第80話 ハゲとのやりとりと、日本料理
「あのときはどうなるかと思いましたけどね。戻って来てくれて何よりです」
「……どうも」
俺は本来返事なんてしたくなかったが。
何も言わないわけにはいかないから、短くそう返す。
そして俺は膝を折って控えていた。
騎士っぽく。
その姿勢を取ることは、ソウジへの裏切りに感じたが
(これもお前の仇を討つためだ)
そう言って、言い訳をした。
後で思い知らせてやるために、今は耐えろと。
この場に至るために……
俺はトオルや岩戸さん、そしてリスリーやセレーネさん……
色々な人々の手助けを受けている。
その信頼を裏切るわけにはいかない。
そう思うと……
意外に俺は耐えられた。
しかし。
「しかし、リスリーさん……髪はどうしたんです? 近衛の鎧も無いようですけど」
そんな俺を他所に。
ハゲはリスリーの外見変化に触れる。
コイツにとっては俺の忍耐なんてどこ吹く風で。
ハゲのその質問にリスリーは
「……髪は切りました。マサヤ様がこちらの髪型のほうが好みだと仰いましたので。鎧は実家に置いて来ています」
そう、少し言いにくそうに答える。
リスリーのその言葉に
「……ふーんそうですか」
ハゲは何だか、憐れみと呆れを伴った声音でそう言って。
「まぁ、良いですよ。そのまま村田さんに誠心誠意仕えなさい。あなたは見返りなんですからね」
アッサリとした声音で、そう言う。
リスリーはその言葉に
「了解でございます」
深々と頭を下げて、そう返す。
……ほれみたことか。
男の玩具にされるってことがどういうことか分かっただろう?
ハゲのやつ、そう言いたげな言い方だな。
まあ、そっちの方が俺はありがたいんだけどな。
俺はその言葉に反論しようとはしなかったし。
開き直る言葉を言うこともしなかった。
コイツとはなるべく会話したくない。
会話すればするほど、心がすり減っていく。
そしてそのまま。
俺は玉座の間で、名前の授与をされた。
これからは俺は
マサヤ・デノマススギンク・エガリヴールがこの国での正式名称になるらしい。
知るか、と思う。
デノマススギンクってのは『召喚騎士』の意味らしいが
エガリヴールって名前がどこから来ているのかは聞いていない。
どうでもいい。興味無いから。
デノマススギンクはリスリーと一緒だから聞いたけど、他はどうでもいい。
なんか偉そうに語ってたけどな。
そしてそのまま俺は玉座の間を退出し。
王城からも出て行って。
昼飯がまだだったのでリスリーと2人、王都の飯屋に入った。
看板には「日本料理」と書かれていた。
ノーザリア語で。
(日本料理……?)
転移者がこの世界に伝えた料理をそう言ってるのかね?
とすると寿司とか天ぷらとかを出すんだろうか……?
王城では散々な目に遭ったから、俺はメンタルを回復させるために食事に集中することにした。
2人でテーブル席の1つに対面で座り。
「日本料理って、代表的なのは何なの?」
リスリーにそう訊ねる。
すると
「カレーライスと、ラーメンが代表ですね。あと味噌汁とか」
……そんな答えが。
えっと
「……カレーライスとラーメンは日本料理じゃないぞ?」
思わずツッコむ。
するとリスリーは
「えっ、そうなんですか!?」
……口に手を当てて本気で驚いていた。
どういうことだよ……
そう思ったけど。
(多分、転移者がどうしても諦めきれない故郷の味を再現したのがこの世界の『日本料理』だから、カレーライスとラーメンが日本料理になるのかね)
そう考えたら、あり得んわけじゃない無いよな。
しかし、何があるのやら……?
一応、メニューみたいなものがあったからそれを開いて。
拙いノーザリア語力で、内容を確認する。
お好み焼きもあるけど。
カレーとラーメンの種類が多いな。
カレーに種類って……辛さで分けてるのかな?
そう思ったら
キーマカレー
チキンカレー
ポークカレー
……ちゃんと種類で分けられてた。
で
「ハヤシカレー?」
そんなことが書かれていて。
(いや、ハヤシライスはカレーじゃ無いだろ!)
そう思ったから
「あのさリスリー」
そう言って、彼女にメニューを示しながら
ハヤシライスとカレーの違いを説明しようとしたとき。
「ヤムイアエカトウオーダレドロ?」(ご注文をお願いしていいですか?)
……ウェイトレスが俺たちのテーブルに注文を取りに来たんだ。




