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ドラゴンアヴェンジャー  作者: PIAS
第29章 フロウヴィウム魔術王国

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第1029話 班別行動


「それでは私はこれで」


 案内を終えた門番は、そう言ってこの場を去っていく。

 残された影治達は、とりあえず部屋の中へ入ると扉を閉めた。

 それからすぐに遮音の魔導具を発動させる。


「――ッ、お初にお目にかかります、エイジ様。そちらは防諜用の魔導具でしょうか?」


「ああ、音を遮断する魔導具だ。この部屋内の音はこれで漏れねえが、部屋の方が大丈夫なのか?」


「はい、問題ありません。これで安心してお話できます」


 影治がいつも使う魔導具は、範囲内の音を外部に漏らさないようにする為の魔導具だ。

 だがその範囲内に、音を外部に届けるような魔導具があった場合は、話は筒抜けになってしまう。

 一応影治も無詠唱で【強力魔力探知】を使用して確認しており、その際にそれらしい魔導具の存在は感知していない。


「それにしても、話には聞いておりましたがエイジ様はその……凄まじいですね」


「うん? こんくらいの防諜対策は普通だろ」


「あ、いえ、そうではなく、上位種族であらせるエイジ様を前に、全身が総毛立っておりまして……」


「ああ、そういや本国の連中もそうだったな」


 普段は身内以外の同族(天使)と会う事もないので、すっかり影治は種族格差について失念していた。

 他の種族を見てもそうなのだが、1つでも上位の種族に進化しているだけで、その相手から圧力を感じたり畏怖を覚えたりするものだ。

 それが2つ以上上位の種族が相手となれば、感じられる圧力も相当なものとなる。


 グルシャスの方から、影治達が直接ウィテストに向かうという連絡を受けていたログモンドだが、実際に影治と対面してすぐにそれが影治であると気付けたのも、影治が上位種族だったからだ。


「まあそれには慣れてもらうしかねえ。それより、フローラの件について聞きたい」


「それなのですが、前回ご報告した内容から大きな進展はありません。ハイエルフの亡霊が現れるという噂以外にも、謎の地下室があるだとか、誰にも知られていない秘密の部屋があると言った噂はあるようですが、確実な情報は掴めていません」


「なんか学校の七不思議みてえな噂だな。古い学院って話だから、そういった話も多いんだろうが……」


「ええ。今クリスピアーノ学院には、生徒として初列と次列が潜入していますが、生徒として不自然でない程度の調査ですと、噂を集める程度が手一杯でして……」


 レイノルズの役職で言うと、下っ端のまとめ役である三列くらいになってくると、それなりに高い戦闘力と調査能力を持ってくるが、それ以下となるととにかく迂闊に動かない事を指導される。

 魔術学院ともなると、魔術的な仕掛けが施されている可能性も高いので、猶更妙な行動はとれない。


「魔術学院以外はどうだ? 王都ともなりゃあ何かあるかもしれねえし、そっちの方がまだ調べやすいんじゃあねえか?」


「そちらも調べているのですが、生憎とめぼしい情報は挙がっておりません。私もこの街で数百年ほど暮らしておりますが、フローラが生きているという話は聞いた事ありません」


「それもそうか」


 ピンポイントでフローラについて調べた事はなかったが、これまで多様な情報を集めて本国に送っていたログモンドが、今まで1度も聞いた事がないという時点で、別の都市やそれ以外の場所に潜んでいる可能性も出てくる。

 或いはフローラはすでに生存していないかのどちらかだ。


「私の下に集まってくるのは噂ばかりですが、それでもクリスピアーノ学院はフロウヴィウム最古の学院ですので、例の情報を集めるには一番最適だと思います。そこでエイジ様達が直接調べてみるのはどうでしょうか?」


「それは密かに忍び込むという意味か?」


 影治達が今いるパターソン国立魔術学院ですら、部外者は入れず、ログモンドの名を出してようやく仮入校許可証が出されたくらいだ。

 恐らくは、クリスピアーノ学院も似たようなものだろう。

 となれば、どうにかして真っ向から入校許可を得るか、裏から忍び込むしかない。


「それは危険……という事はないかもしれませんが、かなりリスクが高いでしょうね。そうではなく、私から紹介するという形で潜り込めると思います。これでも私はそれなりにこの街では名が知られておりますので」


「ふむ、生徒として潜り込むって訳か」


「ああ、いえ。それよりも特別講師として紹介した方が良いでしょう。生徒として潜り込んでも、生徒では閲覧できる資料も制限されます。ですが講師としてなら話は別です」


「そんないきなり現れた講師でもいいのか?」


「流石に学院の正規の教師や関係者ほど、閲覧権限は得られないかと思いますが、ただの生徒よりはマシです。うちの学院でもそうなのですが、外部から講師や研究者を招き入れる事はよくあるのですよ。そういった者達は、専門の分野に関する資料であれば、割と機密性の高い資料の閲覧許可が下りる事もあるのです」


「ふむ……。だが俺等の専門分野っつうと、戦闘で使う魔術とか……あとは魔導具関係くらいじゃねえか?」


「条件を突きつける事も出来ますよ。まず講師として潜り込むのですから、その分の見返りとして学院の資料を調べたいと予め告げておきます。他にも何らかの知識や資料などを提供する事で功績を上げ、その代わりに禁書の閲覧許可を得るなどという方法もありますね」


「ううん、うちの魔導具は特殊だからな。作り方を教える気は毛頭ねえぜ」


「それは当然の判断だと思います。わざわざ作り方などを教える必要はありません。ただ現物を提出するだけでも、便宜を図ってもらえると思いますよ。特に魔導車や魔法陣型の収納魔導具(アイテムボックス)など、普通に販売している魔導具でも十分大きな反響が得られるでしょう」


 このフロウヴィウムはシャルネイア大陸最北の地なので、大陸南部にあるニューホープとはかなり距離がある。

 先日出会った剣聖一行は魔導車を所有していたが、ニューホープ製の優れた魔導具はまだまだフロウヴィウムまで殆ど届いていない。

 それらの魔導具には解析対策を施しているので、例え魔術王国の研究者相手でも、模倣される事はないだろう。


「それも実際に潜り込んでみて、情報が得られなかった場合の話です。案外、普通に調査していく内に、何か情報が掴めるかもしれません。この話、いかがでしょうか?」


「おう、いいんじゃねえか? こっからは学園ものだぜ!」


「お前なあ……」


 前世の娯楽作品を知るヨイチが、ノリノリな様子でやる気を見せる。

 ヨイチは学園ものなどと言っているが、別にそんなに長期間講師をするつもりはない。

 ただ影治としても、魔術学院というのがどういった場所なのかについては興味があった。


「講師として入り込むのは良いのですが、全員という訳にはいきませんよね?」


「そうですね。魔術学院ですので、一定以上の魔術の実力は必要かと。より力を見せつける事で、学院側も協力的になってくれると思います」


「でしたら、私は魔術師ギルドなど学院以外の場所を調べてみようと思います」


 そう言いだしたのは、意外にもリュシェルだった。

 メンバーの中では唯一クリスピアーノ学院と関係があっただけに、真っ先にそう申告するのはいつものリュシェルらしくない。

 そこで疑問に思った影治がその理由を尋ねる。


「クリスピアーノ学院はお前が通ってた所なんだろ? なんか嫌な思い出でもあんのか?」


「えっとその……嫌な思い出と言いますか、苦手な先生がいまして……」


「苦手な先生って、お前が通ってたのってもう何十年も前の話じゃなかったか?」


「そうなんですが、相手もエルフなので今も在籍している可能性は高いんですよ」


「ふうん、お前にしては珍しく主張してきたけど、そう言うなら無理強いはしねえよ。他の皆はどうする? リュシェルが別行動するなら、そっちにもグループ分けする事になるが」


「あたしはパーース! リュシェルと一緒に行動するわ」


「へぇ、珍しいな? ティアもこういうのは付いてくるもんかと思ったのに」


 ヨイチがそう言うと、うんざりした表情でティアがその理由を答える。


「別にここと全く同じではないんだろうけどさー。案内される途中のあたしにぶつけられる視線が、なんっか嫌な感じだったのよねえ」


「ぴぃぴぃ!」


「グィィ……」


 ティアが理由を述べると、賛同するようにピー助やチェスも声を上げる。

 確かにティアが言うように、影治達は学院内を移動している間、やたらと注目を集めていた。


 そのパーティー構成の特異さから、普通に街を歩いていてもドラゴンアヴェンジャー一行は注目を浴びやすい。

 だがこの魔術学院内でティア達に向けられた視線は、珍しいものを見るような視線ではなく、研究対象としての視線が強かった。

 その中には、まるで実験動物でも見るかのような視線も混じっている。

 それはフェアリーであるティアだけでなく、天使の環を浮かべた謎の鳥や、自足歩行する箱であるピー助やチェスにも向けられていた。


「んー、じゃあリュシェルとティアは別行動という事で、他はどうだ?」


 その影治の問いかけに名乗りを挙げたのは、セルマとヨイチの2人。この2人は魔術学院組に加えられた。

 そして全く魔術が使えないシャウラや、剣が本職のガンテツだけでなく、それなりに魔術が使えるエカテリーナも辞退している。


「あの、私は魔術の訓練に集中したいので、調査から外れてもいいでしょうか? 後もう少しで水魔術が成長しそうな感じなんです」


「ああ、別に構わねえぜ。カレンが更に成長するのはこっちも望む所だしな」


「では私はひとり別行動させて頂きますわ」


「となると、クリスピアーノ学院組は3人か」


「問題は、全員を講師として受け入れてもらえるかという所ですが……」


「確約は出来ませんが、大丈夫だと思いますよ。割とそういった臨時の講師が雇われる事はありますからね」


 リュシェルが肝心な点を指摘するも、ログモンドは自信あり気に問題ないと言う。

 最終的に、クリスピアーノ学院には影治達3人が。

 それ以外の王都内での調査を、リュシェルを初めとする残りのメンバーが担当し、カレンは魔術の自主練に励む事となった。


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