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女貴族に買われた少年が厳しく可愛がられて、養われます。  作者: beru


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第六十七話 令嬢に甘え放題の使用人

「ポール! 何ですか、その磨き方は! フォークもナイフもザラザラじゃない!」

「す、すみません……」

 いつも通り、使用人たちが台所に集まって、銀食器の手入れをしていると、ポールの銀食器の磨き方がなってないと、アンジュに叱られる。

 最近、仕事にあまり身が入らないポールはミスが多く、上司に叱責される事が多くなっていた。


「どうしたの? また、ポールが何かしたの?」

「セシリア様。すみません、私の指導がいたらないばかりに……」

「でも、前はちゃんと出来たじゃない。最近はどうしたの?」

「いえ……よくわかりません」

 騒ぎを聞きつけて、台所にやってきたセシリアがしょげていたポールに訊くと、ポールも首を横に振ってそう答える。


 自分でも仕事の不調の原因を上手く説明できなかったが、セシリアは彼が疲れているのを見て、

「疲れているみたいだから、明日は仕事を休んだら?」

「え? 大丈夫です、ちゃんとやりますので」

「大丈夫に見えないから、言っているのよ。明日、特に予定もないから、ポールを休ませても大丈夫よね?」

「は、はい。セシリア様が言うのであれば……」

 セシリアにポールの休養を提案され、アンジュも渋々、了承する。

 いきなり休養を言い渡され、セシリアに不快な気分をさせてしまったとおびえていたが、セシリアは、表情を変えずに、

「じゃあ、そういうことだから。明日はゆっくり休んで、頭を冷やしなさい」

「はい」

 と、簡潔に告げて、セシリアは台所を去り、自室へ戻って、業務を再開する。

 ポールは少し落ち込みながら、


 トントン。

「どうぞ」

「失礼します」

 真夜中になり、ポールはまたセシリアの部屋に向かい、彼女の返事を待たずに彼女の部屋に入る。

「どうしたの? 昼間の事、怒ってるのかしら?」

「いえ……ちゃんとお仕事出来なくて、ごめんなさい」

「いいのよ。誰にだって失敗はあるわ。別にあなたを特別扱いしている訳じゃなくて、他の使用人に対しても疲れているようなら、しばらく休暇を与えたりしてるわ」

 セシリアを怒らせて、休暇を与えられたのかとおびえていたポールであったが、セシリアは彼を安心させるように優しい笑みで彼を招く。


「そうですか。えへへ、セシリア様ー」

「あん、もう甘えん坊ね……それで、私と何処に行きたいか、もう決まったの?」

「ううん。セシリア様の喜びそうなところ、なかなかわからないです」

「あなたね……もうかなり私の使用人をしているでしょう。主の好みくらい把握してないの?」

「セシリア様のこと、全部好きだから、よくわからないんです」

「もう」

 と、言い訳にもならない言い訳を言って、ポールはセシリアの腕に絡みついてしがみつく。

 もう日常的になった彼の行動だが、セシリアもどんどん幼児のように甘えてくるポールに頭を痛めるばかりであった。


「あなたは最近、甘えすぎなのよ。こんなに主人に対して粗相をする使用人なんて、この世界にあなただけなんだから」

「いいもん。セシリア様がこうして良いって言うんだから」

「まあ。調子に乗って」

 セシリアの小言など、彼にとっては心地よいものですらあり、彼女への依存が収まる気配は全くなかったのであった。


「セシリア様が行きたい所なら、何処でも付き合いますよ」

「だから、あなたが行きたい場所を指定しなさいって言ってるの。私の指示通りに動くだけじゃ、立派な大人になれないわよ」

「ぼく、セシリア様の使用人だから、セシリア様の言う事に従うだけじゃダメなの?」

「最近はロクに言う事も聞いてないじゃない。もう、話は終わり? 疲れたから、今日はもう寝たいわ。せっかく、明日は休みを与えてあげたのに、ポールは何も予定はないの?」

「休みなんかいらないもん」

 早く部屋を出ろと促していたセシリアであったが、ポールはなおもきつくセシリアにしがみついて、駄々を捏ねる。

 彼女の肌の温もりと優しさにすっかりポールは溺れてしまい、離れられなくなっていったのであった。


「少しは私をリードする事を覚えなさい」

「セシリア様がいれば良いんだもん。今夜は一緒に寝よう」

「寝ようって……ああ、こら命令よ、離れて」

 寝間着のドレスを着ていたセシリアの袖をなおも引っ張り、意地でもしがみつくポールであったが、セシリアも流石に困り果ててしまい、強い口調で、彼を引き離す。

 しかし、ポールは


「セシリア様と一緒に寝るもん。僕、ずっと一緒だよ」

「もうわかったわ。その代わり、明日までにちゃんと行きたい所決めなさい」

「決められなくても一緒に寝るもん」

「はあ? 我侭すぎるわよ、ポール」

「ワガママでも良いもん。セシリア様と一緒に寝る。これから、毎日寝てもいい? セシリア様と一緒に寝る温かくてよく眠れるの」

 と、ベッドの中にまでしがみついてきて、ベッドで横になろうとしていたセシリアの手を繋ぎ、彼女の大きな胸の谷間に顔を埋める。


「毎日寝るって……甘やかせすぎたから、こうなったのかしらね……」

「えへへ、いっぱい甘えるんだもん。セシリア様、僕と一緒に寝てくれるよね?」

「んもう、駄目な子ね。使用人失格も良い所だわ。今夜は駄目よ。部屋に戻りなさい」

「嫌だもん。寝る」

「命令が聞けないの? ポール、私の言う事何でも聞くって言ったわよね」

「聞くけど、一緒に寝るんだもん。何でも言う事聞くけど、セシリア様と毎日一緒に寝たい」


「ああ、もうわかったわ。好きになさい。その代わり、明日、ちゃんと私と行きたい場所を決めなさい。良いわね?」

「決められなくても寝るもん。そんな事で、セシリア様と寝られなくなるの嫌だもん。ずっとこうするんだもん」

 今夜だけと、言い聞かせようとしたセシリアであったが、ポールはなおもセシリアにしがみついて、食い下がる。

 それに折れてしまい、セシリアも溜息を付きながら、

「わかったわ、好きになさい。しょうがないわね……」

「うん、ありがとう。セシリア様、大好き」

「ふう……我侭な息子を持つ母親ってこんな気分なのかしら」

 一緒にベッドの掛布団にくるまり、ポールも嬉しそうにセシリアの胸に顔をうずめる。

 彼女のふくよかな柔らかい胸と香水の優しい香り、温かい肌。

 全てがポールにとっては愛おしく感じ、セシリアの虜になりすぎていたのであった。


「ポール、一緒に寝るのは良いけど、いい加減、私がどうすれば喜ぶか考えなさい」

「うーん、よくわからない。僕と一緒じゃ嫌なの?」

「嫌じゃないけど、私が好きな物を把握しなさいってこと。使用人なら当然よね?」

「セシリア様が好きな物……教えて」

「はいはい。オペラとか音楽を鑑賞するのは好きかしら」

「ふーん……」

 自分の趣味くらいは教えてあげようとポールに教えると、ポールは何だか興味なさそうな顔をして頷く。


「あなたは興味ないわよね」

「セシリア様が一番好きだもん。それ以外興味ない」

「だからあ……ああ、もう寝なさい」

「はーい」

 一向に自身をリードしようという気にもならず、ますます甘えてきて、幼児化が進んでいる使用人に頭を痛めてしまい、どうすれば彼が大人になるのか、セシリアはずっと彼を抱きながら考えていたのであった。


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