第78話 王城に呼び出されて
その日、ちょっと心が荒れていた。
何故なら……
「マサヤ、呼び出しが掛かってるぞ。王城からだ」
仏頂面のトオルの奴に、その日そう言われたんだ。
王城から手紙みたいなやつ……書簡って言うんだっけ?
それが届いたんだよ。
木製の卒業証書入れみたいな容器に入った、1通の手紙。
それにはノーザリア語の文字……ロブミスで書かれた日本語の文章があった。
表音文字であるロブミスで、無理矢理日本語を書いたんだな。
その内容を日本語のひらがなで書き直すと
『むらたまさや、すぐしろにしゅっとうせよ。きゅうていまじゅつしひっとう・れふぃかる』
こんな内容で。
電報かよ。
そう思ったのと
レフィカル……
あのハゲ野郎。
正直、ぶちのめしてやる日までは会いたくない相手だ。
だけどさ……
「分かった。行くよ」
そう言って、服を王城に上がっても問題の無いもの……
手持ちの服で一番マシそうな服に着替える。
俺のそんな態度に
「……助かる」
俺がごねると思ったのかね。
トオルにそう礼を言われた。
……言っちゃなんだが。
あのときはソウジをやられた怒りが抑えらえれなくて「ここに居たら襲い掛かって返り討ち」って思っていたけど。
今の俺はあのときほど怒りに振り回されていない。
……ソウジのことを諦めたわけじゃないけどな。
前よりは制御が利くようになっただけだ。
そして俺はリスリーと一緒に王城に出向いた。
そこでドラゴンを倒した証拠として逆鱗をお城の人間に差し出したら
「おお……逆鱗」
思った以上に驚かれた。
倒すのは確かに大変だったけど、この国には災厄級のドラゴンを瞬殺できる大谷さんがいるんだし。
ちょっと感嘆されるくらいでおしまいだろうと思っていたんだけど。
「デトレヴニエラックス……!」
「イルスオイレス……!」
周辺の人間が俺が差し出したものを見てざわついている。
ノーザリア語で。
デトレヴニが「ひっくり返す、逆の」で。
エラックスが確か「貝殻、鱗」……。
だから多分逆鱗のことか。
連日リスリーにノーザリア語を教えて貰っているので、俺はその言葉を何とか聞き取り、その意味を理解する。
続けて
何かリスリーが、別の人に話しかけられて
「リズリスリー、ティスィグニザーマタハトウオーデニアトボデトレヴニエラックス……」
「ティスィエスアセブフォタハウリズマサヤサハデシリプモンカ」
何かノーザリア語で会話している。
ちょっと言ってきた方の言葉は「リスリー」「デトレヴニエラックス」以外聞き取れなかったが、リスリーのノーザリア語は聞き慣れているのでだいぶ聞き取れた。
ええと……
エスアセブが「理由、原因」
タハウがそれ以下の文章をまとめる代名詞みたいなもんで……
デシリプモンカが「達成する」
だから多分
『マサヤ様がやったことが原因です』
つまり
『マサヤ様の手柄です』
かな。
ノーザリア語で話してるのに、リスリーは俺を支える言葉を言ってくれてる。
俺はそこに、感謝と……
何だか、心が高鳴るものを感じる。
「リズリスリー、タハウデネッパハオトウオーライア?」
「ウオータックティイリヴトロールス、トゥンディドウオー?」
そしてまた別の人……女性2人に話し掛けられて。
今度は「ライア」と「トロールス」だけ聞き取れる。
ライアが「髪」でトロールスが「短い」
……リスリーの髪型が変わったことを言ってるみたいだな。
それに対して彼女は
「スィハトハトグネルスィタハウリズマサヤスレフェルプ」
……直訳すると「マサヤ様の好みがこれです」と言った……
いや……
ホントのこと……
最初はそのまま反逆者になる予定だったから、足取りを追われないように髪型を変えた。
これは言えないけどさぁ……!
俺は今、リスリーと会話をしていた女性2人から……
この男、立場を良い事に女に髪を切らせたのか。
とんでもない奴だ……!
そういう目で見られているのを感じ取っていた。




