表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドラゴンアヴェンジャー  作者: PIAS
第22章 ラテニア侵攻 前編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

850/1079

第799話 現在の戦況


◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「エイジ様。派遣していた天翼からの報告が届きました。今回の帝国の軍事行動は規模が桁違いに大きいだけでなく、その進軍速度もこれまでとは大違いのようです」


 バベル内の極一部の者しか入室を許されない部屋。

 そこで影治はグルシャスからの報告を受けていた。


 ラテニアでの用事を幾つか済ませ、最後に会いにいったエリーとすれ違った影治達は、一旦ニューホープに戻って情報を集めていた。

 しかし長い年月をかけて大陸中に諜報網を敷いていたレイノルズも、今回は情報集めに苦戦している。

 そこで天使だけで構成された天翼と呼ばれる者達を派遣し、前線の様子を探らせていたのだが、その報告がようやく影治の下まで齎された。


「つうことは、前線のラテニア砦はもう抜かれたか」


「それどころではありません。既にその先にある、要塞都市リバーマンも陥落したとの事です」


「……何だと?」


 魔術が存在するこの世界でも、砦やら城やらというのはそう簡単に攻略できるものではない。

 現にラテニア砦は一時的に奪われる事はあろうと、ここ数百年のあいだ帝国の侵攻を食い止めてきた。


 その先にある最前線の要塞都市も、実際ここまで帝国が本格的に攻めてきた事はほとんどなかったが、地理的にも物資などを運びやすいこともあって、しっかりとした要塞が築かれている。

 影治としては前線の砦だけならまだしも、要塞都市まで落とされるというのは想定外だった。


「確かに以前の報告で200万近い兵が動いているとは聞いたけど、だからこそ進軍速度はもっと緩くなると思ったんだけどな。全軍がラテニアに向かってんのか?」


「いえ。一番数が多い神兵の大半は、北のリニア同盟に向けられております。神兵や傭兵。それから北方面軍1個師団は帝国北部のバウッシュの街に進軍しており、その数およそ120~140万ほどとの事。残りが全てラテニアに侵攻しているようです」


「数にすれば半数以下だが……」


「ええ。質的にはラテニア侵攻軍の方が上です。北方面軍と東方面軍の内、北方面軍の第1師団以外が全てラテニアに向けられている上、聖なる暴虐団をはじめとする傭兵達20万ほどが同行しております」


「傭兵か。冒険者やハンターと違って、対人を専門にしてるだけあって厄介そうだな」


「はい。それに帝国は傭兵達のおよそ半数に魔獣を貸与しました。その騎獣を得た傭兵隊の一部が、突出して進軍しています。先ほどリバーマンが陥落したとお伝えしましたが、その先のユロージズの街も長くは持ちそうにありません」


「いや、どんだけだよ。幾ら機動力があっても、騎兵部隊だけでどうにかなるもんでもねえだろうが」


 とは言いつつ、影治は自分だったら単騎駆けして街の1つや2つ落とせるとも思ったので、ありえなくもないとは思っていた。

 だがよくよく話を聞いてみると、これには事情があるらしい。


 前線の砦を抜かれたラテニア軍は、当初リバーマンの街に立てこもったらしい。

 すでにその少し前の段階から、ラテニア中に徴兵令がかかっていた。

 それら国中から集めた兵と、ラヴェリアからの援軍を期待しての籠城である。

 現地には四魔君主のヴェリアスとレイミーも駆け付けており、当初は十分持ちこたえられると思われていた。


「死者の杖だと?」


「はい。どうもラテニア砦での戦いの時からそうだったようなのですが、今回の帝国は国中から集めた魔獣だけでなく、これまでため込んでいた魔導具も総動員しているようです。何らかの方法で都市内に潜入した帝国兵が、街中で死者の杖を発動させました。それも同時に3つも」


 死者の杖とは、影治が最初にアンデッド軍団を率いている事が知られた際、この死者の杖を使ってアンデッドを操っているのではないか? と言われたこともある呪具である。


 通常この杖を発動させると、余程の魔力量の持ち主でもない限り、使用者は衰弱して死ぬ。

 当然の事ながらそれは今回使用した3人も同じで、いずれもが神兵から志願した者達が喜んで呪われた迷宮遺物を使用していた。


 そして死者の杖が発動すると、およそ1万近いアンデッドが生成される。

 と言っても、生成されるアンデッドは脅威度ⅢやⅣが大半で、最高でも脅威度Ⅷのアンデッドが1体生成されるだけだ。

 とはいえ数が数だ。


 おまけに、リバーマンにはヴェリアス率いる吸血鬼部隊も多く駐留していたのだが、血が軍需物資となる吸血鬼にとって、アンデッドは相性が悪い。

 それは以前、影治が天屍兵団を率いてデュレイス軍と戦った時にも、如実に現れていた。


「ただそれらもあくまで前座で、最終的には本隊と合流した帝国兵の物量に押され、街を捨てて逃げ出しました。その後は集結しつつあった軍が壊滅したので、戦線を大きく下げたようです。ユロージズも最低限の守備戦力だけ残し、物資や住民諸共先に退避させたとのこと」


 南側のカベリアからラテニアに向かった場合、大きな街道をそのまま北に進むと、ガッコルドの街で大きく道が分岐する。

 東へ向かえば首都であるアーカースの方に続き、そのまま北に進むとラヴェリアにたどり着く。


 そして分岐のもう片方の道を進んでいくと、ラテニア最北に位置している要塞都市リバーマンに繋がっている。

 このガッコルドからリバーマンに続く街道は、別名戦争街道とも呼ばれていた。

 何故ならひっきりなしに、この道を通って兵士やら軍需物資が行き交っているからだ。


 つまりそれだけ街道も整っているので、ユロージズから逃げ出した人々はどうにか南東のディルダグの街まで避難することが出来た。

 この避難の際には、陸路だけでなく水路も利用されている。


 戦争街道の内北半分は、ガークラック川沿いに走っている。

 今回ユロージズから逃げ出す際には、大量の荷を運ぶのに全ての船が使用されていた。


「だからユロージズもそう長くもたねえってことか。ってなると、次に迎え撃つのはディルダグの街か?」


 ディルダグの街には影治達も寄った事がある。

 選神碑を見に行く途中に通過した街だ。

 ここから支道に入り、山道を進んだ突き当りにあるガークランの町を目指した事があった。


「それはまだ分かりません。派遣した天翼はディルダグの街に待機しつつ、今後動きがあれば追加の報告をしてくれることになっています」


「……事がここまで動いている以上、その報告を待ってる余裕はねえな。リーブスはどうしてるか分かるか?」


「ガッコルドの街で、旧ブローム商会に所属していた人たちの捜索活動を続けている所かと」


 ヴェリアスのお墨付きもあって、リーブスの活動は順調に進んでいる。

 ただ20年以上も前の事なので、未だ行方が分からない者や既に亡くなっている者も多い。

 それでも10人以上がリーブスの下に保護されたという。


「そうか……。まあ俺が出張れば、ガッコルドまで帝国軍の被害が及ぶこともねえだろ。グルシャス、皆に召集を掛けてくれ。集まり次第、すぐにラテニアに向かう!」


「畏まりました。直ちに伝達致します」


 帝国軍の侵攻の早さに驚いた影治は、最早一刻の猶予もないと出発を決意する。

 ニューホープに帰還してすぐに、帝国の大軍が迫っている事は聞いていたので、いつでも出発できるよう準備万端で待機していた。

 その事は仲間達も知っているので、自由行動中も遠出することなくすぐにメンバー全員が一堂に集まる。


「話は聞いてるな? 帝国は怒涛の早さで侵攻して来ている。それもこれまでにない大規模の軍と、揺るぎない強い意思を持って襲い掛かってきた」


 既に仲間達にも帝国軍の陣容と、現在判明している戦況については大まかに説明してある。

 その余りの規模の大きさに、影治信者のリュシェルも流石に楽観的な表情を浮かべる事は出来なかった。


 特に説明時に今回は天屍兵団は派遣しないと聞いているので、猶更不安を抱いてしまっている。

 尤も現在支配下にあるアンデッド達は連れていかないが、現場では帝国兵をアンデッドに変えて利用するつもりではいた。


 狂信者の集団相手では、仲間がアンデッドとなって襲ってきても、何ら動揺することなく不浄なる魔物として処理する者も多いだろうが、単純に戦力にはなるので使用しない手はない。

 天屍兵団を連れていかないのは、せっかくこれまで集めて育ってきた兵を、不利な戦場に送りたくなかったからだ。


「帝国兵は、ぶっころす……」


 召集を受けて以来、思いつめた表情をしているシャウラは、ブツブツと呪いの言葉を吐きながら、どうにか戦意を抑えている。

 今回はガンダルシアの時とは違い、影治以外も戦闘に参加する予定だ。


 結局影治の土の災厄級魔術修得は間に合わなかったが、【星堕とし】でも十分に効果はある。

 同時詠唱で振り落とされる8つの星。

 しかも膨大な魔力を持つ影治は、そんな大魔術を何度も繰り返し使用出来る。


「そんじゃあ行くぞ!」


 こうしてグルシャスから報告を受けたその日に、影治達ドラゴンアヴェンジャーは再びラテニアへ向かい、ニューホープをあとにするのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング

完結しました! こちらもよろしくお願いします! ↓からクリックで飛べます!

どこかで見たような異世界物語

― 新着の感想 ―
死者の杖なんてものを使ってるけど、信者は教義的にどういう風に脳内で整合性とってるんだろう まあ都合よく全肯定しかしないんだろうけど
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ