表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドラゴンアヴェンジャー  作者: PIAS
第22章 ラテニア侵攻 前編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

853/1076

第802話 情報交換


「して、ワシらが知らない情報とはどういった内容なのじゃ?」


 テーブルの上に出されたお茶は、緑茶とハーブティーを合わせたような変わった味であったが、薄く入れてあるせいか初めての影治にも飲みやすく、半分ほど飲み干してしまった。

 その飲み終わるタイミングに合わせ、早速レイミーが話を詰めてくる。


「そうだな。今回帝国が動員している兵力について……とかか」


「それなら実際に攻め込まれておるのじゃから承知しておる」


「それはラテニア方面の兵力だろ? リニア方面の情報はどうなんだ?」


「……帝国北西部にあるバウッシュの街から、大軍が押し寄せてきたと連絡があった」


「お、知ってたのか」


「詳細までは分からぬがな。ギルド経由で連絡があったが、ここ2週間ほどは連絡も途絶えがちじゃ」


「そうか。実際に攻め込まれてんなら、ギルド経由ってのもあったか」


 冒険者ギルドは、シャルネイア大陸だけでなく、となりのブロマシア大陸にも広く存在しているが、国境を超えた1つの組織という訳ではない。

 傭兵ギルドとは違い、国同士の争いに冒険者が関わらないという点は各国共通だが、他国のギルドとの間ではそれほど交流が盛んとは言えなかった。

 だが流石に今回リニア同盟に侵攻してきた帝国の情報は、ラテニアにも伝えられていたようだ。


「だが連絡してる余裕もねえってことかもな。なんせ、120万近くの神兵がおくりこまれてるようだからな」


「120万じゃと? お主、その情報をどこで聞いたのじゃ?」


「帝国に忍び込ませてた奴からの情報だ。今回の大侵攻計画は、防諜にもかなり気を遣ってたみてえだな。色々な所から忍び込んでいた間諜達も、軒並み蹴散らされるか撤退するかに追い込まれたって聞いたぜ。今回ラテニアの動きが遅かったのも、情報が届いてなかったからなんだろ?」


「……お主が騒ぎを持ちこんだせいもあるのじゃぞ」


「それに関しちゃあ、ほんと間が悪かったとしか言えねえ。とにかく、帝国はリニア側にも神兵120万、傭兵が恐らく10万ほど。その大兵力を北方面軍の第1師団が纏めてるみてえだが、全体の兵の振り分けからして今回のメインはラテニアへの侵攻だろうよ」


 リニア同盟側の戦況についても、影治はグルシャスから報告を受けていた。

 単純な兵数で言えば断然リニア侵攻軍の方が多いのだが、その大半が召集された神兵である。

 10万もの魔獣を用意して、ガンガン突き進んでいるラテニア方面とは違い、リニア方面では進行速度は遅く、まだ1つも街を落とせていない。


 しかしこのリニア攻めによって、リニア同盟としては兵力をそこに集中せざるを得ず、同じく攻め込まれているラテニアへ兵を回す余裕がなかった。

 その上、今回の侵攻が始まる直前に、ラテニア砦からラヴェリア兵が撤退して以来、何度も援軍を出すよう要請しているのに、ラヴェリア側からはまるっきり返事が来ない。

 対ハベイシア同盟を結んでいるというのに、リニア同盟もラテニア連合国も結局自国の戦力だけで、帝国に対応している状況だ。


「うむ、今回の帝国の力の入れようは尋常ではない。お主が言う様に、我々の諜報網にはこのような大規模な計画が進行しているという報告が来なかった。それで大きく出遅れてしまった訳なのじゃが……」


「それに加えこれまでにない大兵力。傭兵隊に与えられた10万もの魔獣。ラテニア砦攻略の際に用いられた魔導具や、リバーマンの街に使用された死者の杖など、これまでため込んできたもんを全部出してきてやがる」


「……耳が早いな。どこまで知っておるのじゃ?」


「ユロージズが落ちたってのは聞いた。ディルダグも守備兵だけ残して住民を避難させたとは聞いたが、今どうなっているのかは知らねえ」


「ふむ、そうか。なら情報の更新をしてやろう。ディルダグも既に落ちた」


「なにっ?」


 ディルダグは放棄が決定したが、最低限の守備兵を残して時間稼ぎをしているという情報は仕入れていた。

 なのでまだもう少しは耐えるだろうと思っていただけに、影治達は既に落ちたと聞いて驚く。


「僅かな守備兵しか置いてない事を逆手に、特殊部隊を直接中に送り込んだようじゃ。元々ディルダグは守りにくいとは思っておったが、想定以上に帝国の進軍は早い」


「みてえだな」


「そして本隊はまだディルダグには到着していないが、相変わらず騎兵部隊が先行しておる。奴らは街近辺の村をかたっぱしから焼き払っていきおる。早い内に住民を避難させといて正解じゃったわい」


 自分達が利用する為か、街まではいちいち焼き払ったりはしていないようだが、周辺にある村や小さな町などは容赦なく破壊されている。

 しかし中には連絡が届いていない村や、生まれ育った場所から逃げるのを拒否する者達もいるようで、そうした者達は容赦なく帝国兵に惨殺されていた。


「じゃが余り逃げ回ってばかりいても限度はある。街の様子を見ても分かるように、ワシらは一旦ここヴロブリックで帝国軍を迎え撃つつもりじゃ」


「それはいいんだが、ゾボロやガークランはどうすんだ? もう逃げ出した後なのか?」


 かつて影治達が選神碑を見に行った際に、ディルダグの街から支道に入って、選神碑近くのガークランの町まで移動した事がある。

 恐らくは今もガークランにはガルダやローズが暮らしているはずで、多少の関わりを持ってしまった相手なだけに、影治としてもそこが気になった。


「兵は既に差し向けられておるが、優先度はそこまで高くないと見ておる。そもそもあの地域は山道が多く、大軍が移動するには向いていない。騎兵の移動などは以っての他じゃ」


「その言い方だと、避難はしてねえってことか?」


「うむ……。正直、どちらがいいのかワシにも判断はつかぬが、他の町や村のように徹底的に破壊されると困るのじゃ。あれらの町には鉱山やダンジョンがあるからの」


 実はユロージズからディルダグの街までの間にも、支道が存在する。

 この支道の突き当りにはカーザスという町があった。

 そこはグァラルン山脈の麓近くに位置する町で、鉱業を主産業にしている。

 ラテニア砦や要塞都市にも、ここで採掘された金属を使った装備が用いられるなど、小さいながらも重要拠点と言える町だった。


 だがこの町は他の主要な街や街道からは外れた場所にあるので、帝国軍の侵攻の早さに避難する時間が取れなかった。

 帝国兵は態々騎兵隊の一部を割き、辺鄙な場所にあるカーザスの町にまで兵を差し向けている。


 仕方なく危険な山の方や、鉱山の中に逃げ込んだ者達もいたが、帝国兵の執拗な攻撃は町を火に包むだけでなく、鉱山の入り口部分を崩落させて埋めるなど、徹底的なものだった。

 これにより、鉱山内部に逃げた者の大半は外に出る事が出来ずに息絶え、危険な山に逃げた者の大半も魔物にやられるなりしている。


「それで町の者達に意志を確認した結果、徹底抗戦することが決まった。軍からも精鋭を配置しておるし、元々ガークランの町には強者が隠れ住んでおってな。今回その方達に協力を要請したところ、了承してもらえたのじゃ」


「ガークランの強者ってぇと、ガルダやローズの事か?」


「っ! そう……か。知っておるのか。そう言えばお主らは選神碑に向かったのじゃったな」


「まあな。興味深い奴らだったぜ」


「ガークランには彼らほどではないが、他にもかなりの使い手が潜んでおる。ただでさえ大軍が行動しにくい場所のうえ、相手は強者揃い。恐らくは帝国もそこまであの支道に兵を差し向ける事もないじゃろう」


「いや、どうかな。相手はあの帝国だぜ?」


「無理にでも攻めようというなら、それもまた良しじゃ。それだけ敵に被害が出るという事じゃからな」


 数の有利が保証されない地形で、ゲリラ的に抵抗されるのはかなり厄介だ。

 だが影治が言う様に、帝国の狂信者達であれば味方の屍を乗り越えて、進軍してくる可能性も考えられる。


「そんなら俺等がそこに参加して、更に被害を拡大させてやろうじゃねえか」


 飲み干されたお茶のカップが、カチャッと音を立てながらソーサーの上に置かれる。

 お茶の美味しさに満足した様子の影治は、不敵な笑みを浮かべるとそう言い放った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング

完結しました! こちらもよろしくお願いします! ↓からクリックで飛べます!

どこかで見たような異世界物語

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ