第87話 デート当日
キャサリーンさんの指定した日付は週末だった。
この世界にも週があり、月があるんだけどさ。
1週間は5日なんだよな。
で。
1ヶ月は6週で、基本一律30日。
そして数年に1度、そこに数日追加されるらしい。
……それ多分、閏年だな。
他所の世界だけど、そういう暦の内容とその仕組みが分かると何だか面白かったよ。
全部リスリーから教えて貰ったことだけどね。
曜日は熱天水地命の5つ。
ようは五大精霊が曜日のモチーフになってるんだな。
一般に休みなのは命曜日で。
その日が所謂週末だ。
(よし。服はこれでいいかな)
自室で一番良い服に着替えて。
鏡の前で確認して俺はそう思った。
この服なら相手に失礼は無いはずだ。
経験者のトオルに相談したかったが、何故か躊躇われた。
だから誰にも言ってない。
(行くぞ!)
気合を入れた。
そしてそのまま俺は自分の部屋を出た。
するとだ
「お、マサヤ」
いきなり廊下でトオルに鉢合わせた。
心臓が跳ね上がる。
で、しかも。
「……何でその服着てんの?」
即座に俺が王城に向かったときに着ていた服を着ていることに気づき。
それを指摘して来る。
……よく気が付くなぁ。
まあ、トオルは友達が多いヤツだけど……。
俺は親友の観察眼に動揺しながらも
「ちょっと人に会う約束をしたからさ」
そう言って誤魔化す。
嘘は言ってない。
……言って無いよな?
俺は緊張を覚えた。
トオルは俺の言葉にどう返すのか……?
そんな俺の視線を受けながら
「ふーん……まあ、気を付けて行って来いよ」
トオルは俺の言葉をそう言って流した。
そして自分の部屋に引っ込んでいく。
俺は胸を撫で下ろした。
……正直「人に会うって誰に会うの?」って訊かれたらどうしようかと思っていた。
冷静に考えたら、トオルが俺個人の人間関係に口出しして来るなんて無いだろって思ったけど。
さっきは本気でその可能性についてビビリまくっていた。
なんだか手汗を掻いている気がする。
手を洗うか……
約束の場所に向かう前に外に出て、井戸に行こうかと思ったが。
(いや、今度はリスリーに鉢合わせるかもしれないだろ)
その可能性に思い当たり。
俺はそのまま、玄関から外に出て行った。
王立演劇場っていうのは、王都で一番大きな劇場で。
この国でも一番大きい劇場らしい。
初めて行く場所ではあったけど……
道に案内板が出ていて、それを見ながら進んだら特に問題なく辿り着けた。
劇場は白い石……大理石かな?
それで作られた建物で。
大きさは俺の学校の体育館を3つ合わせたくらいの大きさで。
デカいなと感じる。
確かキャサリーンさんは劇場の入り口で待ってるって、あの手紙に書かれていたけど……
彼女を探す。
どこにいるのか……
そのとき
「リズマサヤー!」(マサヤさーん!)
聞き覚えのある女性の声がした。
その声に振り向くと。
そこには……
いつものメイドさんのようなウエイトレスの制服ではなく。
白と緑色の、上等に見える衣装。
ワンピースに似ていて、胸元が開いてて胸の谷間がちょっと見えている。
そんな、ちょっと攻めた衣服で身を包んだキャサリーンさんが居た。
これが女性のデート衣装……!
俺のために、この人はこの服を選んでくれたのか……!
そう思い。
俺は自分の心臓の鼓動が早くなるのを感じた。




