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憧れの世界でもう一度  作者: 五味
37章 新年に向けて

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祭りを控えて

降臨祭までの日々は、やはりどこか長閑さを感じさせながらも、実態としては忙しなく過ぎていった。

その中でも、最たる収穫とでも言えばいいのだろうか。

オユキの回復というのが、パロティアを教師役に迎え、セツナとの監督の下にトモエとオユキが揃って己の繋がる先に意識を向けながらも、オユキはオユキでトモエから流れる物、それを如何に選別するのかと厳しくセツナに言われれば、かなり早くなった。

これまで休養に費やした期間を考えれば、はっきりと短い期間でしかなかったというのに、これまではいったい何だったのかという程に、実に早くオユキが体調を取り戻していったものだ。

そして、そのような事を行っていれば、オユキにしても、はっきりとトモエから流れる物を感じるのだから、尚の事とでも言えばいいのだろう。これまで、どこか薄く感じていたもの。トモエが戻ってくる、近くに来れば互いに分かる理由。それが種族由来だと言われ、確かな自覚を得てみればオユキにしても嬉しい事であるには違いない。


「オユキ様」

「いえ、言わんとすることは分かるのですが」


食事が娯楽となる種族、どうにも氷の乙女というのは基本としてそちらであるらしい。

オユキの食事に関する相談を再三トモエがセツナに行っているからか、はたまたクレドが食事を好むからか。基本的にはセツナにしてもきちんと食事を摂って見せてはいるものの、トモエの目から見ても、明らかに釣り合っていないのだ。というよりも、生前の事を考えれば、明らかに必要な栄養が足りているようにはとても見えない程度の食事しかとりはしない。

これまで、再三アルノーと共に、オユキの食事量が少なすぎるからと改善を考えてきたというのに、セツナがとる食事の量というのはせいぜいオユキの倍より少し多い程度でしかない。それで、こちらの基準でどころか、かつての基準で考えても食事量が少ないのだから、オユキがあまりにも不足しているという事実が変わることでは無いのだが。


「オユキ様も、武を好まれる以上は、仕方のない事かと」

「だからと言って、デビュタントでオユキ様は殊更目立つ立場となりますのに」

「その、トモエさんであれば、いえ無理な事は分かるのですが、短い時間であれば以前ユリア様にも預けたことはあるのですが」


そして、新しい発見であったり、これまでに関する反省であったり。

そうした多くの事を学ぶ日々の中でも、今オユキにとっての難問となっているのがレジス侯爵に頼む予定のオユキのデビュタントのための練習というのが存在している。

降臨祭を前日に控えている今となっては、忙しいのは領地を抱える貴族達だけ。

己の領地を、一応はユニルという土地を持っているのだが、そちらも基本はラスト子爵家に任せつつ、前ユニエス、アルゼオ両公爵が辣腕を揮っている状況では、オユキのエスコートを行う方がより大事でもあり、新年に婚姻する予定のイマノルとクララの世話をして来いとこうして王都に送り出されているらしい。

どうにも現地では、オユキは会ったことが無いレジス侯爵家の嫡子が次代として考えられているそちらを徹底的に鍛えるためにも現当主はという裏事情もあるらしいのだが。


「オユキ様」

「その、レジス侯に求めるのも酷とはわかるのですが」

「ファンタズマ子爵は、トモエ卿との練習は」

「その、トモエが、ですね」

「そういえば。トモエ卿も異邦人でしたな」


オユキのほうは、エスコートされる側としての振る舞いをエステールに加えて、当日頼む相手でもあるレジス侯爵とこうして習いながら。

トモエはトモエで、シェリアを相手にしながら、こちらはまた別の教師役としてマリーア公爵の寄子の一人に習っている。その人物は、これまでに数度、珍しく数度もトモエに手習いに来た相手でもあるため、トモエからの評価もそこまで悪くない人物に習っている最中。

トモエを相手としていないのは、オユキがあまりにも自然にトモエであれば己の身を預けると言う事がレジス侯爵を相手に本番の段取りを確認した時に露呈したからでもある。

そして、その流れの中でトモエとしてみたときに、やはりトモエにしても同様に。

今となってはトモエが男性側であるため、利き手を預けるような事は無いのだが、そもそもトモエにしても利き手とは逆に刀を持つのだ。本来であれば、武器をとる手。其処を他人に触らせるというのは、トモエにしてもやはり抵抗があるというものだ。


「この国の女性、いえ、この国だけとも限りはしないのでしょうが」

「その事ですか。デビュタント以降は明確に役割を得ていくのですが、それまでの間はなかなか」


そもそも、女性の当主とて多かろう、そうオユキがままならない練習に、慣れぬ相手に身を預けるという明確な嫌悪感から僅かでも気を逸らそうと、言葉を作ってみれば、慣れた問答ではあるのだろう。レジス侯爵からの否定というのは、実に早いものになる。


「それと、ファンタズマ子爵には申し訳なく思うのですが」


そして、それにしても問題があるのだと付け加えられて見れば、少し考えればオユキも思い至る。


「結局のところ、家督というのは」

「内々には、ファンタズマ子爵家に。ユニルの町では、私どもの後見をして頂いております前公爵様方はご存じですし、関わっている者たちにしても」


レジス侯爵は、ごく少数ですがと苦笑い。


「一応、そのあたり隠しきれないだろうと考えて、私も公にという流れであったはずではあるのですが」

「そればかりは、まさしく相身互いと言う所でしょうな」


今一つ、理屈がよく分からぬとオユキは首をかしげて。

慣れぬ靴を履いていることに加えて、ここ暫くは目覚ましい回復とは言え、実に長期間にわたって功績を身に付けなければ己の足で歩くこともできなかったオユキは、レジス侯の案内に従うままに用意された席に腰を下ろす。これまでであればすぐに立ち上がって案内を受けて歩くという所作を繰り返していたのだが、今度は其処から立ち上がる構えを見せずに。

そも、そのような靴を履かされているからこそ、レジス侯爵に、トモエ以外にもたれるように体が無様に揺れるのだと言わんばかりに、己の足元に視線をオユキは向けて。


「私にしても、隣国への使節として派遣をされておりましたからな。初回の大会への不参加は、恐らくマリーア公爵による物でしょうが」

「ああ、そちらへの準備という形になったと言う事ですか。いえ、それにしては時期が」

「武門としての参加者が尽く、トモエ卿とファンタズマ子爵の前に敗れ去ったこともあり、参加していなかった者たちへの評価というのも少々」


敵を見る目があったから、実力を正しく評価できた。いや、実のところ、あの家の次男が始まりの町で知己を得て、成程それでラスト子爵家の。

そうしたうわさ話に、気が付けばすっかりと王都では流れが傾いていたらしい。

成程、言われてみれば、確かに公爵の得意とするところではあったのだろうと納得もする。併せて、公に等と言いながらも、きちんとオユキにしても姿を知っている物がここ最近までは最低限に抑えられているのだ。王城で次期王太子と目されている生まれたばかりの子供に、さらには貴族たち向けの洗礼までも王都で行っているというのに、確かに送られてくる手紙に反して、実に静かな物ではあったのだ。


「オユキ様、靴にはもう」

「いえ、確かにきちんとあっているので擦れたりと言う事はありませんが、慣れた動きをしようと思うと、どうにも」


そして、エステールのほうはといえば、オユキの靴を脱がせながらも、足首あたり、どうしたところで軽く熱を持ち始めている箇所に簡単に軟膏を塗りながら。


「どうなさいますか。デビュタントであれば、教会からの衣装でも問題ないかとは思いますが」


そして、学び舎で行われる、何やら王都の学び舎にはそうした場があるらしく、新年祭に合わせて卒業をするもの、要は王都で暮らす若者たちの全てが参加する催しを開ける広さを持った場があるらしい。

学び舎に通っていないオユキでは、下見などが出来るはずもなく。さらには、明確な犯行声明とでも呼べるもの、その場で神を降ろすのだと、そうした話をしていることもあり、実際には平素の場とは事なある場が今も学院では入念な準備がなされている。オユキは、全く知らないのだが。


「婚姻に関しても、何やら同郷と思しき異邦人たちの手による物でもあり、アイリスさんの事もあり、私たちの物は私たちのとなってしまいましたから」


そう、それもあって、こうしてオユキは慣れぬ振る舞いを学んでいることもある。

トモエをこうした政治的な配慮に付き合わせてしまう事に関しては申し訳なさを勿論覚えるのだが、トモエからの理解というのも既に得られている。なんとなれば、少年たちに頼んで始まりの町で話を回してもらっている、言ってしまえば結婚の二次会、そちらではなく水と癒しの神殿で行われる婚姻の衣装に関してはオユキの指示が細かくはあるのだが用意にはあまりにも不足がある指示でもあるため、そちらにまでトモエまでも駆り出されている。


「巫女様は他の場面と言う事は、お考えではないのですかな」

「職分でとなると、どうしたところで私もアイリスさんも神授の装束がありますから」

「それも、そうでしたな」


パートナーは既に疲労が根深く、この後は実際の会場での振る舞い。要は、レジス侯爵にエスコートをされて、こうして定められた席に着いた後。挨拶を受け、それにいかに応えていくのか。そもそも、参加者の中で覚えておかなければならない手合いは誰なのか。公の事でもあるため、それぞれが正しく家を示すものを身に着けるには違いないのだが、それらがどのような形で身に着けられているのか。

この後は、オユキはそうした話をエステールとレジス侯爵からされていくことになる。


「トモエさんは、今頃シェリアを相手に、ですか」

「オユキ様と似た相手となると、連れている子供たちにとそうした話もあったのですが」


生憎、こちらの世界では明確に背丈の低い部類どころではなく、明確に体格の劣るオユキをエスコートするために他の練習相手を探すとなれば、それこそ成人する前の、デビュタントもしていない相手を選ばなければならない。そして、そんな都合の良い相手というのは、現状存在していないためオユキの代役を方々で頼んでいる相手が、そのまま引き受ける事となっている。


「話に聞くレイン家の子女であれば、問題は無いでしょうが」

「ただ、そちらに慣れてしまうと、オユキ様には覚えてもらわねばならないことが増えるのですが」

「覚えることが、増える、ですか」

「いえ、オユキ様が子爵家の当主ですから、そちらもお伝えせねばなりませんか」

「ああ、成程」


言ってしまえば、オユキがトモエに、もしくは他の誰かのエスコートを受ける場面というのは己よりも高位の相手に今後は限られると言う事らしい。オユキの理解では、少なくともそのように。


「そちらは、私としてもやる気がでそうなものですね」

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ツギクルバナー アルファポリス
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