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ドラゴンアヴェンジャー  作者: PIAS
第5章 スメリワ襲撃

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第214話 神聖魔術と植物魔術


「それは助かる。ところで、リュシェルは神聖魔術というのを知っているか?」


「神聖魔術……ですか? それは光魔術とは別の魔術なのですよね?」


「そうだ」


 光魔術はその見た目と特性から、聖なる属性でもあるという説がある。

 特に光魔術を扱う神官がその説を主張したりしているのだが、特にこれといった明確な根拠はない。


「となりますと、心当たりはひとつしかありませんね」


「お? 心当たりがあるのか?」


 回復魔術以上に世間では知られていない魔術だと思っていた影治は、心当たりがあるというリュシェルに感心した表情を向けている。

 なお近くで話を聞いているシリアも神聖魔術のことは知らないのか、めちゃくちゃ集中して話に耳を傾けていた。


「はい。かつてこの地を治めていたリョウは、かつて白くまばゆい光を放つ魔術によって、不死者の王を討伐したという伝説が残っています。古文書によれば、それは光魔術とはまた別属性の魔術らしいのです」


「ほおう」


「そしてこれまた曖昧な情報なのですが、悪魔にも闇属性に似た特殊な属性魔術を使うという文献も存在します。私はこのことから、恐らくリョウがかつて使用したという魔術は、天使特有の……あるいは天使が得意とする属性の魔術ではないかと思っておりました」


「おお、リュシェル。お前中々博識だな! その通り、天使が得意とするのが神聖魔術であり、悪魔が得意とするのが暗黒魔術だ。光魔術や闇魔術と似ている部分はあるが、全く別の属性魔術だ。例えば……【白灯】」


 神聖魔術については、魂環の書の影響を受けていないので無詠唱でも発動出来るのだが、分かりやすいように敢えて詠唱して発動させる。

 リュシェルも話の流れから予想していたのだろうが、初めてみる属性の魔術を見てやたらとテンションが上がっていた。

 それは近くにいるシリアも同様だ。


「す、凄いわ! 一見光の玉と似てるけど色合いが違うし、何よりこの白い光からは何か温かさのようなものを感じる……」


「確かに、魔術に詳しくねえオレにも分かるぜ。なんか安心する光っつうかなんつうか……」


 森で暮らしていた頃からほとんど使ってこなかった神聖魔術。

 影治自身は意識することはなかったが、久しぶりに神聖魔術を発動してみると、周囲からはやたらと好感触な反応が返ってくる。

 だが例外もあるようだった。


「そ、そうかい? おいらはその白い光を見てっと、どことなく不安な気持ちが湧きあがってくるんだけど……」


 唯一オークハイスカウトのサイラークだけは、神聖魔術に拒否反応を示していた。

 その反応を見て、影治は【白灯】の発動を取り消す。


「む、具体的に何か悪影響はあるのか?」


「いや……。別段動きが悪くなるとか、そういった影響はなかったよ」


「そっか。実は神聖属性の攻撃魔術は、人間にはあんま効かねえんだよな。でも代わりに悪魔やアンデッドにはかなり有効だ。魔物にも他の属性よりは効果がありそうだから、妖魔であるサイラークだけそういった反応が出たのかもしれん」


 妖魔の認識としては自分達は魔物ではなく、妖魔という種族であると思っている。

 だが魔物から妖魔が生まれる以上、自分達が魔物扱いされることに、それほど強い拒否反応は示さない。

 だがそれを理由に攻撃を仕掛けてくる輩には、容赦なく反撃もする。


「へぇ、興味深いわね。それじゃあ、悪魔が使うという暗黒魔術は逆の反応になるのかしらね?」


「生憎とそっちは使えねえんだよ。でもその可能性は高そうだな」


 影治としては、闇魔術を修得出来た以上、暗黒魔術も練習すれば覚えられると思っている。

 だが新しい属性の……それもとっかかりが掴みにくい魔術となると、実際にその魔術を使える人に教わった方が修得は早まる。

 そのことを、【落雷】を食らいまくって雷魔術を修得した影治は実感していた。


「あの、魔術の話もいいですけど、武術の話も伺いたいですわ」


 魔術に関してはやたらと食い気味のふたり(リュシェルとシリア)がいるため、道中では魔術の話になることが多い。

 カレンも魔術が使えるので黙って話を聞いてはいたが、話に割って入るほど魔術への造詣が深くなかった。

 そこでカレンは、別方面から話の切り口を見出そうと話題を振る。


「武術ってもなあ。こうして移動しながらだと、言葉だけで教えるのには無理があるぞ」


「でもそろそろ野営地に着くのですよね? でしたらそこで指導をお願いしますわ」


 目的地であるスメリワの街は、ピュアストールからおよそ10日の行程だ。

 ブランチネスト村から続くマロンヌ川は、ピュアストールの街の近くを通り、スメリワの街に続いている。


 ピュアストールの南にはドントールの森が広がっているが、マロンヌ川の周辺までビッシリ植物が覆っている訳ではない。

 なので川の近くには街道が築かれており、それはスメリワの更に先にあるグレイヤードの街まで続いていた。


 影治たちの現在地は、まだドントールの森にも到達していない草原地帯。

 大分森も近づいているが、この辺りには村もないので、旅人や行商人などが利用する野営地が存在する。

 といっても、草を切り開いた程度のもので専用の施設がある訳ではない。


「儂もエイジの指導には興味があるぞ。お主、あのアシュトンを打ち負かしたそうじゃないか」


「ゲッ、マジかよ! あのオッサンってジジイよりつええんじゃなかったか?」


「うむ。儂は防御タイプだからまだかみ合うが、バキルが相手だと秒殺ものじゃぞ」


「チッ、オレぁ防御なんてチマチマしたもんよりは、攻めて攻めて攻めまくるスタイルなんだよ」


 ビッグシールドは以前より領主との関係を築いていたらしく、それなりに騎士団とも付き合いがあった。

 だがアシュトンが全力を出してしまうと、ボミオス以外だと受けきれない。

 そのため、バキルも本気のアシュトンとは戦ったことがなかった。


「そんなんだと初撃で持ってかれるぞ」


「ああん? アホ抜かせ。幾らなんでも初撃だけでどうにかなる訳あるかよ」


「ほお? じゃあ野営地に着いたら試してやるよ」


「ちょ、あの、私の指導もお願いしますわね!」


 せっかくの自分のテリトリーに持ち込めたと思ったのに、すかさず武闘派の面々が影治に絡みはじめ、話の流れを奪われてしまうカレン。

 慌てた様子で自分をアピールする。


 そうこうしている内に、その日の野営地に到着した一行。

 余裕を持って移動しているおかげで、日が沈む前には到着することが出来たのだが、すでに野営地には先客がいた。

 馬車が3台も停車しており、それらすべてが同じ集団……行商人のグループだったのだ。


「隣を使わせてもらうぞ」


「ええ、どうぞお構いなく。何か入り用のものがございましたら、融通しますよ」


「何を扱ってるのだ?」


「野菜や果物が中心ですね。エルフの作るそれらの品は、なかなかに評判なのですよ」


「ふむ……。あとでうちの者が声を掛けるかもしれん。その時は宜しく頼む」


「ええ、勿論ですとも」


 行商人の責任者と思しき人物と挨拶を交わすボミオス。

 これは予めて決めてあったことだが、ダンフリーの名代として動いている以上、この集団の責任者はカレンとなる。


 しかし無用なトラブルを避ける為、こういった場合には一番慣れているボミオスに対応してもらうことが決めてあった。

 挨拶を交わして戻ってきたボミオスは、先程の会話内容をカレンに伝える。


「なるほど。確かにエルフの作る野菜や果物の話は聞いたことがありますわ。確か、植物魔術には作物の育成に関する魔術があるのですよね?」


「そうですね。エルフは特に植物魔術の適性が高い方ですから、どの集落にも何人かは植物魔術の使い手がいるものです。もっとも森の中で暮らす者が多いので、大量生産は出来ないのですが」


「へぇ? ますます植物魔術に関する興味が湧いてきたな。とりあえず、ちょっとその野菜や果物とやらを見てくるわ」


「えっ? あの、指導の方は……」


「買いもんの後になあ!」


 魔術には目が無い影治だが、元日本人らしく食べ物にも目が無い。

 肉に関しては魔物のドロップもあってかなり種類も豊富で、脅威度の高い魔物の肉などはそれだけで前世での高級肉と同等以上の味がする。


 しかし野菜や果物となると、品種改良が余り進んでいないせいか、甘みが薄い果物や、やたらと苦みの強い野菜なども多い。

 しかも保存技術が未熟であったり、流通網が整っていないこともあって、街で売られている野菜に新鮮なものは少ない。


 とはいえ農薬などを用いず育てられた有機野菜は、現代日本の野菜と比べても著しく味に劣るという訳ではない。

 また肉同様に植物系の魔物の中には食用の実を落とす奴もいるのだが、生憎とピュアストール近辺では余り出回っていなかった。

 最終的には個人の好みになるが、赤い枝豆っぽいチャツルなど、影治はかなりお気に入りだった。


 今回は普段あまり散財する機会がないせいか、それなりの量の野菜や果物を買い込んだ影治。

 両手に大荷物を抱えてみんなの所に戻ると、早速ボミオスやバキル。それからカレンやアルフォンスなどの騎士を巻き込み、武術の指導をはじめるのだった。


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