第99話 リスリーとの日々
あの日、リスリーと恋人関係になってから。
俺たちは表面的にはあまり変わらない態度を貫いた。
それは俺自身の脳裏にソウジのことがあるから、目的を遂げるまでは真剣に2人で幸せを目指せないって思いがあったことと。
クラスの連中の視線が気になったのがある。
無論、トオルと岩戸さん以外の、だけど。
あの日のあの後、手を繋いで屋敷に帰ったら
岩戸さんに
「……なんと」
なんて言われて。
明らかに驚かれてしまった。
そのとき岩戸さんはこう言った。
「リスリーさんを慰めようと思って、色々考えていたけど無駄になっちゃった」
……岩戸さんはリスリーの気持ちに気づいてて。
彼女の決断についても知っていた。
で
今更そんな行動を起こしても上手く行くわけがない。
そう思っていたから
玉砕して泣きながら帰って来た彼女をどう慰めるか?
それを真剣に考えていたそうだ。
そう話し終えてから
「上手く行って良かったよ」
隠そうともせずに大きく息を吐いた岩戸さん。
で、俺は
「……知ってたなら教えてくれても良かったと思うんだけど」
岩戸さんに、ちょっと恨めし気な声でそう言ってしまった。
知ってさえいれば、俺だって行動を考えてさ……
そうしていれば、あの日本料理屋を実質出禁にならずに済んだのに。
あそこ、美味かったんだよ?
でも、岩戸さんはそんな俺の言葉を
「そんなの、言えるわけないよ。無理言わないで」
ぴしゃりと、そう切って捨ててきた。
そして言わなかった理由を述べる。
それは……
99%リスリーが俺のことを好きだと思っていても。
残り1%の確率でそうじゃないかもしれないし。
かと言って。
こんなことを確認をするわけにもいかないから。
結果、放置するしかなかったと。
無責任なことは言えないから。
……そりゃそうか。
俺はぐうの音も出ないので、そこで黙るしかなかった。
岩戸さんはそんな俺に
「ちなみにトオル君も気づいてたよ? 気づいてなかったのは村田君だけー」
何か色々思うところがあったのか。
そんなことを最後に言った。
明らかに、俺を非難する口調で。
……だいぶ俺にムカついてたんだろうなぁ。
彼女、リスリーの友達なわけだし。
浮気ヤローとか、気分的に思っていたのかも。
「今日も完璧に単語を覚えてくださいましたねマサヤさん」
そして今日も。
俺の部屋で、リスリーはノーザリア語の勉強を見てくれている。
リスリーは俺のノーザリア語の上達を褒めてくれてるけど。
それは多分、リスリーのお陰だと思うんだ。
何かどっかで聞いたけど。
外国人の恋人を作ると、外国語の上達が早まるって。
相手のことを理解して、早く意志疎通したいから熱意が高まるってさ。
多分、それに近いことが起きたんだろうな。
リスリーの言葉を理解して、彼女の話すことを全て理解したい。
その想いが働いたんだと思う。
彼女がそうだったように、俺だって彼女のことは好きだったわけだしさ。
「まあ、熱意が違うわけだし。そりゃ当然だよリスリー」
なので、彼女の褒めに対して俺はそう返した。
熱意。
それがどこからくる熱意なのかは彼女も察したみたいで。
「マサヤさん……」
そう言って、照れくさそうにする。
その仕草が、本当に可愛いと思った。
(ずっと一緒にいたい)
だからそんな言葉が頭に浮かんでしまう。
そして勉強が終わった後。
「おやすみ」
「おやすみなさい」
そう、彼女を部屋から送り出すとき。
ドアのところで挨拶した後。
そっとキスを交して、別れる。
これ以外、恋人らしいことはしてない気がするけど……
俺は今はこれでいいと思った。
そしてそんな日々が1週間くらい続いた後。
王城から、とうとう命令が来たんだ。
無論、出撃命令だ……!




