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憧れの世界でもう一度  作者: 五味
37章 新年に向けて

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休息の形

結論としてはオユキだけでは無く、実のところトモエにしても学ばねばならないのだと、そうした話になった。

オユキだけでは、神国で十二分に回復するにはやはり時間がかかる。何より、オユキ自身がそこまで時間を費やすことを望んでいるわけでもなく、その周囲の者たちにしても同様に。

では、そのような状況で如何にして回復をかなえるのかといえば、やはりトモエとの間に共有できる物を作るのが早いとなった。ただし、そのためには、やはりトモエのほうでも色々と学ばなければならないことがあるのだという条件付きで。

いくらトモエ自身に自覚が無かろうとも、そのような能力、炎の類を一切今のところ扱うことが出来ていなかろうとも、種族の長たるセツナが苦手とするものが幼子であるオユキにとって良いはずが無い。事実として、アイリスから言及され、クレドからも同様に。カナリアは置いておき、パロティアからは種類こそ、はっきりと格はかなり劣るのだが炎には違いないと言われたこともある。ならば、トモエとしても、オユキに共有するための物を流すためにはやはり学ばねばならぬと言う事になる。

そして、結果として、とでも言えばいいのだろうか。


「トモエさん、今日はいい日和ですね」

「ええ。そうですね」


少し前に、トモエとオユキの間で諍いの種となったこと。

どちらかといえば、あれこれと見て回りたい、家の中にいるばかりではなく周囲を見て回ることを好むトモエ。対して、屋内での活動を好むオユキ。そんな二人の間で起きていたささやかな諍いは、全く別の要因で解決を見る事となった。


「オユキさん、流石に、私の好みといいますか」

「ええ、お許しがいただければ、少しは王都を私も見て回りたいですし。ですが、トモエさんにしても狩猟の後に少しはというお話でしたが」

「一人だけ、というのばかりを望んでいるわけではありませんから」


主家の夫人からも、トモエには少々強めに言われることとなった。

オユキの回復に、そも、家督を持つ者が回復するためにその伴侶が必要だというのならば、一も二もないのだと。特に、ファンタズマ子爵家等と言うものの前提を考えれば、オユキが出来る事を増やす、オユキが活動できることが、神々との意思疎通、より広く民衆へというのが求められているのもただ事実。

寧ろ、それがあるからこそ、此処まで早く、異例ともいえる家が生まれたと言う事もある。


「ふむ。オユキと比べれば、トモエのほうがマナの扱いに関しては少しはまともそうですね」

「幼子は、とかく不器用じゃからのう」

「器用、不器用ではなく、周囲のマナの質もあるのでしょうね。さて、そこの勉強不足の裔、貴女もこうして私が代わりにこの二人に教えるのをきちんと見ているように」


今となっては、オユキの願いが半分は叶った形とでも言えばいいのであろうか。

これまで、トモエのほうは割と自由にしていたのだが、それこそオユキが望んでいるのだからと、自儘に振る舞っていたのだが、今となってはトモエのほうもきちんと日々の時間が決められている。

午前、少しの間は狩猟へと向かい、これまでは簡単に昼食も終えてから戻ってとなっていたのだが。今はこうして昼食の前には戻って来て軽く食事が終われば、オユキとの時間を過ごすはずが、揃って四阿の側に新しく誂えられた場に腰を下ろしている。

石畳が敷かれた上に、簡単に木の板を並べ、その上に教壇と呼んでも良い物が一つと、向かい合うように三つの席が。教壇側に立つのは、勿論オユキとトモエに教える側でもあるセツナとパロティア。そして、残った一つの席にカナリアが座らされている。

これまでに、散々に教師役を頼んでいた相手であった人物であり、魔国で魔術師の号を得た人物でもあるため何やら所在無さげな表情をしているものの、今となっては学ぶ側の人員として。

クレドに関しては、こちらは何やら四阿で、少し離れたところから何やらセツナを眺め。そして、何やら何処からともなく現れたフスカにしても、席を同じくして何やら眺めている始末。どちらも客人扱いではあるため、そちらの饗応役にとエステールを筆頭にファンタズマ子爵家の侍女衆にしても仕事中となっている。


「幼子の伴侶も、少し己を抑える事を学ぶのも良かろう」


確かに、トモエとしてもオユキと共にある時間は嬉しい。それに間違いはない。

だが、それは成果が出るかも定かでない事を座して学ぶ、そのような時間を過ごすことを意味していない。同じ座るというのであれば、それこそトモエにしても己の流派に関して、こちらで改めてと考えている、新しい己自身の流派に関することに使いたいというのが事実。

オユキ程の才は無い。孫娘に比べれば尚の事。その様な身であるというのに、トモエに対しても実に容赦のない制限時間がある。そんな僅かな期間で、どうにかオユキの目から、最も厳しい相手の目から見ても、最低限と思えるものを用意しなければならないのだから、トモエとしても、というものだ。


「俺達にしても、年若いころなど」

「良人殿も、確かにその様ではあったか」

「俺が若かったころ、まぁ、あまり俺にしても思い出したいものではないが」

「せがまれて話すことも、今はあまりなくなったものじゃしな」


こちらに来てから、それこそ周りにこうして人がいる様になってからというもの、夫婦の時間以外では初めてではあるだろう。

此処まで、露骨にトモエが不満を見せるというのは。


「オユキさん」

「その、申し訳なくは思っているのですが」

「公爵夫人から贈られている服も多くありますし、一応袖くらいは通しませんと」

「いえ、その理解は説明された以上はありますし、私としてもカミトキの事もありますから少しくらいはとも思うのですが」

「何か、問題が」

「どうにも、理解の難しいと言いますか」


二日前にオユキがベッドの上の住人となり、多くの者達で囲んで話し合いを持った。

その程度の日しかたっていないというのに、全くいつの間にやら此処まできちんと学ぶための場が屋外に用意されて。屋内でないのは、オユキに教える相手と、トモエに教える相手がそれぞれに相反するから。

それが性格による物だけ、教える内容によるだけでは無く、互いに力を使えば一方だけが弱るというあまりに大きすぎる力の差があるからこそ、屋内でと言う事は無理だと判断された。

果たして、屋外で行うだけでそれらが避けられるのかといえば、それさえも分からぬのかと揃ってため息をつかれもしたものだ。

要は、変質した物が、場にとどまるからこそ、場に残る物があるからこそオユキの為にと場を整えることが出来るのだと言われてしまえば、然も在りなんと言うものだ。

さらには、今はこの場にいない、オユキだけの口約束だけでは足りぬとばかりに、こうしてトモエも併せて拘束をしておくことに上手く成功したアイリスはといえば、これでよいとばかりに何やら納得を見せてセラフィーナとヴァレリーを連れて今日も己の執り行う祭りの準備の為にと出かけていったという物だ。


「オユキ様は、デビュタントを控えておられる身ですから」

「それは、私も理解が有りますが、他の子女の方にしても」

「学院に通う、もしくは内内での、家同士の付き合いといった形があれば緩和は出来るのですが」

「そういう理屈ですか」


ラズリアから説明を加えられて、オユキはそれを行われたところで全く理解が出来ぬと首をかしげて見せるのだが、トモエとしては最低限の理屈は確かにと納得がいくものではある。

要は、降臨祭の先に控えている新年祭。

そちらでいよいよ社交界デビュー、あくまで建前上ではあるのだが、控えているオユキというのは今はまだまだ深窓のと枕をつけなければいけない存在ではある。これが公爵の領都であれば、寄り親のお膝元であればまだいくらか言いようもあるという物ではあるだろう。当世のしようもあるのだろう。

だが、この王都では、降臨祭、新年祭に向けて人が、各地から貴族たちが集まり始めている王都ではそれもなかなか難しい。オユキと知己を得たいと考える貴族など、それこそ大量にいるのだ。ここ暫くは、マリーア公爵から言われるトモエに習いたいという者たちについても、かなり抑えられている。

トモエは気が付いていないだけで、トモエを経由してどうにかオユキにと考える不心得者達が増えていると、トモエに同行するラズリアであったりシェリアであったりから王家へ、公爵へと報告が行われたからというのもある。


「どういう理屈なのでしょう」

「そのあたりは、是非ともエステールに習って頂きたくはあるのですが」

「エステールからは、今度の降臨祭をはじめ、デビュタントの本番、新年祭での催し、初めての参加となる公の夜会での振る舞いと、習う事が多すぎると言いますか」


エステールには、それだけでは無くトモエの夜会用の衣装にオユキが行う刺繍。トモエ用の鞘に結わえるための太刀緒であったりと、さらにオユキに関わる事柄が実に多い。勿論、その補佐を異邦人二人もある程度は行っているのだが、そちらはそちらでユーフォリアとは異なりこちらの貴族たちの在り方というのを学んでいるわけでもない。そのため、行える事というのはせいぜいが簡単な助言程度の範囲。

実務という意味では、不足も甚だしいというもの。


「そういえば、トモエさんにも伝えるべきことがと聞きましたが」

「私のほうでも、そうですね。マリーア公とレジス侯からエスコートの作法を習ってはいるのですが」


そして、トモエとオユキがこうしてのんびりと話しているのだが、その間にもそれぞれに言われたことを行っている。

カナリアからは、集中を等と言われたものだが、そもそもトモエもオユキもその様な事をする必要すらないという話。オユキにしても、セツナから言われている切り分けるという作業を行う以前の問題なのだと、一昨日の話し合いで判明したこともあり。こうして外に出てあまりにも頭抜けた相手の監督下で、己の根源、確かにつながるどこかへと意識を向けながらも日々の事を行えと言われてこうしている最中。

では、それが屋内で行えないのかと言われれば、周囲の環境を軽く変えていくことでよりつながりの意識もしやすくなるのだと言われて、こうして屋外での事となっている。


「幼子の伴侶よ、その繋がりはその方と幼子の間にある物じゃ」


そして、トモエのほうでははっきりと意識が出来てしまったせいとでも言えばいいのだろうか。

どうしたところで、そのような目に見えぬ何処かとのつながりと言われて、真っ先に思い当たる物に意識を向けてみれば、こうしてセツナからの注意を受けてとなるというものだ。


「ふむ。私がいれば、姿を隠すのは難しくありませんから、必要があればそれを行っても構いませんよ。勿論、力を振るうからには、相応の対価を求めはしますが」

「先に、対価についてお伺いしたいものですね、そちらに関しては」

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ツギクルバナー アルファポリス
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