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憧れの世界でもう一度  作者: 五味
38章 二度目の降臨祭

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前日から

「確かに、言われてみればと言うものではありますが、そうなると」

「あの姉か。我が巫女が苦手としているのは、理解しておるのだが」

「私だけとすると、またお姉さまは拗ねるわよ。そうなったときには」

「古来より、触らぬ様にと、まざまざと思い知らされるものですね」


トモエを神殿で迎える。オユキとしては、一日離れてというのは、こちらに来てからはいよいよ初めて。かつてにしても、仕事を辞めてから、それ以前にしても出張などと言うものを他の社員たちに任せきりになってからは、本当に無くなっていたこと。

原因はそもそもの勘違い、とでも言えばいいのだろうか。

トモエにしても、オユキにしても。

挙式を行う場、今回諸々の事に対する褒美として王太子妃に願った、水と癒しの神殿を利用して改めて行う挙式。そこには、新郎と新婦の控室があるのだと、そんな事を当然のように考えていた。だが、かつてのブライダルサービスを行う教会を模倣した施設とは異なり、こちらの世界の神殿や教会に当然そのような空間は存在していない。

勿論、日々の勤めを行う者たちが生活を行う場はあるのだが、ではそこで着替えを行い、改めてトモエとオユキがそれぞれにエスコートを受けてとするのかと言われれば、当日の式次第もあっていかにも難しい。そうした事柄を、祭りの前にあれこれと始まりの町の司教から言付かってきた少女たち、とくにアナから指摘されてみれば、互いの常識といえば良いのか、婚儀、婚礼の儀式の差異に気が付かされてというものだ。生前の事であれば、それこそ神前式を行ったのだが、その時にも馴染の、かつてのオユキではなく、トモエと共通の師が馴染の神社ではきちんとそれぞれに着替えを行う場などが用意されていたものだ。


「当日、我らが降りる事は、問題はない。だが」

「そう、ね。貴女は、何処までを考えているのかしら」

「いえ、正直な所、御身らと、この国に神殿のある月と安息、学び舎と言う事ですから、知識と魔ばかりと」


そうした相談というよりも、当日の流れを改めて確認するためにとオユキは降臨祭の前日から水と癒しの神殿へと向かう事を決めた。

何より、その選択で一番大きかったのは、オユキがトモエを迎えるのだと当たり前のように考えていた少女たちからの話を聞いたこと。そして、身の回りにいる人物に相談してみれば、当主でもあり巫女でもあるのだからそれが当然だろうと改めて言われたこともある。そもそも、日々狩猟に向かうトモエを、オユキが迎えるという形が日常となっていたために、他の者たちにしてもそれをオユキも当然と考えていると判断していたこともある。

だからこそ、誰からも確認されぬままになっていたことが判明したため、そこから先は実に愉快な騒ぎとなった。唯一レジス侯爵によるエスコートを受ける、デビュタントの前にその実例を作れたことが幸いな事とでも言えばいいのだろうか。


「降りたいと、愛し子達に会いたいと考えている者たちは多いのだけれど」

「我が眷属も、目指す先として称えている者たちも多い」

「仰せとあらば、そのように申し上げたくはありますが、私としては本番はどちらかといえば」


仮にデビュタントの場面で多くの神々を降ろして、それでトモエとの婚姻で醜態をさらすようでは。


「そう、なのよね。あの子が貴女に与えた功績は」

「我が巫女が長と信ずるものから止められておるからな。我にしても、我らの加護が過剰と思うからこそ与えると決めた物もある。故にこそ」

「そうね、そうした流れがあるのだから、仕方がないわね」

「当日は、功績は身に付ける事となりそうなものですが」


今は神殿の一画。大司教、巫女から話があると言われ、それを待つための場として提供を受けた先に降りてきた二柱とこうしてオユキは色々と話し込んでいる。待ち人とはデビュタントにおける衣装、オユキが着る物ではあるのだが、これから先も恒例になりそうだ、年中行事としていきたいのだとそうした話が学び舎のほうから要望として挙がったこともあり、その相談を。

オユキに合わせた造りにしてしまえば、この世界において似合う相手等と言うのは非常に限られる。色味の事もあるのだが、何よりも背丈の問題として。

言われたオユキとしては、毎度作り直せばいいのでは、それこそ分かり易い装飾だけでもいいのではないだろうかなどといった物だが、そのような物ではないとトモエにまで言われてしまえばというもの。

オユキにしてみれば、貴族感とでも言えばいいのだろうか。かつての世界においても、衣装など、特にハレの日の装束など定期的に作り直しを行っていたものだという認識がある。そも場すら定期的に遷宮していたものを知っているために、作り直せばいいだろうと考えているため、基本的に乗り気ではない。だからこそ、こうして待合の時間にこれ幸いとばかりに神々に衣装を強請ってみたりとしている。職権濫用というよりも、己の持つ間違いのない特権を今後の為にと。


「成程な」

「どう、かしら」


しかして、今の相談相手二人に関しては、オユキがデビュタントの際に功績を身に付けるか否かに関しては、違う意見。


「しかして、我が巫女の晴れ舞台ではあるのだぞ」

「年中行事でしょう。なら、象徴として今後となるのであれば、私のいとし子達はそこで差が出る事を好みはしないはずよ」


戦と武技からは、己の巫女だと示している存在の晴れ舞台なのだからと。

水と癒しからは、後に続くのであればオユキという例外と比べられるのは酷だと。


「そのあたりは、こちらから決めたこととしてというよりも、学び舎でデビュタントを担当する者たちからとして頂きたいものですが」


オユキとしては、そのあたりも含めて自主性に任せようと。


「今年は、誰であったか」

「当家で代表として書状を受け取っているのはジュディットさんですが、あくまで女性と言う事が重視された選択とのことでしたが」


ファンタズマ子爵宛にとされている手紙であり、派閥への配慮もあるため代表とは言うものの実態は不明だとオユキは考えている。


「その子の事だったら、ノエミに聞くのがいいのかしら」

「その方のこの王都における巫女であったか」

「ええ。行儀見習いに来ていたはずよ、その子は」

「こちらでは、貴族の子女は基本的に一度はとお伺いしたことがありますが」

「私の力満ちる場となれば、数は少ないわよ。基本は教会だもの」


水と癒しの言葉に、オユキは成程そう言うものかと納得して。


「であれば、この後直接御身の巫女様、分霊にお尋ねさせていただくのが良いのでしょうか」

「そうね。衣装に関しては、あの子たちの話を聞くのがいいでしょうね。ただ」


神殿勤めの巫女、王都で勤めを行う人物に合うのは今回が初めてと言う事は無い。互いに、名前を一度交換こそすれど、そもそも顔を合わせる時には互いに巫女としか呼び合わないものでもある。というよりも、巫女だけがと言う訳では無く、神職を相手にして居る時には基本的にオユキは巫女とだけ呼ばれる。

その場に複数居る時には、それこそ作法を習って居る時には戦と武技の教会からの相手に名前で呼ばれる事こそあれ度、他の場ではそれも無い。


「一先ずの方針としては、それでよいでしょうか」

「ただ、あの子たちの手も借りるのだとしたら、どうしようかしら。年中行事となるのなら、一年だけになるけれど定期的に此処への勤めを申し付けてみようかしら」

「あの、そうなってしまうと、私が最初の後任を選ぶ流れとなりそうなのですが」

「ええ。だから、そう言っているのよ。何もなしに、それは私だけではなく」

「降臨祭も明日からですので」

「そこで、貴女に、それ以外は難しいでしょう」


白羽の矢を降臨祭で立てて、そう考えるオユキではあるのだが、水と癒しからはにべもない。


「そもそも、顔見知りの相手もいないどころではないのですが」


そして、オユキが己の後任を、来年の巫女役とでも言えばいいのだろうか。そういった人物を選ぼうにも、そもそも知己を得た相手は学び舎を卒業前に辞めている。紹介を受けることくらいはできるのだろうが、どうにも水と癒しの言葉を聞く限り、そのような物でも無さそうではある。

降臨祭から、新年祭まで。長い様で短いその期間を、オユキは着々と増えていく予定に軽くめまいを感じながらも。


「そうね。今貴女が考えている方法は、私の在り方として相応しくないわ。言葉を残すから、一度、そうね、二週ほどでいいかしら」 

「あの、トモエさんとの祝言の用意で、修身を言われているのですが」

「それは熟しなさいとしか言えないわ」


水と癒しからの話に、オユキはそっと己に位を与えている柱に視線を向けるのだが、そもそもこの神国には神殿を持たない柱。それ以上に、明確な力関係がここには存在しているためただただ、苦笑いが返ってくるばかり。


「冬と眠りでは、少し調整も難しいところがあるみたいだし、私も少し力を貸せるようにするためには貴女にも課さなければならないことがあるのよ」

「それですか。正直、今度の物に関しては、どうなる事かと考えていましたが」

「貴女が思うよりも、早く整えなければいけないのよ」

「その問題もありましたか」


オユキの考えていること、此処までオユキの回復に尽力をしてくれている相手との約束を如何に守るのか。また、氷の乙女の里とされている場所に果たしてどのように門を運ぶのか。


「それについては、我が巫女が案ずる事は無い。今度与える門については、雷と輝きは相性の問題で一切手を出せぬが、法と裁き、知識と魔も協力しておる。新しく作る事となる故、印を与える故、それを刻むだけでよい」

「その、運ばないのだとしても」

「氷の乙女に関しては、祖霊がそのあたりは伝えると聞いているわよ」


氷の乙女の里に関しては、それこそ祖霊の決定でと言う事らしい。ならば、こちらの問題は後はオユキ、ファンタズマ子爵家がどこに門を作りたいのか。


「その、印というのは」

「知識と魔からは、このような物になると聞いておるな」


そして、戦と武技に示されたのは、一見して御言葉の小箱、風翼の礎と呼ばれるものと同じ材質に見えるガラスを思わせる蓮の花。


「あの、もう少し、こう」

「仕方あるまいよ。繰り返しになるが、どうしたところで始まりがある故異邦の想念を我らは受ける」

「華の形だけで区別は難しいですが、そうお応えを頂けるということは、睡蓮ですか」

「貴女、そのあたりの事は基本としてトモエに任せているようだけど、ある程度はやっぱり知っているのね」

「有名どころは、教養ともまた違いますが、やはりかつてで多かったモチーフなどは抑えていますから」


だからこそ、意匠を多少なりとも考えることが出来るというものだ。


「ええと、話を戻しますが一先ず御身の巫女様に伺う、それで衣装は解決でよいのでしょうか」

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