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ドラゴンアヴェンジャー  作者: PIAS
第5章 スメリワ襲撃

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第218話 マセッティ伯爵との面会


「カレン様。マセッティ伯爵との面会の約束を取り付けて参りました。日時は2日後の昼です」


「ノーマン、ご苦労様でした。私の指示の不備で無駄に走り回らせてごめんなさいね」


「いえ。私もその時どう合流するのか頭になかったので、責は私にもあります」


「そんな……。私の方こそ……」


「はい、ストップ。カレンもノーマンもどちらも反省してるのだから、次からは同じ過ちをしないよう気を付ければいいんですよ」


「そう……ですね、先生」


 ボミオスも100年以上生きているが、リュシェルはその倍以上生きているだけあって、こういった時に醸し出される雰囲気は、熟成された酒のようにまろやかに、カレンとノーマンに染み渡る。


「お前、普通にしてるとちゃんとそれっぽいんだよな」


「エイジ様、どうしました? 私の顔に何かついています?」


「いーや、なんでもねえ。とりあえず面会は2日後ってことだな? その間俺らはどうすりゃいいんだ?」


 影治も前世での約50年の人生があるので、その年数を含めればそれなりの年齢にはなる。

 しかしその大半を一人で過ごしてきたせいか、人間関係の築き方やら人との接し方やらが、妙な感じに固定されたまんま転生してしまっていた。

 だからこそ、リュシェルのこうした年長者っぽいところを見ると、自分との違いを大きく感じてしまう。


「そうですわね。護衛としてはアルフォンス達がいるので、基本自由行動で構いませんわ。もしかしたら、私が街に出かける時に同行を求めることがあるかもしれませんけど」


「そっか。そん時は早めに言ってくれ」


 影治としては、途中で出会ったリーブスから購入した野菜や果物を気に入ったので、自由行動できるならそれらを買い求めようと思っていた。

 ビッグシールドの面々も、自由行動と聞いて雑談しながら予定を立てている。

 といっても完全に休みモードになる訳ではなく、武器の手入れやら不足している日用品の補充など、熟練の冒険者としてそういったこともしっかりと行う。




 そうして各自が面会までの2日間を思い思いに過ごし、面会当日がやってくる。

 スメリワにある領主の館は東区に存在し、しっかりとした城壁に覆われた砦となっている。

 館の前には流石エルフが治める領地だということか、それなりの広さの林が広がっており、そこに暮らすエルフもいるらしい。

 今回はその林は通らず、北から回り込むように走っている道を通って、館へと向かう。


「シドニア伯の名代として面会を希望されたカレン様でございますね。ルクトリア様は応接室でお待ちですので、案内致しましょう」


「お願いしますわ。せん……リュシェル殿、アルフォンス、エイジは私と共に」


「承知しました」


 今回一緒に同行してきた全員で領主の館を訪ねたカレンだったが、流石に伯爵との面会に全員を連れていく訳にもいかず、随行者を指名する。

 突然名前を呼ばれた影治は、一瞬「え、俺も?」という表情を見せながらも素直に従い、家人の案内のままにカレンらと共に応接室に向かう。


「旦那様、お客様を案内して参りました」


「うむ、中へ」


 部屋の中からの声に、案内人が扉を開く。

 案内された応接室は、貴人をもてなすこともあるということで最低限の装飾が施されてはいたが、全体的に無骨というか実用的な作りをしていた。

 それは何も応接室だけでなく、この領主の館全体がそういった趣をしている。

 この館を見るだけでも、領主の性格というのが見えて来るようだった。


 応接室の中には、この館の主であるマセッティ伯爵がひとり待ち受けている。

 彼こそがこの広大なマセッティ領を治める領主である、ルクトリア・マセッティその人だ。


 エルフということで見た目から年齢を推測できないが、その佇まいから長寿者特有の雰囲気のようなものがにじみ出ている。

 生まれつきの部分もあるだろうが、厳めしい顔つきと厳しい目つきをしたルクトリアは、本人にその意がなくとも相手が怯んでしまう迫力のようなものがあった。

 しかしその眼光に怯むことなく、カレンはカーテシーを行いながら毅然とした様子で話し掛ける。


「お初にお目にかかります。ダンフリー・シドニア伯爵の三女、カレン・シドニアと申します。此度は父の名代として交渉を行う為、面会を求めた次第でございます」


「話は聞いておる……が。叔父上が随行しているというのは聞いてなかったぞ」


「久しぶり。相変わらずいかつい顔してるねえ」


 その馴れ馴れしい物言いに、しかしルクトリアは気分を害したといった様子はない。

 同行者であるカレンの方が、そんなリュシェルの態度にビクビクとしていたほどだ。


「これが私の地顔なのだ。叔父上の方こそ、相変わらずのようであるな」


「まあね。一度根付いた性格なんてそう簡単に変わるものじゃあないよ」


 リュシェルの態度は身内相手だけあって、カレンがこれまで見たことないようなフランクなものだ。

 そんな珍しいリュシェルの態度に思わず気を取られていたカレンであったが、今回の目的は叔父と甥の感動の対面という訳ではないので、話に割り込んでいく。


「ご存じかと思いますが、リュシェル殿は現在ピュアストールで客人として迎えております。この度同行して頂いたのは、マセッティ伯爵との交渉の場で口添えして頂こうかと思いまして……」


「ふむ……。用件は王国内のゴタゴタについてかね?」


「はい、その通りにございます。私があれこれ申さずとも、マセッティ伯爵も現状はご理解しておられるでしょう。このままことが進めば、王国は帝国に飲み込まれてしまいますわ。そのことについて、伯爵はどのようにお考えなのでしょうか?」


 若さ故か、経験不足故か。

 あるいはその両方なのかもしれないが、カレンの物言いは率直だった。

 なればこそ、真に王国の現状を憂うカレンの心情が、ダイレクトにルクトリアにも伝わる。


「私がまず第一に考えるのは、我が領で暮らす民のことだ。そして我ら森に暮らすエルフの多くは、大きな変化を望まない」


「では我々に加勢していただけると……?」


「早まるでない。我々は変化を望まないと言ったのだ。宮中では我らは中立派ということになっているようだが、つまりはその立ち位置を変えるつもりはないということだ」


 順調に話が進んでいるかと思いきや、ルクトリアからの返答は現状維持であった。

 帝国派からの使者に対しては、相手の態度が悪すぎたのでそのような考えを口にすることもなかったが、カレンの態度と想いを見て取ったルクトリアは、こちらも素直にマセッティ領としての方針を明かす。


「そんなっ! ですがこのまま事が推移すれば、帝国の手はどんどん伸びて参りますわ! かの国が亜人を排斥しているのは伯爵も知っておられるでしょう。マセッティ領はエルフが中心となっていますが、領内には亜人も多く暮らしているのではないのですか?」


「そうだな。我々エルフは故郷の森であるこの地であっても、数の上では多くない。人口の大部分はヒューマンと、その他の亜人種族で占められている」


「でしたら、亜人を排斥する帝国の手に落ちてしまった場合、どのようなことになるか、火を見るより明らかではないかと思いますわ」


「無論そうなる前に我らも戦うだろう。相手が帝国派の王国軍か、帝国本土から押し寄せた帝国軍かは分からぬがな」


「それならば、最初から我々反帝国派と手を結んだ方が良いのではないでしょうか?」


「正直私としては、その選択もありかなとは思っている。だが、そう簡単にはいかぬのだ……」


 カレンからすると、何故ルクトリアが賛成よりに考えているというのに、手を取り合わないのか理解出来なかった。

 そんなカレンの様子を読み取ったのだろう。

 ルクトリアは自分達の事情について語り始めた。


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