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ドラゴンアヴェンジャー  作者: PIAS
第20章 ラテニア連合国

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第759話 異形の化け物


「異形の化け物だと?」


「はい……。異形と申しましても、元はオークの兵士なのだと思うのですが、これまで見た事のない姿と能力でして……」


 影治たちが今いる場所は、屋敷の正門前に急遽設営された簡易陣地だ。

 ここには運び込まれた負傷者や、武器食用などの物資。

 屋敷内で捕らえた敵兵などが、一時的に拘束されている。


 報告に戻ってきたヴェリアス配下の分隊は、精鋭のノーブルブラッドではなく、一般の吸血鬼で構成された部隊だった。

 元々10名前後で構成される分隊だが、報告に戻ってきたのは3名のみ。

 しかもその内1名は重傷を負っており、すぐさま影治が回復魔術で治療していた。


「詳しく話を聞かせろ」


 兵士の治療を終えた影治が話に割り込んでくる。

 この場では影治達は部外者になるが、いちいちそんな事を指摘していられる状況でもないので、兵士の男は自分が見てきたことを報告し始めた。


「分かりました。私達が遭遇したのは、オークの体から蜘蛛のような足が数本生えた化け物でした。更には後背部……うなじの下辺りには蜘蛛の頭部のようなものもありました」


「うげぇ……。ちょっと、何よそれぇ」


 化け物の姿を想像したのか、ティアが気色悪そうな表情を浮かべる。


「その化け物は、最早オークというより蜘蛛の部分が本体なのか、2本足ではなく蜘蛛の足と、元から生えていたオークの足を使って多脚で歩いてました。その動きはかなり俊敏で力も強く、ろくに迎撃することも出来ず3名もやられてしまい……」


 そこからは逃げに徹したそうだが、それでも次々とやられてしまったらしい。

 それでもこの化け物についての報告を優先しようと、2手に分かれてここまで戻ってきたという事だった。


「蜘蛛の特徴を持つオーク……。以前錬金術士の研究所跡にいたオークとも違う感じだな」


「他に特徴はないのか?」


「それが……」


「何だ、さっさと言え」


 一緒に話を聞いていた、この場を指揮している指揮官が続きを促す。


「その化け物は瘴気を放っておりました。また蜘蛛の頭部にある複眼は赤く、魔物と同じ特徴をしていました。まるで蜘蛛の魔物とオークが混じり合ったような感じでして……」


「奇怪な……。一体ツォルキンの奴めは何をしたと言うのだ!」


 化け物となったオークは、装備からして魔物のオークと蜘蛛が混じり合ったのではなく、元になったのが屋敷内にいたオーク兵である事は明らかだ。

 妖魔は元々魔物から変化したものであるが、妖魔から魔物に変化することはない。

 

一体どのような外法を用いたのか。

 指揮官の男もまた妖魔であり、敵側に所属しているとはいえ同じ妖魔がそのような目にあったことに、憤りを隠しきれない。


 兵士から話を聞いていると、他にも屋敷内から引き揚げてくる兵が現れる。

 そしてその兵からは、オークとワニが合わさったような化け物に襲われたという報告があった。

 どうやら化け物は複数いるらしく、それが戦況が悪化した原因であるようだ。


「どうやら俺達の出番のようだな」


「……ヴェリアス様からはここでお引止めするよう命じられておりましたが、どうやらそうもいかないようだ。エイジ殿の力をお貸し願いたい」


「よしきた。ティア、カレン、ピー助は俺と一緒に。他はリュシェルの指揮で2手に分かれる! それとあんたにはこれを渡しておこう」


 水を得た魚のように意気揚々を指揮する影治は、指揮官の男に回復魔術の呪符とヒールポーションを収納魔導具(アイテムボックス)から取り出して渡す。


「これは……」


「遠慮せず負傷者に使ってやってくれ。あとで金を請求したりはしない」


「かたじけない」


「いいってことよ。お前ら、敵は得体のしれない化け物だ。油断するなよ?」


 回復アイテムを渡すと、早速影治達は正門から屋敷内に乗りこむ。

 門をくぐってすぐの場所は広い庭になっており、道の両脇には等間隔にオークを模した石像が並んでいる。


 それと激しい戦いがあったのか、未処理のままの死体もそこらに転がっていた。

 屋敷はかなり敷地面積があり、屋敷内に建てられている館もかなりの広さがあるが、数百人が引きこもるには少々狭い。

 収まりきらない兵士たちは、当初この前庭に集結していたのだろう。


「この辺は粗方制圧できているようですが……」


「いや、そうでもねえようだ。おいでなすったぜ」


 死体の転がる庭を抜け、正面にあった建物に向かう影治達だったが、そこに立ちはだかる2体の異形の姿があった。

 それは丁度報告にあったオークと蜘蛛の化け物と、オークとワニが合わさったような見た目をしている。


 報告通りどちらも瘴気を放っているので、分類としては魔物になるのだろう。

 しかしその見た目の異様さから、普通の魔物とも思えない。


「あんま派手に影響のある魔術は控えるか。【光の柱】」


 まずは試しに……といった感じで、影治が初手で魔術を放つ。

 それはクラスⅦの魔術であったが、8重まで多重に発動出来る影治は、4重ずつに分けて2体の異形の化け物に攻撃をしかけた。


 影治が使用する【光の柱】は、単体で使用しても一般的な魔術師と比べればかなりの威力がある。

 それを4発分同時に食らった化け物たちであるが、見た感じ大きなダメージを負っているようには見えない。

 それどころかダメージなど気にせず、そのまま身じろぎもせず接近してくる。


「ハァッ!」


 特に2足歩行を捨て、胴体部から生えた蜘蛛の足で爆走してくるオークは、報告にあったようにかなり俊敏な動きを見せた。

 あっという間に彼我の距離を縮め、うなじ下から生えた頭部で魔術を放った影治を噛み付こうとしてくるが、咄嗟に割って入ったガンテツの刀がそれを防ぐ。


「うーやーたー!」


 そして蜘蛛オークより少し遅れて接近してきたワニオークには、アダマント製のナックルを身に付けたシャウラが殴りかかる。


「よしいいぞ、2人とも! その調子で抑えていけ!」


 すでに災厄級の魔物すら屠る影治達であるが、だからといって過信は禁物だ。

 特に相手の正体が分からない状態では猶更である。

 今はまだ2手に分かれる前であったから、謎の化け物と戦うには絶好のタイミングだろう。

 もし予想外に強いのであれば、2手に分かれるのは取り止めて纏まって動けばいい。


 影治はいつものように、前衛ではなく中衛として戦場全体を見回しながら、フォローを行う。

 化け物たちは確かに、戦線が崩壊するのも頷けるほどには強かった。

 戦ってみた感じとしては、脅威度Ⅷの魔物に近い身体能力を持っている。

 これでは一般兵レベルでは敵わないのも納得だ。


 だが何より厄介だったのは、生命力の強さだった。

 この場合の生命力は、闘気の元となる方ではなくHPの高さと再生力を指す。

 この化け物たちは、元がオークとは思えないほどの生命力であった。


 妖魔の中ではトロールという種族が、再生力が高い種族として知られている。

 そしてトロールの中でも再生力に特化しているリジェネトロールなどは、多少の切り傷程度なら数秒あれば治ってしまう。

 それはそれで凄いのだが、この化け物たちの再生力はそれ以上だった。


「なんじゃと!?」


 蜘蛛オークの蜘蛛部分の頭部が、ガンテツの竜炎舞によって斬り飛ばされる。

 しかしすぐに切り離された箇所から再生が始まり、数十秒もしない内に蜘蛛部分の頭部は元通りになった。


「む……。ヒュドラを倒した時のような方法も通用しねえのか」


 ガンテツの手にする竜炎舞は、影治が鍛えた炎刀だ。

 魔力を込めると刀身から炎が発せられ、切りつけると同時に切り傷を炎で焼き焦がす。

 ギリシア神話に登場する、同じく再生力の強いヒュドラという怪物は、切り落とした部位を焼くことで再生を防いだとされるが、どうやらこのオークの化け物には通用しないらしい。


「ガンテツ! 蜘蛛の方ではなく、元のオークの頭部はどうだ!?」


「うむ、承知した!」


 再生能力は厄介ではあるが、基本的な能力ではドラゴンアヴェンジャーに分があった。

 仲間たちのフォローもあり、今度はオークの頭部を切り離す事に成功したが、それでも化け物の動きは止まらない。


 それはシャウラが中心に対応しているワニオークも同様で、ガンテツとは違って切り傷はほとんどないのだが、拳による打撃が幾度も積み重ねられている。

 通常であれば、内臓はボロボロになって動ける状態ではなくなってるハズなのに、ワニオークの動きにはいささかも衰えが見られない。


「こいつ、しつこい!」


 何度打ち込んでも効いていないように見えるワニオークを見て、一瞬シャウラは自分の攻撃が弱すぎるのか? と弱気になってしまう。

 それを自覚したのか、苛立ちで動きが散漫になりつつあった。

 そこにワニオークの体の尾による攻撃が振るわれ、地面を削りながら派手にシャウラが吹き飛ばされる。


「ちょっ、シャウラ!?」


 タフな相手なら毒は如何? ということで、毒を仕込んだ短剣でちょこまか攻撃していたエカテリーナであったが、派手に吹き飛ばされたシャウラを見て思わず駆け寄る。


「だいじょうぶ。これくらいじゃしなない」


 口元から漏れる血を手で拭い、影治からの回復魔術を待つまでもなく収納魔導具(アイテムボックス)からヒールポーションを取り出すと、がぼっと含み飲み干す。


 意気揚々と屋敷内に乗りこんだ影治達であったが、予想外に初戦から手こずっていた。


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