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ドラゴンアヴェンジャー  作者: PIAS
第5章 スメリワ襲撃

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第226話 前哨戦


 ハイオークウィザードによる攻撃魔術は、駆け出しつつあったボミオスらではなく、後衛で固まっていたシリアたちへと向けられる。

 クラスⅦの火属性攻撃魔術である【轟火球】は、轟々と燃える炎の球を生み出す。

 その炎は物理的には鉄を融解させるほどの高温であったが、一番重要なのはこれが魔術による攻撃であるという点だ。


 光属性などが典型的であるが、現象としては電磁波の一種である可視光にすぎないはずのものが、何故か光を浴びた者に生命をも脅かす効果を発揮する。

 無論炎の球による熱のダメージも与えるのだが、それがダメージの全てではない。


 そうした物理的ダメージとは別に、火属性の魔術攻撃によるダメージを同時にもらっているのだ。

 そしてそれらは防御系魔術で魔術への抵抗を上げることによって、そうした攻撃魔術のダメージを軽減させることも出来る。


 その結果、地獄のような炎の球の爆発に巻き込まれながれも、シリア達後衛は全身火だるまになることはなかったし、ある程度攻撃魔術に抵抗したことでダメージそのものも軽減されている。


 そして、攻撃魔術の中にはそうした魔術的ダメージよりも、物理ダメージの割合が大きいものも存在する。

 リュシェルが使用した植物魔術も、そうした魔術のひとつだった。


「……っっ、こちらもお返しです! 樹柱挟撃(じゅちゅうきょうげき)


 【轟火球】のダメージもそのままに、リュシェルが仕返しとばかりに魔術を発動させると、中空に2本の木製の柱が現れる。

 それは電信柱と比べると二回りか三回りほど太く、ずっしりとしていた。


 その宙に浮かぶ2本の樹柱は、リュシェル達の目的であるオークキングを挟みこむ位置に生成され、次の瞬間には磁石のN極とS極が引き合うかの如く、猛烈な速度で互いに向けて移動を開始する。

 否、それは移動というよりは最早ミサイルが発射されたかのような勢いだった。


 その光景を見た者は、誰しもが2本の柱に挟み潰されるオークキングの姿を幻視したことだろう。

 それほどインパクトのある2本の樹柱の衝突は、しかし相手を押し潰すことはなかった。

 ファイティングポーズの状態から、腕を左右に押し開いたオークキングは、その体勢で猛スピードで迫る丸太の衝撃を受け止めきった。


「ううん、これまた随分あっさりと受け止められたものですね……」


「リュシェル、やはりオークキングは手ごわいようじゃ。まずは取り巻き共から始末していくぞい」


「……の方が良さそうですね」


 オークキング側の戦力は精鋭だけを集めたのか、数はオークキング含めて5体と少ない。

 これには最初のピー助らの活躍によって、思いのほかオーク側の戦力が削られたことが関係している。

 当初はオークキング親衛隊のような、ミドルクラスのオーク種が護衛についていたのだが、それらは減らされた戦力の補填として持ち場を離れていたのだ。


「バキル! 無理に攻撃しようとせず、致命傷をもらわないようにだけ注意しろ!」


「くっ、オレの流儀じゃあねえが、そうも言ってられねえか……」


 オークキング側は、ハイオークウィザード以外の3体はハイオークリーダー、オークジェネラル、ハイオークナイトと前衛よりの構成になっている。

 逆にボミオス側はリュシェルやカディウスなど、クラスⅧの魔術師を2名も抱えた上に、更にシリアとアトリエルの魔術師2名も控えている。

 となると必然的に、前衛で耐えて後衛の魔術でダメージを与えていくという戦いへシフトしていく。


 オークジェネラルの巨大なハルバードによる攻撃は、ボミオスの大盾でしっかりガードを取ってもなお、衝撃が体まで突き抜けるほどに重く、鋭い。

 ハイオークナイトは片手剣と盾というスタイルをしており、攻撃力はジェネラルには及ばないが盾を器用に使いこなしており、バキルの飛び跳ねるような奇抜な動きにも惑わされることがなかった。

 ハイオークリーダーは槍を手にしており、他のオークと連携して中距離から槍を突き出してくる。


「ぐっ、マズイ!」


 しかし何より危険だったのは、大斧を振り回すオークキングだった。

 それは防御重視のタンク職であるボミオスが、一目で防御を諦めて回避に専念する程の威力でもって、当たれば一撃で全て持っていかれそうな強力な一撃を次々と繰り出す。


 その背筋も凍るような攻撃をどうにか捌いてきたボミオスだったが、自分の力量を超える相手の攻撃を防ぎ続けることは出来なかった。

 ほんの僅かにだが、スメリワへ向かう道中に受けた影治の指導がなければ、もう少し前に致命的な一撃をもらっていたことだろう。

 しかし致命的な一撃は防げても、防御態勢を維持することはできなかった。

 体のバランスが大きく乱されたところに、オークキングの大斧が迫る。


「これはいかん!」


 まともに盾を構えることも出来ないボミオスの状態を見て取ったカディウスは、咄嗟に風の魔弓を放つ。……ボミオスへと向かって。


「ぬおおっ!?」


 カディウスの風の魔弓は魔力を込めることで風の矢が放てるが、その際に貫通力を高めるか衝撃を高めるかの調整が効く。

 今回は風の塊をぶつけるようにしてボミオスへと放つことで、咄嗟にボミオスを吹き飛ばし、オークキングの致命の一撃を強引に逸らした。


「ボミオス! 【巨大樹の腕】」


 続いてリュシェルの使用した【巨大樹の腕】によって、吹きとばされたボミオスに追撃を加えようとしていたオークキングの動きを阻害する。

 【巨大樹の腕】は地面から太い樹木の腕を生やして、自由に動かすことが出来る補助系の魔術だ。

 これでもクラスⅦの植物魔術だけあって、オークンキングといえどもこの巨大な腕に掴まれたら易々と抜けることは出来ない。


 カディウスとリュシェルの援護により、危機を脱したボミオス。

 樹木の腕で拘束されているオークキングに下手に近づくことはせず、オークジェネラルたちに苦戦しているバキルの援護に駆け寄る。


「巨大樹の腕による拘束は長持ちしません! 今の内に取り巻きの1体でも倒しきりましょう!」


「うむ。差し当たってはオークジェネラルを狙うとしよう。【強打強風】」


 オークジェネラルは巨大なハルバードによる攻撃が脅威な上に、全身金属鎧を身に着けているため、物理防御力が高い。

 前衛のボミオス達にしても、オークキングの次に驚異的な攻撃をしてくるオークジェネラルを排除できれば、かなり戦闘が楽になる。


「じゃあ、わたしもー! 【強打強風】」


 カディウスに続き、アトリエルによる風魔術がオークジェネラルに向けられる。

 それも両者共に同時詠唱によって、魔術を多重に発動させていた。

 特にカディウスは400年以上生きて来ただけあって、同じ魔術を重ねる多重詠唱であれば、同時に3つまで発動が可能だ。

 そこにアトリエルの同時詠唱によって、さらに2つ分の【強打強風】が重ねられ、計5発分のクラスⅦの攻撃魔術がオークジェネラルに殺到した。


「わお! ナイス魔術!」


 その連続攻撃によって、一気に体力を持ってかれたオークジェネラルは、追撃の魔術を幾つかくらったところでついに塵となって消える。

 それを見て思わずサイラークが調子のいい声を上げた。


「ぬっ、オークキングの拘束が解けたようじゃ! 奴は儂が気合を入れて抑えるから、この調子で少しずつ敵を削っていってくれい!」


「おうよ!」


 もはやボミオスは攻撃を完全に捨てたような立ち回りで、いかにオークキングの強力な一撃を防ぎきるか、一手一手ごとに周囲の状況を踏まえながら、最善の方法で防御に専念していく。


 一方オークキングに次いで攻撃力の高いオークジェネラルを倒したことで、他の取り巻きへの対処が大分やりやすくなっていた。

 特にサイラークはちょこまかとオークハイウィザードにちょっかいをかけており、敵の魔術による援護を阻害し続ける。


 これによって戦いのバランスは傾きはじめ、ハイオークリーダー、ハイオークウィザード、ハイオークナイトの順に取り巻きを倒してゆき、ようやくボミオス達はオークキングと向かい合う段階へと持っていくことに成功した。


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