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ドラゴンアヴェンジャー  作者: PIAS
第5章 スメリワ襲撃

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第227話 激闘! オークキング


「あとはオークキングだけじゃな」


「こっからは温存してた闘気術も使って、オレもバリバリ攻撃してやるぜ」


 オークキングの取り巻きはいずれも脅威度Ⅶのツワモノ揃いだった。

 一般的に脅威度Ⅶの魔物というのは、単体で現れたとしても小さな町程度だと危機に陥るレベルだ。


 それは小さな町となると、活動している冒険者のランクがゴールド級辺りまでになるという事情が大きな理由となっている。

 もちろん町を守る為の兵士やら自警団なども組織されているが、基本的に一般兵で飛びぬけた力を持つ者というのは少ない。

 そうした者は自分の力が活かせる冒険者になりがちだ。


 ただし、民兵などの一時的に徴兵される者とは違い、専業の兵士たちは日ごろの訓練によって、一定以上の強さを持ち合わせている。

 だが人間同士の争いで英雄と呼ばれる強者が脅威と見られているように、脅威度の高い魔物というのは、数を揃えたからといって対処するのはなかなか難しい。

 それ故に脅威度Ⅶの魔物ともなると、単体でも小さな町の脅威となりえるのだ。


 その構図はこの戦場においても変わらなかった。

 オークキングを取り囲むボミオス達の周りでは、オークキングが命令を出しているのか、周辺のオークたちが王の下へと馳せ参じようと集まってきている。


 それを食い止めようと、マセッティ領の兵士達は敵の強さに合わせて人数を調整し、数で押し込む形で集合を防いでいた。

 中には単独でそれなりの強さを持つ冒険者パーティーも加わっており、当初は双方共に左右に広がった横陣形から、オークキングがいた中央付近に戦力が集結していって戦いは激しさを増している。


「オラオラオラ!」


 先ほど宣言したとおり、ここが勝負所とみたバキルは、自分でも無茶してるなと思えるほどのペースで、オークキングへと攻撃を加えていく。

 それに対しオークキングはその巨体に似合わない俊敏さでもって、バキルの攻撃を躱す。


 しかし相手はバキルだけではない。

 これまで防御重視でやってきたボミオスが攻守のバランスを入れ替え、更にはサイラークの強力な毒を仕込んだ短剣による攻撃や、後衛からの魔術攻撃が加わることで、さしものオークキングであっても無傷ではいられない。


「ッ! シリア! 右から……」


「ほいっ!」


 敵は完全にオークキングだけになったという訳ではなく、周囲の味方が必死に集合を防いでくれてはいたが、時折その包囲網を突破するオークも現れる。

 だがそうしたオークは、抜け目なく戦場を見渡しているカディウスの風の魔弓攻撃や、かなり様になっているリュシェルのレイピア捌きによって、その都度処されていった。


「うー、こうあちこちで戦闘が起こってるとやりにくいわね」


「おめぇは近接戦が得意じゃねえんだから、せめて周囲の観察だけはよくしとけよ」


「分かってるわよ! って……、【癒やしの光】」


 いつの間にかシリアの近くまで下がっていたバキルが、いつものような軽口を叩く。

 シリアも思わずいつも通りに軽口を返そうとしたが、すぐさまバキルの状態に気付いて治癒魔術を発動させる。


 自分自身に使用するならともかく、激しい戦闘をしている最中に他者に治癒魔術を飛ばすのは難しい。

 影治のように物理も魔術も両方いけるのならともかく、激しく動き回る前衛相手に、物理戦闘の心得の薄い魔術師が治癒魔術を掛けようとした場合、的を絞るのがかなり難しいのだ。


 そのため、治癒魔術を受ける際には一旦動きを止めてもらうか、治癒魔術が使える者の傍まで下がるのが基本だ。

 それとわざわざ治癒魔術士の傍まで下がるのは、その方が治癒効果が高くなるからという理由も含まれている。


 攻撃魔術には射程距離が存在するが、治癒魔術の場合は術者から距離が離れるほど効果が弱まるという特性がある。

 これは通常魔術同様に、クラスの高い治癒魔術ほど基本射程が伸びるのだが、クラスⅠの【治癒の光】の場合、術者から半径3メートル以内でないと十全に治癒魔術の効果が発揮できないと言われている。

 長距離発動によってその射程も伸ばせるが、魔力温存のためにそうする者は少ない。


「シリア、魔力はあとどんくらいある?」


「ほとんど治癒魔術に絞ってるから、まだ半分くらいは余裕あるわ」


「そっか。んじゃあ、そのまま節約して持久戦のつもりで頼むぜ」


「っ、わかったわ」


 ダメージを回復させる治癒魔術の場合、術者の持つ各種適正の他に、その術者の熟練度が回復量に大きく影響する。

 世間一般的には治癒魔術というと光魔術のことを指すのだが、クラスⅢまで使える術者の【癒しの光】と、シリアのようにクラスⅤまで使用可能な者が行使する【癒しの光】では、後者の方が明らかに回復量が多いのだ。


 この特性は攻撃魔術にも当て嵌まりはするのだが、攻撃魔術は治癒魔術ほどに熟練度上昇による威力の向上効果はない。

 単純により上位のクラスの攻撃魔術ほど、威力がどんどん向上していく仕組みだ。


 光魔術の場合、クラスⅠの【癒しの光】の次はクラスⅥの【大いなる癒しの光】と大分間が空いてしまうが、治癒魔術の持つこの特性によって、その間の回復量不足を補ってくれている。

 とはいえ、バキルを治癒するのに【癒しの光】を3回ほど使用することになり、その間前衛の負担は増してしまっていた。

 シリアから治癒を受けたバキルは、持久戦になるということを伝えた後、すぐさま前線へと引き返す。


「流石オークキングだけあって、かなりタフですね~」


「そうね。さっきバキルの攻撃が鎧で覆われてない部分に当たるのを見たけど、軽く切り裂いた程度の傷しか与えられてなかったわ」


 所々に金属が使われた鎧を纏うオークキングだが、体全身をびっちりと防具で覆っている訳ではない。

 どちらかというと、金属部品は使われているものの、軽装で戦う戦士のような出で立ちをしている。


 だからこそ腕や足部分などに、地肌がそのまま覗いている部位が見えるのだが、バキルの大剣による攻撃を受けたというのに、大きく切り裂くまで至っていない。

 それはバキルの大剣が、元々切り裂くよりは叩き斬る武器であることも要因だったが、単純にオークキングの皮膚が金属のごとく硬さを発揮していることが、大きな原因だった。


「なるほど、持久戦ということでしたらこれを試してみましょう。【吸血魔草】」


 シリアとアトリエルの話を聞いていたリュシェルが、これまで見せていなかった魔術を発動させる。

 それは吸血魔草という、実際に存在する植物系の魔物を魔力によって一時的に生み出す植物魔術だ。


 茨のようなトゲを幾つも生やした蔓部分は、見た目以上に頑丈で鋭く、そのトゲで穿った相手の血を吸う。

 また蔓のあちこちからは、枝のように細く伸びる蔓が蠢いており、その先には切れ味鋭い葉がついている。

 蔓を鞭のようにして振るい、刃物のように鋭い葉の部分で切り裂かれた相手は、どくどくと脈打つ葉脈を通じて血を吸収される。

 そして数は一番少ないのだが、分岐した蔓の先には大輪の花が咲いているものもあり、その花部分はより直接的に口を開き、得物に噛みついて血を(する)る。


 多少刃物で切られようが鈍器で頭を殴られようが、この世界の強者は信じられないほどのタフさでもって生き延びる。

 しかし、大量に血を失ってしまうと危険である、という人体構造に変わりはない。


 そういった意味では、この吸血に特化した吸血魔草は恐ろしい魔物と言えるだろう。

 実際に、植物魔術の【吸血魔草】はクラスⅧに属しており、リュシェルの使える中でも最高難度の植物魔術だった。


「うわあぁー、えぐぅぅー」


「植物魔術には植物系の魔物を生み出す魔術があるけど、あれもそうなのかしら。だとしたら、余り戦いたくない魔物ね」


「…………っ」


 女性陣にはドン引きされているが、リュシェルにはその評価を気にしている余裕がない。

 しっかり集中して吸血魔草の操作をしないと、近くにいるボミオスらに攻撃がいってしまう可能性もあるからだ。


 何故ただの生体組織が金属以上の硬さになるのか。

 確かに爪や歯など、人体にも硬い部分は存在するが、全身がその硬さというのは明らかにおかしい。

 だがここはファンタジーな世界。

 特に相手が魔物となれば、そんな常識などあってなきが如し。


 リュシェルの【吸血魔草】も、オークキング相手となると傷を与えるのも至難だ。

 だがかすり傷程度なら与えることは出来ている。

 そうして出来た小さな傷に、スルスルと蔓が絡みつき、傷をつけるのではなく傷口から血を少しでも吸い出し、オークキングを弱らせていく。


「行ける……行けるぞ!!」


「この豚野郎が……、いい加減死に腐れ! ビッグソードアタック!」


 血を奪われたせいか、はたまた単純にダメージが積み重なったせいか。

 オークキングの動きは徐々に精細を欠いていった。

 前衛による攻撃や吸血魔草だけでなく、これまでも散々攻撃魔術がぶつけられているのだ。

 蓄積されたダメージはすでにかなりのものになっている。


 最後にバキルが全てを使い果たすつもりの全力で闘気技を放つと、ようやくオークキングの動きは止まり、数瞬後には魔石とドロップを残して消えていった。


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