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ドラゴンアヴェンジャー  作者: PIAS
第22章 ラテニア侵攻 前編

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第797話 一騎打ちの結果


 ブラックタイガーを駆るレッテリオの動きは、ガンドルーバでは追いきれない。

 レッテリオは年を取って衰えた体を補うかのように、ブラックタイガーに乗りながら接近し、攻撃してからの離脱を繰り返す。

 人をひとり乗せているというのに、ブラックタイガーの動きはかなり機敏だ。

 時には跳躍して、ガンドルーバの背後に回り込むなどの動きも見せる。


「ええい、忌々しい! ぴょんぴょんと跳ね回りおって!」


 ガンドルーバは接触するタイミングを見計らって反撃しようとするも、中々攻撃が当たらない。

 多腕族の一種、六腕であるガンドルーバは2本の腕で盾を持ち、残り4本の腕にそれぞれ武器を持っている。


 具体的に言うと2本の剣、1本のメイス、1本の槍だ。

 これを相手や状況に合わせて使い分けるのだが、このような武装をしている相手に、勇猛果敢なレッテリオとしても真正面からぶつかる訳にはいかない。

 特に槍のリーチが長いので、槍を持つ腕の動きに特に注意を向けながら、離脱を繰り返していた。


 ブラックタイガーの体長は3メートルを超える。

 そのような大きな魔獣に乗り助走してからの槍による突きは、突き刺す際の威力だけでなく、ぶつかった際の衝撃も凄まじい。

 毎度突撃してくるレッテリオに、力自慢のガンドルーバが2つの盾を重ね合わせて、どうにか受け流す事が出来るといった所だ。


「チィッ! このままじゃあジリ損か」


 槍の突撃を受けた際の衝撃はかなりのもので、何度か受けていく内に盾を持つ腕に力が入らなくなってくるのを感じたガンドルーバは、この事態を打開する為に手を打つことにした。


「ぬうんっ!」


「グガアアアアアアァ!」


 何度目かも分からないレッテリオの突撃に対し、ガンドルーバは手にしていた槍を思いっきり投擲した。

 およそ斜め前方から突撃してきていたレッテリオだったが、ガンドルーバの狙いは騎乗しているレッテリオではなく、乗騎であるブラックタイガーの方だった。


 ブラックタイガーも慌てて回避しようと試みたのだが、まっすく突進していた方から音を立てながら投擲された槍を完全に回避することは敵わなかった。

 人を乗せながら身軽な動きを見せていたブラックタイガーではあったが、流石にこの状況では回避能力を十全に発揮できなかったのだ。


「まずは足を奪ってやるわ!」


 投擲した槍は、ブラックタイガーの左後ろ脚の付け根部分に突き刺さっている。

 だがガンドルーバは槍が命中したかどうか確認するより前に、前に飛び出て2本の剣を勢いの弱まっていたブラックタイガーの体に突き刺す。


「ぐおっ!?」


 この追撃で一気にブラックタイガーの体勢が崩れ、慌ててレッテリオが飛び降りる。

 そして上手く着地をして体勢を整えるあいだに、ガンドルーバは更なる追撃でブラックタイガーの息の根を止めた。


「さあ、これで1対1だああ!!」


「こうもあっさり騎獣がやられるとは思ってなかったが、得物を1つ失わせる事は出来た。あとは我が家に代々伝わる魔槍・ドプルスピアで仕留めてくれる」


 ようやっと地に足付けたレッテリオは、ドプルスピアに魔力を流し込む。

 すると見た目的にほぼ同じ姿の槍が、並行するように本体の槍の近くに浮かび上がる。


 その槍は半透明な見た目をしているので、明らかに物質として実在しているようには見えない。

 物質的に存在している訳ではない以上、触れる事も出来ないこの分身の槍なのだが、本体の槍の攻撃が命中した際には同じ威力の攻撃が追加で与えられる。

 ただし、その効果が発動するのは突きによる攻撃が命中した際であり、切り払いが命中しても分身槍の追撃効果は発動しない。


「ハァァァッ、八槍突き!」


「ぬおおおおおおっっ!!」


 そのような強力な魔槍を持つレッテリオは、いきなり闘気技を繰り出す。

 瞬時にして8度もの突きを繰り出すこの技は、しっかり身構えていたガンドルーバの盾に全て受け止められてしまったが、それこそレッテリオの狙いだった。


 よく練られた闘気を纏った8連槍は、全てガンドルーバ自慢の盾に止められている。

 しかしきっちり命中した事でドプルスピアの分身槍の効果も発動し、瞬時に16回にも及ぶ強力な突きが一か所に集中した。

 その結果、2枚持っていた盾の内の1枚に、致命的な大穴が開けられてしまう。


「俺の魔鋼製の特注の盾があああ!?」


「貴様のどてっ腹にも風穴を開けてくれるわ!」


「やれるものならやってみやがれ!」


 この時点で槍を失い盾も片方は使い物にならなくなっていたが、それでも手数の上ではガンドルーバの方が上だ。

 ガンドルーバが4攻める間に、レッテリオは1しか攻撃することができない……といった状況が続く。


 しかしレッテリオはそれでも十分健闘していた。

 6本の腕を持つ六腕は確かに厄介ではあるが、1つ1つの腕の扱いはそこまで卓越した動きではない。


 寧ろ腕が多すぎて可動域が狭くなっていたり、自分の武器同士がぶつかりあいそうになったりと、見た目のインパクトほど実際に戦いに優位になるかというと、そうでもなかった。

 格下相手ならこの多数の腕を活かす事も出来るのだが、同格相手となると思考能力や器用さが求められる。


「オラオラ、どうしたあぁ! そんだけ腕を生やしておきながら、2本腕に敵わないのか?」


 戦いが激化していくにつれ、レッテリオの口調が昔のように荒々しいものに変わりつつある。

 肉体の衰えを闘気技で強引にカバーし、内心の苦しさを一切見せずに歯をむき出しにしながらガンドルーバを煽っていく。


 本来東方面軍の軍団長であるレッテリオが、いくら相手が砦の司令官だからといって、わざわざ一騎打ちに応じることはない。

 脳筋で司令官としては役に立たないガンドルーバならまだしも、レッテリオは司令官としても優秀な男だ。


 しかし今回はそんな事を抜きに、周りの従者の諫言を無視して前に飛び出していった。

 死ぬなら武人として戦場で死にたいというレッテリオの想いと、今回に関しては後続に総大将としてルドヴィークが控えていたので、自分が戦死しても問題ないだろうという思惑もある。


「っだあああ!! 死ね! 死ね!」


 レッテリオと相対しているガンドルーバにも、レッテリオが最後の命の炎を燃やしている事は理解出来ていた。

 今にも消えそうな蝋燭の炎なのだが、幾ら強く吹いても消える事がなく、寧ろ吹いた事でより一層炎が燃え上がる場面もあった。


 そのレッテリオの猛攻によって、ガンドルーバも流石に無傷ではいられない。

 分身槍(ドプルスピア)による攻撃は、下手に受け止めようとすると槍の効果で刺突による攻撃が追加される。

 元々器用に戦うタイプではないガンドルーバは、槍本体の攻撃はガード出来ても、同時に発生する分身槍の攻撃までは防げない。


 最終的には左上腕を分身槍によって穿たれ、持っていた剣を手放す事になってしまい、現在のガンドルーバの武装は剣1、メイス1、盾1にまで減らされていた。


「フゥッ……ジジィの癖に粘りやがる」


「ハァッハァッ……。何を……言う。儂なんぞより、貴様の方が散々長生きしてるだろうが!」


 両者共に疲労状態にあったが、より消耗が激しいのはレッテリオの方だった。

 レッテリオが戦場に到着する前から既に敵と戦っていたガンドルーバであったが、そこはやはり老化による影響を強く受けたレッテリオの方が劣る。

 ガンドルーバはもう250年近く生きているが、六腕に進化した為まだまだ寿命は先であり、身体能力の衰えはなかった。


「いい加減終いにしてやる」


 そういうと、ガンドルーバは闘気技の発動態勢に入る。

 完全な1対1ならまだしも、戦場ではそうそう消耗の大きい闘気技を使ってはいられない。

 優れた戦士であっても、無駄に闘気を消耗したせいで、雑兵に討たれる事だってあり得るのだ。


 この時点で、レッテリオは既に体力も生命力も使い尽くす直前だった。

 わざわざガンドルーバが相手せずとも、一般兵数人で襲い掛かれば討ち取れる可能性は高い。

 だがこのような状態の相手こそ、油断ならない事をガンドルーバは知っていた。

 だからこそ一気に決着を付ける為、とっておきの闘気技を放つ事に決めたのだ。


「くだばれ、レッテリオ! 百裂パンチ!」


 普段は6本の腕を活かし、武器や盾などを複数手にしているガンドルーバであるが、闘気技の発動前に残っていた装備をレッテリオに投げつけながら接近し、空になった6本の腕全てを使ったパンチによるラッシュを繰り出す。


 これまでの戦いの中受けた傷で、思うように動かない腕もあったのだが、闘気によって無理やり動かしているのか、ただ目の前の相手を殴りまくるという単純な暴力がレッテリオを襲う。


「ぐぼぁ……! がはっ…………。マルティネ様、いま御許へ参り…………」


 信じられないような量の血反吐を吐いたレッテリオは、そのまま地面に崩れ落ちたまま意識を失う。

 そしてそのまま心臓の鼓動も停止し、レッテリオの生涯は51歳で幕を閉じた。


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