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ドラゴンアヴェンジャー  作者: PIAS
第20章 ラテニア連合国

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第754話 順位の差


「今のは半分本気で半分本気ではなかった」


「ああん? そいつはどういう意味だ?」


「そうだな。まず、何も強化していない素の状態の身体能力ではローズのが上だ。恐らくガルダも俺よりは上だろう」


 影治も鍛えていない訳ではないのだが、長い年月を生きているということは、それだけ魔物を倒してきたという事でもある。

 影治は最近脅威度の高い魔物と戦う事が多かったが、それでもガルダ達のような100年単位で戦ってきた相手には及ばない。

 そうしたレベルの違いと、種族的な能力の差というのを影治は今回特に強く感じ取っていた。


「そりゃあおれらも日々鍛錬は続けてるからな……。とすると、エイジが勝ったのは技術の差ってことか?」


「今の戦いはそうだな。技術で身体能力の差を補った。まだ俺が修行(レベル)不足ってのもあるが、種族的に物理が強い訳でもねえんだよ。逆にお前達の種族って、恐らく肉体派な感じなんだろ?」


「ああ。魔術に関しては全く使えないって訳でもないが、おれもローズもとにかく肉体と溢れんばかりの生命力が最大の武器だ。ローズの闘装術も、あんだけの闘気を纏いながら、あの状態で長時間戦えるほど生命力に満ち溢れてる」


 ドラゴンアヴェンジャーだと、シャウラが気炎万丈のスキルによって強い生命力を持っているが、先ほどのローズと同じ位闘気を凝縮して纏ってしまうと、恐らく30分も持たないだろう。


「だろうな。最初は闘気切れを狙おうかとも思ったんだが、尽きるどころかどんどん攻撃力が上がってきたから、途中で狙いを変えるしかなかった」


「それは正しい選択だったぜ。それで、半分本気ではないってのは結局どういう意味なんだ?」


「まんまの意味だ。俺は武術が得意だが、種族的には魔術の方が得意でな。魔術を使ってたらもっと違った戦いになってた」


 影治は英雄系の種族が如何ほどのものか確かめる為に、まったく魔術による強化を行っていなかった。

 それだけでも将棋で言う所の、2枚落ちや3枚落ちといったレベルのハンデである。


 魔術による強化に加え、【死毒】含む死霊魔術3点セットや、その他デバフ系や攻撃魔術などを交えれば、選神碑13位と89位の差はもっと如実に表れていただろう。


「……あれだけの腕を持ちながら、魔術の方が得意だと言うのか?」


「分かりやすく見せてやろう。ローズ、両手を前に出してみろ」


「うん? こうか?」


 身長150センチ代の影治と2メートル近いローズでは差があり過ぎて、影治が真上に差し上げた手を、ローズは胸元で受け止める。

 そうして両手を組み合った状態で、相手を力で押し倒すという力比べを影治は持ちかけた。


「いくら何でもオレのが有利すぎるんじゃねえか?」


「いいから、徐々に力加えていってみろ。こっちもそれに合わせて強化する」


 先ほどの戦いをなぞるように、普通に闘気術で身体強化した状態から、闘装術の発動状態に移行していく。

 するとやはり影治の方が、力と体格の差などで押し込まれ始める。


「こっからが魔術の見せどころだ。【焼き尽くす炎の力】」


「ぬぅっ! なるほど、更に力が増したみてえだな。だがこれならまだどうにかなるぜ」


「まだまだだ。【身体能力強化】」


「ぐぬぬぬぬぬぬっ!! ぐぅ、大分本気を出してるってのに、これでもまだ押し切れねえのか!」


「むううう、それはこっちのセリフだぜ! 身体能力強化じゃなくて、筋力大強化にすりゃあもう1段筋力は上がるが、それでも全力のローズを抑えきれねえかもしれんな」


 筋力だけでなく敏捷なども一律強化する【身体能力強化】よりも、筋力だけを強化する【筋力大強化】の方が筋力に関しては上昇幅が大きい。

 だが実際の戦闘では、全体的に強化する【身体能力強化】の方が便利だ。


「ふぅぅ……。ま、見ての通り魔術だけで、筋力はこんだけ強化できる。それに実際の戦闘となれば、筋力とは別に攻撃力を強化する魔術も併用するから、実際に受けるダメージは更に増す。勿論普通に攻撃魔術も使うから、制限なしで戦ったらもっとあっさり決着がついてたぜ」


 組んでいた手を放し、手汗を吹きながら、半分本気ではなかった部分について説明をする。

 影治を只の魔術師に分類するのは明らかに間違っているが、魔術が得意だという相手に敗れたという事実は、ローズに強い敗北感を植え付けた。


 影治には他に、上位精霊や大精霊を従える強大な精霊術士であるとか、幾千万ものアンデッドを従えているだとか、魔術ではなく魔法が使えるなど、秘められた力は多くある。

 ローズも結局闘気技を出さないままだったので、奥の手はまだ残っているのだろうが、それを加味しても勝率は低いままであろう。


「さて、次は某の相手を願おうか」


 影治とローズの戦いに触発されたのか、或いは最初の強者感知にひっかからなかった事を根に持っていたのか。

 今度はガンテツがガルダに手合わせを申し込む。


 そうして第2ラウンドが始まったのだが、ガルダの強者感知のスキルは正確だったようだ。

 ガンテツも大分健闘していたのだが、ガルダに敗れてしまう。

 影治が見たところでは、技術においてはガンテツの方が上だったのだが、身体能力や生命力の差が致命的だった。

 ガンテツにはその地力の差を埋める程の技術がなく、敗北している。


 更にその後も連戦でシャウラがガルダに挑むも、こちらもやはり結果は同じであった。

 ヨイチは性格的にこうした手合わせには参加せず、シャウラとガルダの手合わせが終わると、共にガークランの町に戻る。

 その道中にも、選神会に関する話はちょこちょこあった。


 どうもガルダとローズの2人は、長い間この山奥の町に暮らしているようで、外の情報についてかなり疎かった。

 大陸に名が轟き始めている影治達のことも、一切知らなかったらしい。

 ニューホープ産の治癒魔導具をプレゼントすると、大層驚いていた。


「おれらは選神碑を見に行く連中を、選神会にスカウトする為にこの町で暮らしてたんだが、もうちょっと外の情報を耳にいれといた方がいいかもしんねえなあ」


 そんな風に反省しているのは、ガルダとローズは影治たちの事を知らなかったものの、この町のスウィフト商会の関係者はしっかり影治たちの事を把握していたからだ。


 この町は選神碑の最寄の町であるし、近くにはダンジョンもあることから、スウィフト商会も軒を連ねている。

 また鍛冶師の中にも選神会に所属している者がおり、ダンジョンや近くの鉱山から産出された鉱物で高品質な武具を作っていた。


 そうした選神会関係者たちも、影治たちの事については知っていた。

 直接影治という名前を知らずとも、ニューホープだとかドラゴンアヴェンジャーだとかいう名前だけは、この僻地にも届いていたのだ。


「じゃあな! 次はいつ来るか分からねえが、長生きしてりゃあまた会う事もあるだろ」


「おう、そん時はまたウチ(ガルダの酒場)に泊まってってくれ。とっておきの料理を用意して待ってるぜ」


 ガルダもローズも現段階で既に数百年生きているが、初期種族から2段階も進化しているので、寿命も相応に伸びている。

 シャルネイア大陸には選神碑はここしかないと言われているので、こちらで活動しているあいだにまたここを訪ねる事があるかもしれない。





 こうして今回のラテニア行きの目的の1つ、選神碑を確認するというタスクを終えた影治達は、再び街道を通ってリーブス達が待つガッコルドの街へと向かう。

 ゲートキーには登録していないので、少し時間はかかってしまったが、行きよりも短い期間で戻って来ることが出来た。


 以前は守衛と入街料でひと悶着あったが、今回は200ダンと適正の範囲内の額だったので、素直に支払って中に入る。

 するとすぐに違いに気づく。

 久しぶりに訪れたガッコルドの街は、以前とは大分雰囲気が変わっていた。


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