いざっ! 西の魔女の城
「うわぁ~。何か雰囲気ある~。いかにもラスボスのアジトって感じ」
詩衣が目の前にした西の魔女の城の様子に圧倒されながら言った。
西の魔女の城は大部分が黒い蔦に覆われたおどろおどろしい姿をしていた。
昔は美しかったのだろう。
端々の細かい細工にかつての名残を残していたが、それも本当にわずかだ。
「いつまでここでじっとしていてもしょうがない。早く中に入るぞ」
「わ、わかってるわよ! たのも~!」
詩衣はそう白銀に促され、緊張しながらも半ばやけっぱちに城の扉を開けた。
「ここは通さない!」
城に足を踏み入れた詩衣達を出迎えたのは、ずらりと並ぶ大勢のウィンキー達。
みんな虚ろな生気のない瞳をしている。
どうやらこの人達もエメラルドの都の住人と同じく、西の魔女に魔法で操られているみたいだ。
「これまた盛大なお出迎えですねぇ」
「よくもまぁこれだけうじゃうじゃと湧いたものだな」
「で、でも、この人達にどいてもらわなきゃさ、先へは進めないんだよね?」
「どうにかして突破するしかないわ! 何とかと悪者は高いところにいるって相場が決まっているもの! たぶんこの部屋の一番奥にある階段を上って最上階に西の魔女はいるはずよ! 行くわよ!」
詩衣達は最上階までつながる階段を目指してウィンキー達の一団の中へと突撃して行った。
「ガォオーー! ぼ、僕は怖いライオンだぞ! み、みんな食べちゃうぞ!」
「俺の斧はお前らぐらい簡単に真っ二つにするぞ。餌食になりたくなければそこをどけ!」
「眠り粉~。そして、これはさっき捕まえておいたハチさんです。刺されたくなかったらそこを開けていただけますか?」
「麦えげつなっ! とりゃ! 悪く思わないでね! 私達はどうしても前へ進まないといけないの!」
太陽と白銀が牙と斧でそれぞれ脅し、それでも退かなかった者を麦があの花の花粉(と、いつの間にか捕獲して懐に隠していたあの西の魔女の手下のハチ。笑顔でちらつかせるのが本気か冗談かわからず怖い)、詩衣が蹴りの実力行使で眠らせていった。
「はぁ! はぁ! つかれた~! やっと最上階に着いたわ!」
次々と現れるウィンキー達を押し退けて詩衣達は何とか階段を上り、最上階へと辿り着くことができた。
最上階にはさっきまであれだけいたウィンキー達は一人もおらず、一つの大きな扉だけが鎮座している。
「正直何とかと悪者は……何て適当なことを言ってみたけれど、本当に最上階で間違いなかったみたいね。きっとここが西の魔女がいる部屋だわ。だって、一つだけ威圧感がものすごいもの……」
その何の装飾もない真っ黒な扉は、そこにあるだけで人を緊張させるような言葉では言い表せない異様な空気を漂わせていた。
詩衣が言う通り、ここが西の魔女のいる部屋で間違いないだろう。
「みんな。ここまで私についてきてくれて本当にありがとう。泣いても笑ってもここが最終決戦よ! 気合いをいれていきましょう!」
詩衣は仲間達を振り返ると、力強くそう言った。
「任せて下さい!」
「当たり前だ!」
「が、頑張るよ!」
「それじゃあ、開けるわよ……」
――そう緊張した面持ちで扉に手をかける詩衣は気づけなかった。
太陽の後にいつも続くトトの「わん! わん!」と元気に吠える声が聞こえなかったことに……。




