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ドラゴンアヴェンジャー  作者: PIAS
第20章 ラテニア連合国

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第755話 粛清


◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「そんな事あってたまるか! 私は確かにガバラ商会から商品を仕入れしていた! 領収書だってちゃんとある。決して盗んでなどいない!」


 ここはガッコルドの街にある、裁判所内。

 そこには多数のオークと、被告席に立つヒューマンの男の姿があった。

 この法廷では今まさに裁判が行われているところである。


 激高しているヒューマンの男は、どうにか理性を絞り出して証拠として領収書を提出する。

 そこには確かに、ガバラ商会から食料品購入したと書かれてあった。

 この世界の取引ではお馴染みの、魔印もきっちり押印されている。

 本来であればそれが十分な証拠になるはずなのであるが、最早この場では証拠など意味をなさなかった。


「うーーーん、ガバラ商会の商品を強奪して販売しておきながら、偽の証拠をでっち上げるとは、流石は薄汚いヒューマンですねえ。強盗の他に偽証罪。それから有印私文書変造罪に法廷侮辱罪。あー、その他諸々合わせて商会免許取り消しの上、商会員たち全員の身柄を拘束し、犯罪奴隷とする」


「ふざっ……ふざけるな!!」


「君達、僕ちんをまもってくれたまへ」


 司法官のオークの男――トナルポは、証拠となる領収書を受け取りもせず偽物と決めつけ、早々に判決を下す。

 それに対してヒューマンの男はついに堪忍袋の緒が切れ、トナルポに襲い掛かろうとするが、ただちに係員に取り押さえられてしまう。


「ふひひ、これにて一件落着ってね。僕ちんにかかれば裁判に何日も掛ける必要もなーいのよ」


 結局の所、ガバラ商会の影響が強いこの街では、ヒューマンに対する人権というものがなくなりつつある。

 20年ほど前、トナルポが最初に無実の罪でブローム商会を追いやって以来、徐々に差別主義のオーク達は増長していった。


 本来こうした事態を取り締まるべきは、オーク種族の代表たる四魔君主のツォルキンであるのだが、たちが悪い事に率先してヒューマンを差別しているのはツォルキンであった。


「さーて、これでもうこの街でガバラ商会に歯向かう奴はいなーくなった。ますます僕ちんたち優良種たるオークにとって住みやすい街になったのねん」


 今回陥れられたヒューマンの男は、この街のヒューマンにとって最後の希望といっていい男だった。

 ヒューマンに対してだけ、商品の全てを不当に高く販売する店が多い中、食料品を中心にそうしたヒューマンたちにも通常通りの価格で販売していたのだ。


「こーれで路頭に迷ったヒューマンを借金奴隷にしてコキ使える。ツォルキン様の政策はすばらしーいのね」


 ニタニタとした笑顔を浮かべながら、法廷から立ち去るトナルポ。

 本日予定の大きな仕事をこなしたので、執務室へと戻る。

 そしてそのまま書類仕事をこなし、安寧とした日々を過ごし幾日かが過ぎた。








 その日、いつも通り裁判所に出仕してきたトナルポは、困惑した様子の部下の男に出迎えられた。

 彼は執務室の扉の前に立っており、トナルポが姿を見せるなり駆け寄ってくる。


「トナルポ様!」


「うんっ? なにかな、こんなところで」


「それが……本日の予定であった、ドンブラン氏との会食なのですが……」


「何か問題があったのかーね?」


「はい。実はドンブラン氏との連絡が取れなくなっているのです」


「……なんだって?」


 ツォルキンの意を汲むトナルポは、同じくツォルキンのいいなりになっているガバラ商会とは蜜月の関係にある。

 部下の男が言うドンブラン氏というのも、ガッコルドの街でガバラ商会の副支店長を務める男だった。


「不審に思い、ガバラ商会に遣いの者を走らせたのですが、どうも店は閉店した状態で中からは物音1つしてこなかったそうです」


「……店の方がダメなら、自宅の方に向かえばいいでーしょ」


「それが、そちらももぬけの殻でして……」


「へはぁ!? 一体どーいうことなーのよ! 副支店長じゃなくて、支店長の方はどーなの!?」


「そちらも同様でして、今は他の商会関係者の自宅に人を向かわせている所です」


「衛兵にはこの事伝えたの?」


「いえ、そちらはまだ……。商人連中と違って、そちらはまだ根回しが済んでいないので……」


「いーいから、さっさと衛兵にも伝えなさい! 別にこの件に関しては僕ちんたちに後ろ暗いことがある訳でもないでしょ!」


「はっ、分かりました!」


 指示を受けた部下の男は、足早に去っていく。

 それを見送りながら、トナルポは一体この街に何が起こっているのか考えていた。


「どういうこーと? ヒューマン共が決起して行動した所で、数的にも質的にも僕ちんたちに敵う訳はない。ガバラ商会の関係者を一斉に拉致するなんて、土台無理な話。となると、外部の勢力が手を貸したのかーしら?」


 あれこれ考えるトナルポであったが、正解にたどり着くことはなかった。

 ガバラ商会と差別派オークの影響が強いこの街では、現在他の四魔君主からの賛同を得たヴェリアスが大ナタを振るい始めたところだったのだ。


 それも少しずつ事を進めるのではなく、予め周到に準備を整えておいて、一気に制圧にかかっている。

 ガバラ商会は元より、半数以上差別派オークの影響下にあった衛兵。

 それからガッコルドを治めている領主や、市庁舎にも手が加えられようとしていた。

 当然、それはトナルポのいる裁判所も同様である。


「な、なーに? お前達いったいなんの権限があって、乗りこんできてるの?」


 考え事をしていたトナルポの下に、複数の武装した兵士がやってくる。

 兵士達にはオーク種も含まれていたが、他にもヒューマンや他の妖魔も混ざっていた。

 その種族構成から、自分達の支配下にある兵ではない事にすぐに気づき、トナルポの声には震えが混じっている。


「司法官のトナルポ・ワーリだな? 貴様を逮捕、拘禁する!」


 兵士達を率いている隊長と思しき男はそう言うと、有無を言わさずトナルポを縄で縛りあげるよう部下に指示を出す。


「ヴィエエエっ! ざ、罪状は? なんで僕ちんがたいーほされなきゃなんないの?」


「愚問だな。これまでお前が判決を下してきたヒューマンに、罪状なんて必要あったか?」


「う、うぐぐぐぐぐっ! お前達いいのか? 僕ちんを捕らえるってことは、ツォルキン様に逆らうということなんだぞ!」


「無論承知の上だ。ツォルキンはヴェリアス様自らが捕縛される事になっている。そうなればお前達の後ろ盾は失われる」


「へっ? へっはぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 隊長のその言葉は、トナルポにとって死刑宣告にも等しい内容だった。

 先日の裁判の様子を見ても分かるように、明らかにイキり散らかして強引な手法を取っても無事でいられたのは、背後にツォルキンがいたからである。

 ラテニア連合国において、四魔君主の名と影響力は大きい。


 そしてツォルキンを他の四魔君主であるヴェリアスが捕らえるという事は、すでに残り2名の四魔君主からも承認されている事を意味している。

 突出して強い四魔君主が誕生しようと、他の3名を同時に相手出来るほどの者はそうそう現れない。

 だからこそ、これまで四魔君主は互いにけん制しあってきた。


「ひぃぃぃぃっ! おた、お助けをおおおおおおお!!」


「今更泣き言を抜かすな! お前達がしでかした事はすでに調べがついてるんだ!」


 影治と対談したヴェリアスは、影治から提供があった情報を基に、自分達でも調査を行っていた。

 そうして明らかになった事実は、ヴェリアスのみならず他の四魔君主にも事態の深刻さに気付かせる事になる。

 当初はヴェリアスの手勢だけで事態を解決する予定だったが、ゾルダやレイミーも協力することになったほどだ。


 まずはガバラ商会や差別派のオーク勢力の弱い所から、ガサ入れは始まる。

 そうして徐々に包囲網を狭まるように関係者を捕らえていったのだが、勢力が強いガッコルドの街ともなると、これまでのようにはいかない。


 既にガサ入れのあった町から情報が洩れ、関係者に逃げ出される恐れもあったし、そうでなくとも商会の方をガサ入れしている隙に、司法官や領主やらに逃げられる可能性もある。


 そこで今行っているように電撃的に街の各所を制圧し、関係者を一気に捕らえるという作戦が取られる事となった。

 この大胆な作戦は概ね成功し、ガバラ商会関係者や過激な差別派オークを捕らえられている。


 この大規模な作戦は、ほぼ間を空けずしてガバラ商会の本拠地。

 ツォルキンが治めるズライロッジでも実行される予定であり、そちらにはヴェリアスの他に四魔君主のレイミーも参加することになっている。


 こうして影治達が選神碑を見に行っている間に、大きな粛清の嵐が吹き抜けた。

 目的を済ませ、ガッコルドの街に影治達が姿を見せたのは、そんな嵐が過ぎ去った後のことである。


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