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ドラゴンアヴェンジャー  作者: PIAS
第22章 ラテニア侵攻 前編

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第803話 上位解呪


「向かうとすればゾボロの町になるじゃろうが、そこまでどうやって行くつもりじゃ? ディルダグは既に帝国の手に落ちておるのだぞ」


「なあに、俺等にはドラゴンベースっつう特別な移動手段がある。態々街道を通らんでも、それなりの早さで移動できるぜ」


「……時折お主らの行方が追えなくなるのはそのせいか」


 それに関してはゲートキーを使用しているせいなのだが、敢えて言う事もないとその事には触れず話を続ける。


「まあ街道を外れた場所には大概魔物もウヨウヨしてるもんだが、俺等ならそれも問題ねえ。こっからなら真っ直ぐ西に向かえば、ディルダグとゾボロを繋ぐ支道にぶつかるだろ」


「お主ら全員で向かうつもりなのか?」


「そのつもりだぜ。正直ゾボロにはほとんど立ち寄っちゃあいないが、ガークランの町は今後選神碑を拝みに行く時に、また立ち寄る事もあるだろう。帝国の連中にぶっ潰されるのを黙って見てられねえ。あそこのダンジョンもまだ入ってねえしな」


「……1つ提案があるのじゃがよいか?」


「何だ? 言ってみな」


 提案があるというレイミーを影治が促すが、どう話を切り出すか迷っているのか、しばし会話がそこで止まる。

 だが迷っていても仕方ないと判断したのか、提案について話し始めた。


「実はな。先行している帝国の騎兵部隊が、ここヴロブリックに迫ってきておる。8万近い大軍をもってな」


「まだそんだけ騎獣が残ってやがったか」


「リバーマンの防衛戦では、それなりに帝国にも被害を与えたのじゃがな。攻城戦では出番も余りなかったせいか、無事な騎獣が多かったのじゃ」


「でも騎兵部隊だけじゃあ、この街は落とせねえだろ?」


「この街は落とせずとも、周辺の村は太刀打ちできぬ。それにここを通り抜けて、後方の街や村を襲われると甚大な被害となるじゃろう」


 別動隊と呼ぶには規模が大きすぎるが、まだ避難準備も整っていない後方の小さな町や村などを襲われてしまうと、碌に抵抗は出来ないだろう。

 8万という兵力ともなると、補給の問題などもあって通常はそのように敵地の奥で暴れ回れるものでもないのだが、収納魔導具(アイテムボックス)があるこの世界だと地球での兵站の考え方は通用しない。


 また8万の兵が纏まって動くのではなく、幾つもの部隊に分かれてラテニア中で暴れ回られた場合は致命的だ。

 その場合、分散した部隊は攻め落とした村から食料を根こそぎ奪い、住民を皆殺しにしていく。

 それによって、ラテニア全体で食料生産力が落ち、住民が皆殺しにされることで国力も大きく低下する。


 狂信者の集団は、無抵抗な女子供であろうと神の名の下に命を奪う。

 遠く本国から離れた地で、突出した敵地の奥深くで孤立していようと、信仰心によって不安を感じる事もない。

 ラテニアの民からすれば、悪魔の軍勢といった所だろう。


「なるほど、それは厄介ですね……」


 訥々と騎兵部隊の脅威を語るレイミー。

 それを聞き、これまで黙って話を聞いていたリュシェルが渋い表情を浮かべた。


「つまりあんたとしては、ゾボロに向かうよりもまず先に騎兵部隊を何とかしてほしいってことか?」


「ワシもお主らの実力が具体的にどの程度かは知らぬが、全員でゾボロに向かうには過剰戦力じゃろう。パーティーを2つに分けることは出来ぬのか?」


「ふうむ、パーティーを2つに……」


 レイミーの提案を十分検討の余地があると思った影治は、申し出について考えを巡らせる。

 

「私は2つに分けるのに賛成ですわ」


「私もカレンと同じです。このまま騎兵部隊を放置するのは危険でしょう」


「切羽詰まった事態でなけりゃあ、全員で向かえばよかったんだがな。話を聞いちまった以上、俺も2つに分けるのは賛成だ。反対意見はあるか?」


 最後に影治が仲間達に尋ねるも、誰からも反対意見は出なかった。

 となると、どのような編成をするのかという話になる。

 影治が出した素案を基に話し合いが進められ、以下のような編成が決まった。


 まず騎兵部隊に対処するパーティーは影治、ピー助、ウルザミィ、セルマ、チェス、カレン。

 残りのメンバーがドラゴンベースに乗って、ゾボロに向かうメンバーと決まる。

 これは主に広範囲に攻撃できる者と、そうでない者とで分けられた。

 後は治癒役として、ゾボロ組にはティアが加わっている。


「割り振りが決まったようじゃな。では早速で悪いのじゃが、すぐにでも行動を開始してもらいたい。ディルダグからは既にゾボロに向けて兵が出陣しておるし、実はこの街からも既に騎兵部隊に対処する為に、ヴェリアスが出ておるのじゃ」


「ヴェリアスが? いねえとは聞いてたが、出陣してたとはな」


「いかに王種の吸血鬼といえど、リバーマンの防衛線で連日戦い続けた疲れがまだ抜けきっておらん。ヴェリアスを助けてやってくれ」


「それは勿論構わねえんだが、あんたは一緒に出なかったのか?」


「……今のワシは役立たずの無能じゃ。出来る事といったら、そこに溜まっておる書類仕事くらいでな」


「ああん? どうしたってんだよ。急に老け込みでもしたかあ?」


 上半身が女性の姿をしているレイミーだが、その人間部分の見た目は30代か40代くらいの女性に見える。

 ラミアの中にはもっと年老いた見た目の者もいるので、まだまだ長生きはしそうだ。


「はぁぁぁぁ……、情けない事に呪いを食らっちまってね。魔術が一切使えなくなったのじゃ」


「へぇ、そんな呪いもあるんだな。でもそんなら解呪すればいいだけじゃねえか」


「そんくらいワシも試しておるわ! じゃが、よっぽど等級の高い迷宮遺物を用いたのじゃろう。もしかしたら、呪具の類だったのかもしれん。幾ら解呪を試みても、成功しなかったのじゃ」


「広大な国土を持つ帝国が、何百年も蒐集してきた迷宮遺物か。今回の侵攻では本当に惜しみなく使われてるみてえだな」


「こちらでも各地からかき集めた使えそうな魔導具を、ここヴロブリックにかき集めておる所じゃ。そこの書類の山も、各地から集められた人や物に関する報告書が多い」


「ふうん……。ちょっと試してみてもいいか?」


 それはちょっとした思い付きでの発言だったが、影治にはそれなりの自信があっての発言だった。

 呪いに関しては、以前自力で回復魔術の【解呪】を発掘したこともある。


「試す? まさかワシの呪いの解呪をか?」


「それ以外、何があるってんだ」


「じゃがこの呪いは……いや、お主なら分からぬか。試してみてもらえるか?」


 呪いというのは余程強力な呪いでもない限り、時間経過や繰り返し解呪系の魔術などを使用することで、効果を軽減させる事が出来る。

 レイミーも当然その辺りは試しているのだが、使用された呪具がかなり凶悪だったのか、まったく効果が表れなかった。


「まずは……そうだな。こいつでいこうか、【解呪】」


 最初に使用したのは回復魔術の【解呪】だ。

 光魔術のように派手にな光を発しはしないが、同時詠唱で8つも同時に発動されたせいか、レイミーの体からはそれなりに眩い光が溢れる。


「どうだ?」


「……これまでで一番効果があるように感じたが、治ってはおらん」


「そうか。んじゃあ、次いくぞ次!」


 治ってないと聞いても落ち込んだ様子もなく、影治は次の魔術を試す。

 次に試すのは【散呪の燐光】という光魔術だ。

 こちらはクラスⅧと【解呪】よりは2つも上の魔術である。

 これも8重に発動させてみたのだが、レイミーの呪いが解除される事はなかった。


「こいつもダメか……」


「ワシも改めて呪いに関して調べたのじゃが、呪いというのは効果そのものが強力なものほど、解除がしやすいらしい。数日のうちに死ぬような呪いや、寿命を削るような呪いなどじゃな。それに比べ、ワシの呪いは魔術を封じるだけで命に別状はない。この手の呪いは逆に完全な解呪が難しいと言う」


「ハッ、望むところだ。こっからは新たな領域への挑戦だぜ」


 そう言うと影治は強固な集中状態に入った。

 付き合いの長いリュシェルやティアなどは、その様子を見てすぐに影治が何をしているのか理解する。


「エイジ……エイジ? のお、お主ら。急にエイジが黙りこくったのじゃが、一体どうしたと言うのじゃ?」


「気にしないでいーわよ。いつものことだから」


「いつものことじゃと?」


「エイジ様は開発モードに入りました。恐らく何か目算があるのでしょう」


 戸惑うレイミーをよそに、リュシェル達はいつもの事と落ち着いた様子だ。

 1度こうなったらしばらくは帰ってこないので、その間にリュシェル達は軽食を取ったり、レイミーと話をしたりして過ごす。


「よしっ! 行けそうだ! 【上位解呪】」


 30分ほどして影治が威勢よく声を上げると、早速レイミーに発掘したばかりの魔術を使用した。

 その魔術は【解呪】の上位魔術の【上位解呪】。

 なんとクラスⅩの回復魔術である。

 死霊魔術、土魔術、無属性魔術に続いての、クラスⅩ到達は回復魔術となった。


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