの脅威度Ⅵのアンデッドであれば、まだ2~3人の兵士で当たれば対応出来る。

 しかし脅威度Ⅶとなると、10人以上はいないと対処が難しい。

 弱体化したアンデッド軍団に、【聖軍】で強化された方面軍の兵士を持ってしてもこの状態なのだ。


 無論帝国兵の中にも飛びぬけた実力を持つ者はいるので、そういった者が率先して脅威度の高い魔物を引き受けている。

 戦乙女アメリアもその内のひとりだった。


「亡者よ! 神聖なる炎に焼かれて滅びなさい! 【白炎(びゃくえん)】」


 アメリアの神聖魔術が、ディープスペクターを焼き尽くす。

 脅威度Ⅷのディープスペクターは、非肉体系アンデッドなので通常の武器による攻撃などは効果がない。


 全体的に見ると数は少ないが、アンデッド軍団の中にはこうした非肉体系アンデッドも混じっており、神聖魔術をクラスⅩまで扱う事が出来るアメリアは、そういった厄介な魔物を率先して倒していた。


「っ、使徒様、魔物が!」


「下がっていなさい。私が相手します」


 類まれなる神聖魔術の使い手であるアメリアだが、彼女は魔術だけでなく近接戦闘をもこなす。

 全身はプレートアーマーで覆われ、頭部もヘルムによってほとんど顔も識別できない程ガッチリとした装備をしている。


 そして武器として使用するのは、裁断の聖剣ディヴァイン・ジャッジという名の大剣。

 腐食防止や耐久性強化などの効果の他に、神聖属性の魔力を流し込む事で強力な神聖属性を纏わせる事が出来る。


 白く輝く巨大な剣を右手に掲げるようにして持つアメリアの姿は、まさに戦乙女の名に相応しい。

 襲い掛かってきたアンデッド達は、苦手な神聖属性を纏う大剣によって、次々打ち倒されていく。


 クラスⅩの神聖魔術と、大剣を軽々と振り回して戦う近接戦闘能力。

 その他にアメリアは魔法を1つ使う事が出来た。

 その魔法の名前は『アドバンスドボディ』という魔法で、効果としては神聖魔術の【聖なる肉体】や【霊体強化】と同じで、一時的に最大HPを増大させるというものだ。


 かつて影治が戦った断罪の聖女は、裁きの光という魔法を使っていた。

 それは強烈な光属性を持つ攻撃魔法だったが、光の使徒が使える魔法は何も攻撃魔法だけではない。

 アメリアのアドバンスドボディもそうだし、復活の聖女は『パーフェクトリジェネレーション』という、完全部位再生の魔法を使うことが出来る。

 六暴聖のひとり、アルバァの切断された腕を再生させたのも復活の聖女の力によるものだった。


「……数が多いし、魔力は極力抑えめにいかないとマズイですね」


 幾ら切り倒しても、次から次へとお代わりが出てくる状況にも関わらず、アメリアの表情に不安の色はない。

 ただ淡々とアンデッドを切り伏せ、作業的に倒していく。

 アドバンスドボディでは、最大HPは大幅に増大するが、体力までは強化されない。

 徐々に疲労が蓄積していくのを感じながらも、アメリアはただひたすら戦い続けた。



◆◇◆



 他方では、アンデッド殲滅に動き出したルドヴィーク達が、苦戦している所を中心に移動を繰り返し、戦果を挙げていた。

 こちらは精鋭の中の精鋭が集められた集団なので、高位のアンデッドを相手に互角以上の戦いをすることが出来ている。


「かぁー、アンデッド相手に俺の暗黒魔術は相性よくねえと思うんだけどなあ」


「サイラスは魔力温存気味で構わない。アスドルバルもヒーラーとして重要だから、攻撃の為の光魔術は控えておけ」


「ええ、ええ、それは構いませんとも。私にはこのデッドストライクがありますからね!」


 アスドルバルが手にしているメイスは、打撃部分の頭部や柄の部分に血がこびりついたような跡がある。

 光槌将軍などと呼ばれている者が持つにしては物騒な見た目をしているが、これは単に光魔術とメイスをメイン武器にしているから付けられた名であって、この物騒な武器でこれまでアスドルバルは幾人もの亜人や妖魔をミンチにしてきた。


「あちらの味方が苦戦しているようだ。ここから真っ直ぐ強引に突破して援護に向かう!」


「へいへい」


「ならば私がこのメイスで道を切り開いて見せましょう!」


 歴戦の将軍だけあって、敵味方入り乱れる戦場であっても常にルドヴィークは冷静であった。

 周囲の状況を的確に判断し、指示を出す。

 苦戦していた味方が相手していたのは、1体のグールキングをはじめとするアンデッド軍団の中でも脅威度高めの集団だった。

 そしてその集団の中に、ルドヴィークは見知った顔を発見する。


「ルボル……か」


「これはこれは、ルドヴィーク将軍閣下じゃねえですか」


「お前程の男であってもアンデッド化は免れなかったか」


「ああ。あんたの命令のお陰で、今はこうして動く死体になっちまった。でもまあ、アンデッドってのも悪くねえ。余計なしがらみから解き放たれたからな」


「余計なしがらみ……」


「あんたも俺と同じタイプじゃねえのか? あの狂った国の中で、あんたはまともな目をしていた……っと」


 会話の途中ではあったが、何も言わずにアスドルバルがメイスで殴り掛かる。

 それを間一髪という所で躱すルボル。

 だが構わずアスドルバルはメイスを振り続ける。

 その姿にいつもの明るい雰囲気はなく、血走った目をした狂信者の姿がそこにはあった。


 結局ルボルとの話はそこで中断されたまま、ルドヴィーク達も戦いに加わる。

 集められた精鋭のルドヴィーク達は、未だに効果を発揮し続けているセラフィック・グレイヴの効果もあって、脅威度ⅧやⅨの魔物小集団を相手に有利に戦いを進めていく。


「ちっ、ここまで……か」


「今度こそ永遠に眠れ、ルボル」


 最終的にルボルにトドメを刺したのはルドヴィークだった。

 彼の周囲にいた他の高位アンデッド達も、次々に討ち取られていく。


 ドンッドンッ!


 既に力尽きて倒れたルボルの死体に、アスドルバルのメイスが何度も叩き付けられる。

 すでにトドメはルドヴィークが刺した。

 だがアスドルバルのメイスは、ルボルだったものの原型が分からなくなるまで止まらない。


「アスドルバル、もういいだろう。まだまだ敵はいるのだぞ」


「………………ほんとだ! まだまだいっぱい叩き潰さないといけない奴がいるんでした! いやー、ちょっと熱くなっちゃったかもしれませんね!」


 まるでスイッチを切り替えたかのように、目の色がいつもの状態に戻る。

 だが果たしてどちらが元の状態なのか。

 それはルドヴィークにも判断がつかないところだった。


 ともあれ、落ち着きを取り戻したアスドルバルや他の精鋭の仲間達を引き連れ、ルドヴィークはアンデッド達を屠って回る。

 しかし時間が経過するにつれ、徐々に帝国軍の勢いは弱まっていく。


 魔力をほぼ使い果たした魔術メインのアンデッドが次々倒されてはいたが、他の近接系アンデッド達の勢いは止まらないままだった。

 それに対して帝国軍の兵は、いくら信仰心や士気の高さで肉体の限界を無視して動こうとしても、体力の限界というものが必ず訪れる。

 その点において、アンデッドとの長期戦は体力に限界のある人間達には圧倒的に不利だった。


 街道の一画には臨時の陣地が構築され、そこでは負傷兵の治療や疲労で動けなくなった兵の休憩が交代で行われた。

 想定以上の長期戦になっているが、未だに対アンデッド向けの魔導具の効果は持続しているし、【聖軍】についても先ほど3度目が発動されている。


 軍隊規模という対象の大きさの割に、【聖軍】は効果時間もかなり長い。

 だがそれでもここまで長時間の戦いとなると、流石に1度の使用だけでは効果が途切れてしまう。


 臨時の陣地では、大量に用意された各種ポーションが消費されていく。

 傷を癒すヒールポーションだけでなく、スタミナポーションもかなり大量に用意されていたのだが、その在庫もほぼ尽きている。


 マジックポーションの方も、既に魔術師が魔力酔いするまでがぶ飲みしている状況で、こちらはまだ在庫は多少残っているが、これ以上飲んでも戦える状態を維持出来ず、これ以上の消費が出来ない状態だ。


 戦場には湿原が広がっているが、帝国兵士達はまるで泥沼に肩まで浸かったかのような状況が続いていた。


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