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ドラゴンアヴェンジャー  作者: PIAS
第5章 スメリワ襲撃

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第235話 同盟締結


 魔物暴走によるオーク襲撃から3日が経過した。

 影治たちの活躍もあって、幸い街の中にまで被害が及ぶことはなかった。

 ただ街壁の外にある外街部分では、抑えきれなかったオークによって建物が破壊される被害も出ている。


 そして今回の戦いによる被害者は、死者が500名以上。

 重傷者、軽症者は1000人近くに及んでいる。

 ただし、軽症者についてはこの世界では治癒魔術というのがあるので、順に回復しているところだ。


 犠牲者の数は決して少ないとは言えない。

 だが今回のは通常の魔物暴走とは違い、皇帝種による大規模な襲撃であった。

 それを踏まえれば、これだけの犠牲で済んだのは奇跡とも言える。

 それだけダンジョン外で暴れ回る皇帝種というのは、厄介な存在なのだ。


 まだまだ戦後処理でごたついてはいるが、忙しさのピークは越えた。

 戦場に散らばったドロップや死体の回収。影治やビッグシールド、その他冒険者など協力者への論功行賞についての話し合い。


 これは本来戦闘に参加してきた者たちに細かく話を聞いて決めていくものだが、誰が見ても影治たちが1番の勲功であることは間違いない。

 また外部からの飛び入り参加ということもあり、早めに報酬を受け取った方がいいだろうということで、一番最初に報酬の話し合いが行われた。


 その結果、影治に対して1500万ダン。

 ビッグシールドたちオークキング討伐隊には1000万ダンの報酬が支払われることとなった。

 この1000万を、ビッグシールドの5人と、リュシェルで山分けする形になる。

 なおカディウスはこの街の関係者であることと、本人が強く固辞したため、特別報酬は受け取っていない。





「この度の助太刀、感謝致す! エイジ殿がいなければ、今こうしてのんびりと話などしていられなかったであろう」


 領主の館の応接室には、魔物暴走が起こった時に話し合っていたメンバーに加え、その時は参加していなかったビッグシールドの5人も招かれていた。

 今回の襲撃の件について、ようやく話し合う時間が取れたとのことで、再びこの応接室に関係者が集まっていたのだ。


「まあ、俺達がいなかったらもっと被害が出てたのは間違いねえな」


「真にそのとおりだ。ビッグシールドの面々と叔父上にも助けられた。この街を救ってくれたこと、礼を申す! それからカレン殿も、護衛として連れて来た者を貸し出してくれたこと、感謝している」


「いえ……。私は結局ほとんどお役には立てませんでしたわ……」


 今回の影治たちのスメリワ訪問は、元々外交任務を受けたカレンの護衛としてのものだ。

 依頼主が、選民思想を持つようないかにもなタイプの貴族だった場合、今回の影治たちの手柄に口を出してくる可能性もあった。

 ルクトリアが言うように、形式としてはカレンが雇った護衛を貸し出したという体になるからだ。


 基本的に、護衛の最中に襲ってきた魔物のドロップや、盗賊からはぎ取った戦利品などは、護衛として返り討ちにした冒険者のものとなることが一般的だ。

 だが今回の場合、事態が突発的だったこともあり、報酬をもらうぞと影治は言っていたものの、細かい報酬の内容について詰める時間はなかった。


 そこを逆手に取ることもできなくはないし、実際にそういうことをする貴族もいる。

 しかしカレンはそのようなことを言い出す性格ではなかったし、寧ろ自分が何の役にも立てなかったと酷く落ち込んでいた。


「いやいや、カレン殿はその必要もないのに、私と共に簡易拠点で待機してもらっていた。1度戦線が崩れ、簡易拠点に魔物が数体流れてきた時も、攻撃魔術で援護していたではないか」


「それ位は当然ですわ! でも、私の魔術など余り効いてはおりませんでした……」


「結果が重要視される時もあるだろう。しかし貴女のあの行動は、私の印象に強く残っておる。そう自分を卑下することはない」


「伯爵……」


 オークエンペラー率いる増援の精鋭部隊が現れた時は、戦場全体で混乱が起こっていた。

 この混乱によって、簡易拠点付近まで魔物の侵入を許し、外街にも魔物が入り込んでしまっている。


「そうですよ、カレン様。あの時のカレン様は御立派でした」


「アルフォンス……。そうですわね。過ぎ去った過去のことを思い悩んでも仕方ありませんわね」


 今回の襲撃では目立っていなかったが、カレンに同行しているアルフォンスをはじめとする騎士達も、カレンの護衛として簡易拠点に詰めていた。

 彼らはカレンの命で、後片付けなどの戦後処理にも駆り出されている。

 魔物のドロップを集めるだけでなく、戦場で死した者の回収など、ここ数日は働き詰めだった。


「過ぎ去った過去……。そうだな、マセッティ領は……いや、我々森の古いエルフたちもいつまでも過去に捕らわれるべきではない……な」


 ルクトリアも200年以上この地に暮らしてきたエルフであり、古いエルフたちの考えがいつの間にか染みついていた。

 だが現実主義者でもあるルクトリアは、このままでいいのか? という考えも持ち合わせている。

 それは帝国派と呼ばれる連中が、王国の貴族内で勢力を強め始めた時から思っていたことだった。


「カディウス様。私はこの度カレン殿からの申し出にあった、反帝国派からの同盟の誘いに乗りたいと思うのですが、いかがでしょうか?」


「お主から相談を受けていた件じゃな? 最初に接触してきた帝国派とやらの話は論ずるに値せんかった。じゃが、今回の件は老いぼれの儂の目を開かせた」


 そう言ってカディウスは影治へと視線を移す。


「今回のオークの巣については、元々森の各地から優秀なものを集め討伐する予定じゃった。それなり以上に勝算はあったつもりじゃが、オークエンペラーが発生していたとなると、討伐に成功したとて相当な被害が出たであろう」


 カディウスの脳裏に、同じ十老のひとりであったルゥーランの事が思い浮かぶ。

 十老は老齢のエルフのみで構成されているだけあって、権力だけでなく戦力としても強い力を持っていた。

 だがもし十老全員が参加していたとしても、オークエンペラー相手では半数近くが死んでいただろうとカディウスは見ている。


「カレンといったか。帝国というのはあれより強大な軍を持つと聞くが、間違いないかの?」


「はい。その気になれば万単位の軍を派遣可能ですし、帝国には四将軍と呼ばれる者達や、1級ハンターなどの個として強力な力を持つ者も多く在籍しております。本来なら王国内で争いなどしている場合ではないのです!」


「ふむ……そうか。であれば、儂も反帝国派と手を結ぶことに否やはないぞい」


「分かりました。では早速長老たちを招いて会議を……」


「その必要はない。儂の一存でこの件は決定しても構わん」


「ですが……構わないのですか?」


「他の長老たちが周囲の森に散って暮らしているというのに、何故儂がこの街で暮らしてると思うとる? このような時に即座に決定を下すため、儂はここで暮らしておるのじゃ」


 十老同士に身分の上下の差はないが、意見が割れた時のために最終決定権を持つ最長老のような者がひとりだけ存在する。

 それがカディウスであり、その為に領都であるスメリワに居を構えていた。


「それにな、ルーク。儂は見たのじゃ。オークエンペラーとオークキング。王種と帝王種を相手に、ひとりで打ち倒してしまったエイジ殿の姿を」


 そう語るカディウスは、その時の情景を思い浮かべたのか興奮した口調で語る。


「儂はエイジ殿が戦っている場面を見て、リョウ様の姿が重なって見えた。上位精霊と契約し、フェアリーの進化種を従えるなど、まさにリョウ様そのものではないか!」


 幾らカディウスが長寿種のエルフの長老とはいえ、リョウが活躍していた時代は千年単位の昔の話であり、実際にその姿をみたことはない。

 だがドントールの森のエルフの間では、昔からリョウの話が伝えられており、それは幾つかの世代を経ることで神聖化されていった。


「エイジ殿は冒険者ということだが、帝国に対しては並々ならぬ思いを抱いていると聞いた。ならば、儂ら森のエルフもその意に沿うことこそ神意! そう説得すれば、他の長老たちも首を縦に振るじゃろう」


「……分かりました。ではカレン殿、我々マセッティ領は、同盟の申し入れを受けようと思う」


「あ……ありがとうございますわ!」


 大きな騒動に巻き込まれたものの、カレンがダンフリーから与えられた外交任務は、こうして無事達成された。

 影治やビッグシールドも、メインとなる護衛依頼の報酬以上の臨時収入が入り、得られた成果は大きい。


 そして今後の予定としては、あと数日ほどスメリワに滞在した後に、ピュアストールの街へ帰還することになった。

 帰還までの数日の間は、影治たち護衛組は自由行動を与えられている。

 そんな影治のもとに使者が訪れたのは、ルクトリアたちと話をした翌日のことだった。


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