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ドラゴンアヴェンジャー  作者: PIAS
第6章 ヴォーギルからの客人

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第242話 メリンダハードスラップ


「これでやっと人心地つけるねい」


「そうねー。しばらくはゆっくりしたいわー」


 依頼の報告と報酬の受け取りを済ませ、領主の館をあとにした影治たち。

 サイラークとアトリエルが、気の抜いた声を上げる。

 屋敷内で話し込んでしまってはいたが、まだ日は高く、夕暮れにはまだ少し遠い時間帯。

 帰りの道中での話題は今後の予定のことだった。


「今回は大分稼いだし、依頼はしばらく受けんでもよいじゃろう」


「まあオレも少しは休みが欲しいなとは思ったけどよお。ただジッとしてんのも性に合わねえんだよな。エイジはどうすんだ?」


「俺か? 俺はちょっと行ってみたい場所があるから、とりあえずはそこ行こうかと思ってる」


 バキルの質問に影治が答えると、話を聞いていたティアがあいだに割り込んでくる。


「え? どこ行くの? あたし何も話聞いてないんですけどー?」


「そりゃあ言ってねえからな。ティアも一緒についてくるか?」


「ちょっと、それどういう意味よ? もしかしてあたしをおいてひとりで出かけるつもりだったの?」


「別に宿で待っててもらってもよかったんだが、じゃあ一緒にいくか」


「とーぜんでしょ! あたしもエイジの仲間なんだから!」


 普段から小生意気な口を利くティアだが、最近は微かに不安を抱いていた。

 それは今回のスメリワでの事件を経て、更に強まっている。

 その原因は、自分が影治の役に立てていないのではないか? ただ守られるだけのお荷物になっているのではないか? という、自分の存在意義の低さを自覚していたからだ。


 ピー助はクラスⅨの魔術を新たに覚え、チェスは戦闘では役に立たないが、動く倉庫として大いに役立っている。

 それに比べ、自分はただ周囲を賑やかしているだけではないかと、不安に思っているのだ。

 だがそれを素直に口に出来ないティアは、とにかく影治の傍にいて何か役に立とうと、本人でも気づかないうちに必死になっていた。


「そか。んじゃティアも一緒に行くとして、シリアはこのあと時間取れないか?」


「え、何? それってデートのお誘いかしら?」


 普段はどちらかというと真面目なタイプのシリアだが、時折こうした悪ふざけを挟むこともある。

 だが相手が前世を含めた実年齢では倍近く上であり、なおかつ朴念仁である影治にはこの手の揶揄いは通用しない。

 すぐに話を流して次に進めようとする影治だったが、その前にバキルが割り込んでくる。


「年増のババアが何言ってやがる? それともあれか? ようやく男がいないことに焦り出して、若いツバメに手を付けようってかあ?」


「ちょっとそれは聞き捨てならないわね。あんたこそそんな性格してる割りに、肉肉パラダイスのメリンダの前だと全然大人しくなっちゃって。好きなら好きで、もっと男らしく前に出ればいいじゃない」


「は、はああぁぁああ!? い、い、いつオレがメリンダのこと好きだって言ったよ? シャルネイア歴何年、何の季節、何の月、何日だ!!」


「何言ってんのよ。ヘタレなあんたがそんなこと口に出す訳ないでしょ。そんくらい、態度見てれば大体分かんのよ」


「そんな見え透いた嘘つくんじゃねえよ!」


「嘘なんかじゃないわよ」


「いいや、嘘だぜ! だってオレぁ別にめ、メリンダのことなんて好きじゃねえし? つうかあんなガサツな暴力女、好きになる男なんていねえっての。お前らは知らねえかもしんねえけど、あいつは裏ではすぐ暴力振るうんだぜ? あんな女を嫁に貰おうなんてする奴は、よっぽど酔狂な奴かエイジみたいなドMくらいだろ!」


「…………」


「どうしたあ? 言い返せねえのか? やっぱ嘘だったんじゃねえか!」


「いや、あの、後ろ……」


「ああん?」


 言い合いをしていたバキルだけでなく、ボミオスら他のメンバーからも痛々しいような視線を送られていることにようやく気付いたバキルは、言われるままに後ろを振り返る。

 すると、そこにはバキルと同じ狼人族の女性……メリンダが、やたらと迫力のある笑顔を浮かべて立っていた。


「ふぅぅぅぅぅぅん? そっかあ。あんたあたいのことそんな風に思ってたんだねえ?」


「ッッッ! ち、ちが……」


「言い訳すんのかい!? ほんとあんたはケツの穴の小さい男だね!」


 懸命に言い訳をしようとするバキルに、メリンダはガツンッ! という、派手な音……というよりは重いもので張り飛ばしたような音の平手打ちをかます。

 メリンダはどうやら肉肉パラダイスで必要な食材を買いに来ていたようで、背中には大きな荷物を背負っている。

 その荷物の重量を、スナップを効かせた平手に全て載せた平手打ちは、影治も思わず「お見事!」と言ってしまうほど綺麗に力が乗った一撃だった。


「ま、待ってくれ! 違うんだ!」


 強烈な平手打ちをかましたメリンダは、そのまま店の方へと肩を怒らせながら去っていく。

 張り飛ばされたバキルは少しの間動けずにいたが、我に返ると慌ててメリンダの後を追い始める。

 その一場面だけ切り取ると、名を知られた一流の冒険者の姿には到底見えない。


「……ほんと、あいつってしょうもないバカね」


「うわあ……。あれすごい痛そうだったね」


 ティアもメリンダとは顔見知りだ。

 影治と共にこの街に来てから、何度か肉肉パラダイスに食事しにいったことがある。

 妖精を初めて見たというメリンダは、そんなティアを人形のように可愛がっていた。


「ま、あのバカは放っとけばいいわ。それで、私に用って何かしら?」


「さっきも話してたけど、このあと寄りたい店があってな。魔導具なんかを専門に取り扱ってる店を知らねえか? 知ってたら案内してほしいんだが」


「ああ、なるほど。それで私って訳ね」


 納得した表情を浮かべるシリア。

 そこへ更に声を掛けてくる者がいた。


「エイジ様。それでしたら私も力になれるかと思いますよ」


「……リュシェルはなんでここまで付いてきてんだ? お前は伯爵家の客人として、館で暮らしてんじゃなかったか?」


「私はエイジ様に付き従いし者。どこまでもお供致しますので」


「……まあいい。じゃあふたりがお勧めする店を教えてくれねえか?」


 これまでの経験から、これ以上リュシェルに何を言っても時間の無駄だと悟っている影治は、話を先に進めることにした。


「そうね。前に紹介した『何でも屋』でも魔導具は取り扱ってるんだけど、あそこは名前の通り他にも色々取り扱ってるから、魔導具だけでみたら品揃えはそこまでではないわ」


「魔導具専門の店となりますと、この街には数件程度になるでしょうね。これでもダンジョンが近くにあるという立地だけあって、この規模の街にしては十分多いと言えるでしょう」


「その点を踏まえて私がお勧めするとしたら……」


「エイジ様がどのような魔導具をお求めかは分かりませんが、やはりまずお勧めするなら……」


「ブルックナー商会ね!」

「ブルックナー商会でしょう」


 まるで申し合わせたようにふたりの声が重なって、同じ店名を挙げる。


「ほおう。ふたり声を合わせて同じ名前を出すってこたぁ、大分期待できそうだな」


「ブルックナー商会は魔導具を扱う商会としては有名じゃからな。それでシリアはエイジと一緒に行くのか?」


「そうね。今回はそれなりに収入も入ったし、私も案内がてら見て来るわ」


「そうか。では儂らは先にホームに帰っておるぞ」


 ビッグシールドの5人は、ダマスカス級という上位の冒険者パーティーにしては珍しく、全員同じ家で暮らしている。

 それはまるでクランのホームのようであり、実際ボミオス達もホームと呼んでいる。

 このホームは全員で分担してひとつの物件を購入したもので、それなりに大きな邸宅だ。


 ただ貴族の邸宅のような規模ではないし、内装なども豪華ではない。

 家の広さに拘るタイプがいなかったということもあるが、この街を拠点にしているとはいえ、冒険者は街を出ている期間も多い。

 余り大きな家だと手入れも大変になるので、あえて中規模の、それでも一般的な現代日本人からすればかなり広く思えるような家で暮らしている。


「へぇー、魔導具ね。あたしでも使えるの売ってるかな?」


「それは……どうかしらね」


 身長40センチほどのティアでは、携帯できるものとなるとかなりの制限が出来てしまう。

 ただ魔導具も色々種類があるので、ないとは言い切れない。


「行ってみりゃあ分かるさ。んじゃそういうことで、またな! ボミオス」


「うむ。シリア、余りしょうもないものを買って無駄遣いするなよ?」


「わ、分かってるわよ……」


 魔術大好きなシリアは、魔導具のことも魔術に次ぐくらいに好きだ。

 ボミオスが忠告したように、これまでも何度かしょうもない魔導具を購入した過去がある。


「では行きましょうか」


 こうしてボミオスらと別れた影治は、シリアとリュシェルの案内のもと、二人のお勧めの店へと向かうのだった。


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