第90話 なんだか鬼詰めされる
「えっ、何?」
俺はちょっと焦っていた。
何だか2人に非難されているような気がしたからだ。
何だ……?
「えっ、ゴメン。俺、何かした? トイレの使い方が汚かったとか? 態度が悪いとか?」
かなり焦っていた。
この2人は大事な人間だ。
俺の親友と、その彼女だからだ。
だから怒られるかもしれない可能性を列挙した。
洗濯物が汚すぎる。
食べ方が気に入らない。
足音が不愉快……
思いつくままに列挙する俺に
「いや、別に何もお前に怒って無いから。ただ、確認したいことがあるんだよ」
トオルが素早く手を突き出してストップを掛ける。
俺はそれで言葉を止め
その、確認したいことを待った。
トオルは隣に立つ岩戸さんに視線を向けて
岩戸さん、言ってくれ。
そう言いたげな仕草。
岩戸さんは察したのか頷いて
「あのさ」
そう言ってから
一拍置いて
「……村田くん今日どこに行ってたの?」
そう、続けて来た。
「えっ、どこに行ってたって」
トオルには言ってたよな?
人に会いに行くって。
そう思ったからトオルに目を向けると
トオルは俺を見ていた。
別に後ろめたいとか。
バツが悪いとか。
そういう色は全く見えない。
意図が分からなかった。
なので
「知り合った人に会いに行ってた。ノーザリア語の修行目的で」
正直に言った。
何も隠さず。
すると岩戸さんは
「……それ、女の人だよね?」
少しだけ詰問口調。
何だか、その言葉には少しだけ非難の色があった。
「えっ」
その通りだけど。
何でそこで怒られるの?
俺、別に彼女居ないんだけど?
トオルとは違うんだぞ?
だったら別に勝手だろ?
だから言葉が出なかった。
意味が分からなかったから。
するとトオルが
「岩戸さん、ちょっと言い方が攻撃的だよ」
隣で俺をフォローしてくれる。
岩戸さんはその言葉で
「……ごめんなさい。つい」
自分でも自覚があったのか、そう言って俺に頭を下げた。
謝られても……
意味が分からないのは変わらない。
だから俺は
「えっ、ゴメン。何が言いたいの?」
そう言わざるを得なかった。
なんだかすごく言いにくそう。
俺に何か訊きたそう。
なんだろう……?
奥歯に何かモノが挟まってる。
そういうの、こういうのを言うんじゃないのか?
その実例だろ……!
そんなことを考えていると
トオルが
「別に恋人ってわけじゃないんだよな?」
そう訊ねて来た。
俺はそれに対して
「向こうはそうなりたいみたいなこと言ってるけど、多分俺が珍しいから男女交際したいだけだと思う」
正直に思うところを言った。
続けて
「俺は別にその人を恋人にしようとは今のところ思ってない。大体、俺が決行したらおそらく彼女に迷惑掛かるだろ」
俺の最終目的はレフィカルをブッ倒して、この国に人攫いを止めさせて。
そして国を変えて元の世界に帰る。
これは変わらないわけだから。
そう続けると
「今のところ?」
岩戸さんが食いついて来た。
で、また詰問口調で
「場合によってはその選択肢もあるってこと?」
「無いよ! それは言葉の綾ってやつだろ」
何でそんなことを言われるのか分からない。
何か睨まれているような気もするし。
俺は困り果てた。
これが相手が親友とその彼女でなければ、強引にでも会話を打ち切って部屋に戻ってるところだ!
段々イライラしてきた。
それが向こうにも伝わったのか。
岩戸さんはトオルに視線を投げる。
で、しばらく見つめ合い。
(……ひょっとして、トオルのスキルで脳内会話してるのか?)
そう思ったとき。
岩戸さんが俺に視線を戻して。
言ったよ。
「あのね、村田君」
その目は別に怒ってはいなかった。
ただ、諭すような光があった気がした。
で、こう続けて来た。
「……普通、女の子は男の子の部屋に1人では入らないよね。それは知ってるよね?」




