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ドラゴンアヴェンジャー  作者: PIAS
第6章 ヴォーギルからの客人

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第241話 ピュアストール帰還


 一路ピュアストールへと帰還するカレン一行。

 行きはスメリワまで10日の道のりだったが、帰りはそれより2日多く12日かけて到着した。

 といっても、道中で何か大きな事件に巻き込まれたという訳ではない。


 単純に休憩時間が長くなったり、ペースを急がなかったからという理由からだ。

 そしてその長くなった休憩時間は、主に影治が関係していた。

 オークエンペラーと戦う影治の姿を見ていたボミオスやバキルが、熱心に指導をせがみ仕方なく武術指導をしたり。

 或いは、ピー助が新たに覚えたクラスⅨの光魔術の威力を確かめる為、実際に影治が食らってみたり……などという危険なこともしていた。


 事前に防御系魔術をフルに掛けていたとはいえ、クラスⅧの【光爆】と比べて攻撃範囲が狭いというのもあってか、【光の大柱】は思わず影治が呻き声を上げるほどの威力を発揮している。

 日ごろから攻撃魔術を自分に使用するという、ドMチックな鍛錬をしてる影治であっても、クラスⅨの魔術は強力すぎたようだ。


 そんなこんなで久々に帰ってきたピュアストールの街は、そこまで長期間離れていた訳でもないのに、帰ってきたなという実感を影治に抱かせた。




「このまま領主の館に直行するのか?」


「はい。お父様に報告をして報酬を受け取ったら解散になると思いますわ」


 冒険者が護衛依頼を受けた場合、先に前金として半額以下までを受け取るケースは多い。

 この前金で装備を整えたり、必要なものを買い揃えたりするのだ。

 だが今回は影治が気にしていなかったのと、ビッグシールドもダマスカス級冒険者として金に困っている訳でもなかったので、報酬は全部後払いになっていた。


「そうか、んじゃさっさと報酬もらって帰るとするか」


「そう……ですわね。ですけど、また館に顔を出して下さるのでしょう?」


「ん? あー、まあ機会があればな」


 質問に対して有耶無耶な答えをする影治。

 それを聞いて、浮かない表情を浮かべるカレン。


「カレン、エイジ様と離れるのが名残惜しいのですか?」


「なぁぁっ!? そ、そんなことありませんわ! た、ただ私はピー助様と離れるのが心苦しいだけですわ!」


「ぴぴぃ?」


 リュシェルの指摘に、慌てたように声を荒げるカレン。

 その頬は微かに赤く染まっており、動揺しているのが明らかだ。

 しかし肝心の影治は「ピー助と離れたくない」という言葉を真に受けて、そのことに気付いていない。


 そしてまたピー助も純粋に自分と離れたくないんだなと捉えており、チェスの上からカレンの近くまでフワフワ浮きながら近づくと、ぽんぽんと小さな右手で頭をたたく。


「ぴ、ピー助様……」


「ぴぴぃ!」


「寂しかったら会いに行く、と言ってるぞ」


「そうですか……。楽しみにお待ちしておりますわ。それでは……行きましょうか」


 微かにガックリしながらも嬉しそうという複雑な感情をにじませながら、カレンは同行者たちに呼びかける。

 そして南門から街中に入り、そのまま領主の館まで向かった。








「ただいま戻りましたわ、おと……シドニア卿」


「うむ、よく無事に戻ってきてくれた。スメリワでの騒動を聞き、心配で夜も眠れなかったほどだ。本当によくぞ……よくぞ無事で……」


「おとう……さま……」


 館の敷地内に入り、屋敷の入口前で出迎えていたダンフリーと向き合うカレン。

 公務ということで、互いに公人としての態度を取ろうとしていたが、先にダンフリーの方が耐え切れず心情を吐露する。

 それに釣られ、カレンも涙ぐみながら父の下に駆け寄って抱き合う。


 貴族としての態度としてはよろしくないが、今は館の中というプライベートな場所ということもあり、両者共に感情が抑えきれなかったようだ。

 しばしダンフリーは感情に揺さぶられるままに抱擁を繰り返した後、周囲の視線に気づいたのか、咳払いをして娘から離れる。


「んっ、ウウンッ! あー、その、お前達もよくカレンを守ってくれた。特にエイジの働きがひと際抜きんでていたと聞いておるぞ」


「そうなんですの、お父様! なんとエイジはひとりでオークエンペラーとオークキングを討伐なさったんですのよ!」


「いや、別に俺ひとりの手柄って訳でもねーんだけどよ」


「うむ……。その辺りの詳しい話は中で聞こう」


 そう言って屋敷の中に招くダンフリー。

 ボッシュとノーマンの護衛騎士ふたりとはここで別れ、騎士としてはアルフォンスだけが一緒に屋敷に入る。

 その後を影治やビッグシールドの面々が続いた。

 そして影治も何度か入ったことがある応接室へと案内され、全員が着席するなりダンフリーは頭を下げる。



「済まなかった! 実はお前達を送り出す前から、スメリワでは魔物の巣の発見で困っていたいう話は耳にしていたのだ」


「そうなのですか?」


「ああ。外交任務とは直接的に関係ないとはいえ、しっかり伝えておくべきだった。ただの魔物の巣だと、甘く見ていた私のミスだ」


 わざわざ口にしなくてもいいことまで誠実に告げるダンフリー。

 それは娘を危険な目に合わせてしまったという後悔の他に、影治に対してこのことを隠しておくべきではないと判断したからでもあった。


「まああそこまでの規模の魔物の巣は、そうそう発生するものではありません。そこまで気に病むことはないんじゃないかな?」


「いや、少なくとも対応に困っているという話は聞いていたのだ。しかも私は交渉に難航した場合、エイジたちが魔物の巣問題に関わることで、マセッティ卿の信頼を勝ち取れないものかとも思っていたのだ」


 それは最初にダンフリーが言っていたように、今回の魔物の巣について甘く見ていたことが原因であった。

 影治も今回の護衛依頼を受ける直前に、魔物の巣の討伐依頼は受けている。

 しかしその時は猪の魔物の巣であり、同行していたルーキーズからすればちょっと手に負えないグレーターボアがいたものの、それでも脅威度Ⅴ程度の魔物でしかない。


 王種が生まれるような魔物の巣など、人里近くでは100年に1度のレベルだ。

 それが皇帝種ともなれば、数百年レベルになる。

 いくら魔物が多く住まうドントールの森といえど、森の奥地ではなく領都のすぐ近くにそのような危険な巣があるということは、想定できなくとも仕方ない。


「頭を上げてくだされ。儂らは冒険者として護衛依頼を受け、儂らの判断で魔物暴走に立ち向かうと決めたのじゃ。そこにオークエンペラーが混じっていたのは、天災のようなものじゃ」


「ボミオスの言うとおりだな。無事だったから言えるんだろうが……俺としては得るものもあったし、いい経験にはなったぜ」


 今回の戦の被害者の遺族からしたら無遠慮な影治の発言であったが、それを咎める者はこの場にいなかった。

 現代日本と比べ死というものが身近にある世界では、命の価値、捉え方というものも大きく変わってくるものだ。


「そう……か。なんにせよ、お前達には前もって伝えていたように、護衛料の他に特別報酬を出そう。他にも何か便宜を図ってもらいたいことがあれば言ってくれ。何でもという訳にはゆかぬが、可能な範囲で叶えよう」


「ふうむ、そう言われてもすぐには思いつかぬな」


「俺も今は特に。なんかあったら言うわ」


 ダンフリーの申し出に、特に要望が浮かばなかったボミオスと影治。

 とりあえずは特別報酬と護衛依頼を合わせた金額を受け取り、今回の護衛任務は完了となった。


 だがそのまま解散とはならず、その後はダンフリーにせがまれて魔物の襲撃についての話をすることになる。

 そこで改めて事態の大きさと、影治の強さについて感じ入るダンフリー。


 そして十分に話を聞き、影治たちが館を後にすると、再びダンフリーは屋敷へと戻り、今度はカレンからの報告を受ける。

 内容は同盟締結についてのあれやこれやだ。




「よくやってくれたな、カレン」


「私は……私は今回殆ど役にたてませんでしたわ。決め手となったのは、エイジがカディウス殿に認められたからですもの」


「十老のひとりか……。存在は知っていたが、そこまでマセッティ領の運営にそこまで影響があるとは知らなかった」


「マセッティ伯はカディウス殿に頭が上がらない感じでした」


「その方がエイジにかつてのリョウの姿を重ね合わせた……か」


 実はカレンがルクトリアやカディウスと同盟について話をしていた短い期間に、襲撃の話を聞いて駆け付けた十老が数名いた。

 そしてその誰もが、カディウスの話を聞いて保守的な考えを覆し、反帝国派と結ぶことに同意している。


「はい。長命種である彼らには、未だにかの偉大なる王の影響が残っているようでした」


「確かにエイジとリョウには奇妙なほどに類似点がある。またそれとは別に、オークエンペラーを打ち破るほどの力も持っている。……本当に彼がこの街に訪れたのは僥倖だったな」


「そうですわね……。ところで、マセッティ領との同盟は成りましたが、今後はどう動かれるのでしょうか?」


「今後……というか、すでに別件で動かしていることがある。どう動くかは、その報告を受けてからだな」


「別件……ですか。そういえば、私が外交任務に出る前からお兄様の姿が見当たらないのですが、もしかして……?」


「バルも吉報を齎してくれるとよいのだが……」


「お兄様ならきっと大丈夫ですわ!」


 安全と思って送り出したカレンが、出先でとんでもない事態に巻き込まれてしまったことは、ダンフリーの心を少し弱気にさせる。

 そんなダンフリーに、ブラコンの妹が微塵も疑っていない様子で問題ないと言い放つ。


 それから数日が経過した雨の日の午後。

 カレンの言葉は現実のものとなり、無事バルベルト達は帰還を果たすのだった。


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