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ドラゴンアヴェンジャー  作者: PIAS
第20章 ラテニア連合国

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第758話 ズライロッジへの奇襲


 思わぬ規模にまで発展したツォルキン及び、ガバラ商会関係者の捕縛は、彼らの気づかぬうちに進行していた。

 まずは予め街に潜入させておいた少数精鋭の工作員が、南北にある街門を占拠。

 その後、北からはヴェリアス率いる兵が。

 南からはレイミー率いる兵が押し寄せる。


「な、なんだ! 一体何事だ!?」


 突然の襲撃に、衛兵やツォルキンの抱えている私兵は混乱する。

 それはツォルキンも同様であったが、訳が分からないままやられる訳にはいかないと、迎撃の指示を出した。


 彼らの主がツォルキンである以上、主の命令であれば従うのが本筋だ。

 だが相手が同じラテニアの兵であり、しかも四魔君主が直々に2人も攻め寄せてきてるとなると、士気の低下に留まらず持ち場を離れる兵も続出した。


 この街はツォルキンのお膝元であり、オークの間では差別主義が広まっている。

 だから相手がヒューマンであれば、戦うのに躊躇しなかっただろう。

 しかし攻めてきた者達の大半は、ヒューマン以外の種族で構成されていた。


 レイミーの部隊は同族であるラミアと、ゾルダから借り受けたオーガを主軸としている。

 そして北から押し寄せたヴェリアスも、同族である吸血鬼たちを率いていた。

 特に吸血鬼男爵以上の貴族種の吸血鬼だけで構成された精鋭集団、「ノーブルブラッド」も今回動員されている。

 ノーブルブラッドの名はラテニアだけに留まらず、周辺各国でも精強だと有名だ。


 ただでさえ心理的に戦いたくない相手である上、能力的にもオークが主体の自分達より強い相手となれば、まともに抵抗ができなくても仕方ない。

 そもそも、奇襲で門が突破されているので、街壁をあてにした籠城も出来なかった。


「くっ! 全員ツォルキン様の屋敷まで引き上げろ! バラけていては各個撃破されるだけだ!!」


 急な奇襲に当初、ツォルキン側は指揮系統もまともに機能していなかった。

 市役所やら武器庫やら、各々の判断で重要と思われる所の護りについていたのだが、すでに街中にまで侵入されている段階で、そうした街の重要施設を守った所で手遅れだ。

 そこで衛兵やツォルキンの私兵たちは、最後の砦であるツォルキンの屋敷まで引き上げ始める。


「我々は四魔君主の命によって、反逆者であるツォルキンを捕縛に来た! 我らの正当性は、実際にヴェリアス様とレイミー様がこの場で指揮を執っておられるので明らかである! 逆らう者はラテニアに対し反逆の意思ありとみて、捕らえた後に刑を下す!!」


 そう叫んで街中を練り歩けば、兵士や市民も大抵の者は逆らうことはなかった。

 ツォルキン一党が屋敷に集結する中、兵士たちはそうして先に街中での捕物を行う。


 その結果、ガバラ商会や不公正な判決を下していた司法官など、ガッコルドの街と同じように多くのオークが捕らわれる事となった。

 だがいち早く逃げ出したのか、ガバラ商会の会長であるグバ・ガバラの身柄の確保には失敗している。

 捕らえた他の商会関係者によると、真っ先にツォルキンの屋敷に逃げ出したとの事だった。





「作戦遂行の邪魔になるかと思って、ズライロッジに配置していたアンデッドを解散させたのが仇となったか」


 報告を受けた影治がそう言うが、街そのものは包囲してあるので、この状態から逃げ出す事はほぼ不可能である。

 しかも街の外に逃げ込んだのではなく、更に逃げ場のない屋敷に逃げ込んだというのであれば、袋のネズミというもの。


「じゃがこうなっては、グバとやらも終いじゃ。逃げ道はもうあるまい」


「この状態でも、連中は降伏に応じないのか?」


「ふんっ! 元々我らの同意なしに、勝手に他国に攻め込もうなんて考えてた連中じゃ。他人の言う事なんて聞きやしないんだろうよ」


 街中の制圧が進むにつれ、ツォルキンの屋敷を包囲する兵士の数は増えていく。

 すでにこの場には数百名の兵士と、四魔君主であるレイミーも布陣している。


 今後時間が経つにつれこちらの兵力は増していくというのに、降伏勧告にも応じずかといって中から打って出てくることもなく、不気味な沈黙を保っていた。

 そんな中、街中の制圧がひと段落ついたのか、もうひとりの四魔君主であるヴェリアスがこの場に参上する。


「やあレイミー、どうやら順調なようだね。それと……そちらにいるのが、ドラゴンアヴェンジャーでいいのかな?」


「こうして会うのは初めてだな。俺がドラゴンアヴェンジャーのリーダーをしている影治だ」


「これはどうも。僕がラテニア四魔君主がひとり、ヴェリアス・オヴェールだ。作戦決行前の報告で、君たちが加わったと聞いた時は驚いたよ」


「最初は手をだすつもりではなかったんだけどな。丁度予定が合ったから、ついでにこの目で結果を見届けようと思ったんだよ」


「みたいだね。エイジが本気で暴れ回っていたら、今頃は街ごと廃墟になっていただろうさ」


「おいおい、俺ぁ封印から解かれた邪竜じゃあねえんだ。帝国相手ならともかく、それ以外の場所で無暗に暴れたりはしねえって」


 ヴェリアスの口からそんな言葉が漏れたのは、ドローズグで起こった魔物暴走についての報告を受けていたからだった。

 たまたま同じタイミングで訪れた影治達ドラゴンアヴェンジャーが、数千もの魔物の集団を殲滅する。

 しかもその瞬間をハアブ達は眼前で見ていた。


 これによって影治たちには新たな評価が加えられることになる。

 それまでは、邪竜などの強力な個を討伐する能力と、アンデッド軍団を利用した対集団戦の能力が知られていた。


 そこへ個人が放つ魔術によって、大軍を撃破できるという新たな能力が発覚。

 しかもその強大な魔術は、影治以外にも使用可能であった。

 また魔術で打ち漏らした魔物を討伐する前衛たちも、誰もが一級レベルの強さを見せつけている。

 今までは影治個人に注目が集まっていたが、仲間たちも仲間たちで油断ならないという事が、これで明らかになった。


「ははは、そうしてもらえると助かるよ。街中に隕石を落とされたらたまらないからね」


「こんだけ広い屋敷なら、屋敷内に限定して降らせることも出来るぜ」


「いやっ! 大丈夫だから!! エイジ達はここで様子を見ててほしい!」


 影治の事をまるで爆発物のように扱うヴェリアス。

 ヴェリアスとしては、態々建物を破壊する必要はないと思っていた。

 それに隕石など降らしてしまえば、屋敷内にある書類やら財宝やらもダメになってしまう可能性がある。

 影治も積極的に手を出すつもりはないので、そのまま屋敷近くのこの場所で推移を見守ることにした。







「ヴェリアス様! ノーブルブラッド全部隊突入準備完了しました!」


「あたしらの準備も完了しております、レイミー様」


 2枚目の少し顔色の悪い男と、ラミアの兵士が報告をしてくる。

 あれからツォルキンの屋敷には動きが見えず、その間に街の制圧が完了した。

 ガッコルドの街同様に、捕らえた者達は既存の収容施設だけでは収容しきれなかったので、臨時に公共施設や建物などを徴収して、監視を置いて収監している。


 それらの作業が終わると、残るは屋敷に閉じこもった者達の処理だ。

 表に出てきてはいないが、ツォルキンが屋敷内にいる事は間違いない。

 屋敷内には慌てて逃げ込んだ者達含め、恐らくは数百の数の兵が立てこもっていると思われる。

 それに対し、屋敷周辺を囲っているのは2000近い兵士たち。

 それもヴェリアス側は吸血鬼やオーガが主であり、種族構成においてオーク主体のツォルキンでは分が悪い。


「では僕も参加してくるので、エイジ達はくれぐれも大人しくここで高みの見物をしてくれ」


「わーったって。そう何度も念押しすんなよ。逆にやりたくなってくるだろうが」


 押すなよ! 押すなよ! と言われると、人は押したくなってしまうものだ。

 その事を告げると、ヴェリアスも慌てたように口を噤み、さっさと仲間を引き連れて出撃していった。


 ツォルキンの屋敷はかなりの広さで、表門の他に裏にも小さな門があって、そちらからはレイミーが突入する予定だ。

 他にもいざとなったら、壁を乗り越えて逃げ出す者もいるかもしれないので、少数ではあるが屋敷の周囲にも兵を配置してある。

 完全に逃亡者を捕らえられずとも、逃走した者がいればそれを把握する事くらいは出来るだろう。


 そうしてヴェリアス達が突入していってから、小一時間ばかりの時が過ぎた。

 時折屋敷内からは捕虜として捕らえた者や、負傷者が運ばれてくる。

 やる事もないので、影治達はそれら負傷者の治療などを手伝いながら、戦況報告を受けていた。


 最初の内は快進撃を続けていたようで、前線から送られてくる報告はどこそこを制圧しただとか、捕虜を捕らえただとかいったものが多かった。

 だが途中から状況が変化し始める。

 その状況の変化と共に、運ばれてくる負傷者の数も増えていった。


 混乱した様子の兵士も多く、前線で何が起こっているのかすぐには把握できなかったが、ヴェリアス配下の分隊が戻ってきた事で、状況が明らかになる。

 どうやら彼らの報告によると、突然異形の化け物が各所に現れた、という事であった。


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