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ドラゴンアヴェンジャー  作者: PIAS
第23章 ラテニア侵攻 後編

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第816話 サマル式合流


 翌日に影響しない程度に話し合ったヴェリアスとエリーだったが、結局これといった解決策は思いつかなかった。

 そもそも帝国が単独で闘える程度の国なら、対ハベイシア同盟は成立していない。

 リニア同盟、ラヴェリア闇国、ラテニア連合国の3国が力を合わせるからこそ、帝国と互角に立ち向かえるのだ。


 しかしラヴェリアは国内の問題とやらで、前線から兵を撤退させるだけに留まらず、クゥに乗って直接ラヴェリアに乗り込み、直ちに兵を派遣するように要請しても、聞き入れられなかった。


 リニア同盟の方はと言えば、こちらも帝国の大軍に攻められている状況で、ラテニア同様に国中から戦える者を結集して対処している所だった。

 定期的にその辺りの情報がラテニア側にも届けられているが、数だけで言えばリニア側に攻め込んでいる方が多い。


 尤もその大半は神兵であり、ラテニア砦で使用された魂爆珠や幻影を生む魔導具などは、ほとんど投入されていなかった。

 帝国の正規兵である方面軍の大半と、四将軍や聖なる暴虐団などの主要な戦力は全てラテニアに向けられている。


「最悪国外や山奥なんかに民を避難させる必要もあるわね」


「そうだね。奴ら(帝国)の狙いは領土とか労働力なんかじゃなくて、僕たち(妖魔)を根絶やしにすること。生まれ育った地を離れるのは辛いけど、他所の地に移ってでも根を守らなければ」


 翌朝になって行軍は再開されたが、エリーはクゥの上には乗らず地上でヴェリアスと共に移動していた。

 クゥとは距離が離れていても、契約者同士の繋がりで簡単な意思疎通は出来る。


「逃げるにしても、ラヴェリアは信用できない。そうなると、ガンダルシアかカベリア?」


 抑揚のない声でエリーとヴェリアスの会話に入ってきたのは、黒髪の12、3歳くらいの少女だった。

 その髪色はエリーと同じ色をしているが、別に血縁関係がある訳ではない。

 クールで冷たい印象のあるエリーとは違い、少女の方はアンドロイドのように感情を表に出しておらず、抑揚のない一定の声質からも感情を読み取る事は出来なかった。


「そうね、でもそれは最後の手段よ。ヴェル、剣王とその娘のナンバーズは協力を約束してくれたのね?」


「うん。選神会としても、ガークランが奪われるのはよろしくないって判断みたいだね」


 エリーの言う剣王とは、ガルダの古い二つ名だ。

 最近は表立って目立つ行動も減ったので、その名を知るのは長命種族の者や言い伝えなどで聞き及んでいる者くらいだろう。


「そう。他のナンバーズの方は?」


「そっちは相変わらずダメみたい。時間を掛ければ連絡だけは出来るみたいだけど、協力してもらえるかは分からないし、何よりそこまで時間に余裕がないよ」


「じゃあ例の邪竜殺しはどうなの?」


「そうだわ。そう言えば影治が私にコンタクトを取りたいって話があったわね。その辺どうなってるのかしら?」


 黒髪の少女の言葉を聞いて、影治の事を思い出すエリー。

 ハッキリと方法までは掴めていないが、影治がかつてガンダルシアに侵攻してきた帝国軍10万を破った事は調べさせたので知っている。

 その後の追加調査で、影治が帝国に憎しみを抱いている事も突き止めていた。

 であれば力を借りる事が出来たら、この最悪な状況をひっくり返せる可能性もある。


「どうなってるも何も、僕がズライロッジでエイジと別れた後は、アドラーバーに向かっていった筈だよ。途中アーカースで牛魔窟に寄り道してたようだけど、その後アドラーバーを訪ねたって報告はあった。会っていなかったの?」


「ええっ? 会っていないわよ!」


「ねえ、エリー。もしかして竜殺しがアドラーバーに来たのって、ラヴェリアに向かった後なんじゃない?」


「……その可能性はあるわね」


「僕はあくまで仲介役だから詳しく知らなかったけど、結局会えなかったのか。そうなると困ったな。実はそれ以降のエイジ達の動きが全く掴めていないんだよね」


 ゲートキーで一瞬で移動したり、高速で休まず移動できるドラゴンベースを使っている影治達の動きは、なかなか把握するのが難しい。

 レイミーも影治の行方を追い切れていなかったが、それはヴェリアスも同じであった。


「ヴェリアス様! 前方より妙な物体が接近しております!!」


「妙な物体?」


 4000弱にまで減らされたとはいえ、1000人単位で移動しているので周囲には人が溢れている。

 ヴェリアス達は部隊の中央付近にいるので、この位置からは前方から迫ってくるという物体とやらが見えない。

 そこで自分の目で確認しようと、前に出るヴェリアス。

 エリーと黒髪の少女もその後に続く。


「……あれって確か」


「ちょっと! あれ自動車じゃない!!」


「もしかして、あの後ろに乗ってるのってレイミー?」


 噂をすれば何とやら。

 影治について話をしている所に、丁度その本人たちが乗った魔導車がやってくる。

 メインのドラゴンベースはリュシェル達が使っているので、今使っているのは予備の専用車だ。


 その予備の専用車はキャンピングカーの見た目をしたドラゴンベースとは違い、少しサイズの大きいクロスカントリー車のような見た目をしている。

 そして車の後ろには本体の車部分とは違って、簡素な造りをした荷台のような部分がけん引されており、ふわふわと浮かぶその荷台の上にはレイミーが雑に乗せられていた。


 魔導車の後部に荷台が連結されているので、カーブなどで曲がった時くらいにしかレイミーの姿をハッキリ確認できなかったが、チラチラ姿は見えていたこともあって兵士達に緊張の色はない。

 何か妙な魔導具に乗ってレイミーが先んじて救援に駆け付けた、といった認識だ。


 兵士達の注目を浴びる中、魔導車は撤退途中の部隊の先頭近くで止まると、中から影治たちが降りてくる。

 だがそのまますぐに兵士達の方に近寄るのではなく、まずは荷台に乗せたレイミーを下すと、彼女と一緒に改めて前に出た。


「おお、ヴェリアス。無事じゃったのか。それにエリーも来ておるとは……」


「ああ、うん。無事……とは言えないけど、こうしてまたおめおめと生き残ってしまったよ」


「久しぶりね、レイミー。それで、そっちにいるのがもしかしなくても影治かしら?」


 最初に車を見た時点から、エリーはそれが転生者が関係してるだろう事が分かっていた。

 そしてその車から降りてきたのが、目立つ水色の髪の少年の見た目をしていたことで、すぐにその正体に気づく。

 報告でしか聞いていないが、周りには動く箱や謎の鳥までいるのでまず間違いないだろう。


「今レイミーから名前がチラッと出たが、そういうお前はビュクロスの土産物屋にけん玉とかを伝えたエリーか?」


「ふ、ふふふっ、そうね。そんなもんを仕込んでもいたわね。そうよ、私がエリーよ」


「やっぱそうか。お前とは色々話したいことがあるんだが、今はベチャクチャ喋ってる暇はねえ。まずは邪魔者を蹴散らしてこよう。状況は伝令兵からある程度は聞いてるが、詳しい状況を教えてくれ」


 ようやく出会ったエリーと影治だが、今はいつ帝国兵が追いついてくるか分からない状況だ。

 昨日からの話し合いの中で、影治にどうやって協力を求めるかについても話し合っていた2人だが、どうやらすでにレイミーと話を通したのか、加勢してくれる様子だった。


「ああ、えっとじゃあ簡単に説明するよ」


 そこでヴェリアスは余計な事を口にせず、求められた情報をそのまま伝える。

 残りの敵兵の推定数や注意すべき点など、簡潔に伝えていく。


「ふむ、ふむ……。大体状況は分かった。じゃあちょっくら行ってくる」


「ちょっと待ちなさい! あなた達だけで行くつもり?」


「そうだが?」


「そうだが? じゃないでしょ! 確かに以前帝国の大軍を打ち破ったとは聞いたけど、それってあれよね。デュレイスを破ったアンデッドの大軍を使ったのでしょう? でも今そんなアンデッドの大軍はいないようだけど、どうするつもりなのかしら?」


「エイジ。ドローズグでの話は聞いてるけど、数で言えば今回は数倍にもなる。それに数は少ないけど、帝国兵の中にはオークキングとやりあえる奴だっているんだよ?」


「それがどうしたってんだ。こんな前座ごときで躓いてたら、帝国なんか相手にしてられねえだろうが」


「ぜ、前座って……」


 この街道の先から、数万の魔獣を駆る大部隊が迫っているというのに、影治にはまるで意に介した様子もなかった。


「ぐだぐだ喋ってる暇はねえんだろ? 話はまた後にして、先に奴らを潰してくる」


 これ以上話してる時間はないと、魔導車に乗りこむ影治達。

 その様子を理解出来ないといった感じで、ヴェアリアスとエリーが呆然と見送る。


「ちょ、ちょっと待っとくれ! ワシも連れて行ってもらうよ!」


 そしていざ発進という段になって、慌てたようにレイミーが待ったをかけた。


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