第91話 わけがわからないよ
女の子は男の部屋に1人では入らない?
そりゃそうだろう。
そりゃ簡単には入らないよな。
襲われるかもしれないわけだし。
……女が男の部屋に1人で来るのは、スケベさせてくれるという意志表示だ。
そういう風に考えている男は普通に居るし。
女の子の方もそれぐらい認識してるはず。
それが正しい判断なのかは別にして。
そういう可能性を伴う行為なのは間違いないだろ。
だって男に迫られたときに誰も止めてくれないんだぜ?
だから事実上そのはずだ。
だからそれぐらい俺だって分かってるよ。
岩戸さんにそんなことを言われて。
その後その話は終わったけど。
岩戸さんとトオルが去った後、何だかすっげえモヤモヤした。
やっぱり何であんな言い方をされたのか分からないんだが……?
納得できない。
でも。
だからと言って岩戸さんにさ
「もっとキチンと説明してくれよ! 何で俺が責められるんだ!?」
……と言うのはできなかった。
それは流石にトオルが怒るだろうし。
そういうことは避けたい。
……たった1人になった親友を無くしたくないし。
あと、この屋敷を追い出されるのも嫌だ。
で、イライラを抑えるために俺は
「ドレイガー、敬意……」
ノーザリア語の単語を暗唱しながら、スクワットを開始した。
こういうときは、何かに没頭するに限る……
暗唱を続けつつ、太腿に負荷を掛ける運動を続ける……
そしてだいぶ鍛え込んだ後。
夕食の時間になったとリスリーが俺を呼びに来たので。
俺は汗を拭いてから食堂に向かった。
……今日の夕食は餃子で。
餃子は結構一般家庭に入り込んでる「日本料理」らしい。
餃子自体がこの世界にあるのは、キャサリーンさんの店で見て知ってたけど。
家庭料理として入り込んでるとは思わなかった。
……無論、焼き餃子で。
本場は水餃子が主流のはずなんだけどね。
こっちの世界の餃子は日本経由だから……
餃子の肉は良く分からないものを使っていた。
マズくは無かったけどね。
豚肉に近い味だったけど、確実に豚じゃない……ハズ。
そして夜。
いつもの時間帯に
ドアがノックされた。
俺がドアを開けると
「マサヤ様」
いつも通り。
寝巻っぽい、薄手の衣服に身を包んだリスリーが俺の部屋にやってきた。
昼間は何だか元気が無かった気がしたが。
俺の部屋にノーザリア語を教えに来てくれた彼女はいつも通りで。
少しだけ安心した。
何があったのか良く分からないけど、なんとかなったのかな?
でも、何か俺に力になれることがあるなら、助けてあげたいと思う。
ずっと俺を助けて来てくれてる大事な人間なんだから。
そう、頭の中で思いつつ
「ありがとう。じゃあ早速お願い」
俺は彼女を招き入れ。
そのまま俺は部屋のローテーブルの定位置に腰を下ろし。
リスリーはその向かいの座布団の上に腰を下ろす。
そしてリスリーはローテーブルの上に持参した紙を広げてくれて……
(あれっ?)
俺はそのとき。
リスリーからすごくいい香りがしていることに気づいた。
まるで薔薇の花か何かのような……
これって……
ひょっとして香水って奴か?
今までそんなこと、1度もしなかったのに。




