第71話 言語の壁
そして数日後。
俺たちは王都に戻って来ていた。
かなり召喚騎士の権力でゴリ押して。
召喚騎士は一応貴族で。
地位は決して低くない。
その地位を振りかざして、可能な限りの最速で戻って来たんだ。
褒められたことじゃないが止むを得ないだろ。
時間を無駄にはできないわけだし。
密出国の罪状だなんだかで、余計な拘束を受けてる暇は無いんだ。
そして今
目の前には、あの日ガン無視した場所……王城がある。
あのときに見た、白い城だ。
「マサヤ様、こちらです」
そしてリスリーの案内で、俺は何処かよく分からない場所に連れていかれる。
いきなり玉座の間に連れていかれるとか、そういうのは無いか。
あの日、本来受けるはずだった召喚騎士の儀式とやらを俺が蹴ったから、俺のためにやり直すとかそういうのは無いわけだ。
……当たり前だよなぁ。
逆に、そうならないのがありがたくはある。
なるべく軽視されてる状態がありがたいわけだし。
王城内部は王様の住居らしく、デザインに荘厳さがあった。
貴族っぽさ、王族っぽさというか。
壁や柱に彫刻が施されてて、非常にゴージャスな雰囲気を醸し出してる。
で
「ドロルマサヤサハデンルーターモルフスィハライトラムエガミルグリプ、ウォングニセソプエトスセウォルプオトヤルスアドラゴン。サスィハレニアター、アイイベレハドナメドエトドネピツドナセゲリヴィルプエウドオトミハサアデノマススギンク」
「エノトネモムエサエルプ」
……何か、受付みたいな場所に連れて来られて。
城の受付みたいな人とリスリーが目の前で交渉していた。
表情から察するに、俺を売り込むことを頑張ってくれてるようだ。
ギリギリ「マサヤ」って言葉と「ドラゴン」って言葉が聞き取れたし。
……一応さ。
俺はノーザリア語を少しは勉強しようとはしてるんだけど。
どうにも、日本語で話が通じてしまうので身が入っていない気がするんだよ。
リスリーもセレーネさんも日本語が完全に話せるから、何も不都合は無かったんだけどさ。
これからはこっちで活動しないといけないんだし。
避けて通れないよなぁ……
それに。
「エウトセプセアトフィウスエスノプサー。オドトンピークミハグニティアウ!」
リスリーが、受付っぽい人に鋭い口調で何か言う。
雰囲気から察するに、念押しか何かだろ。
内容が理解できないから何を念押ししたのか分からんけど。
……こういう交渉事で言葉が分からないと、この「リスリーに丸投げ」の構図がどうしようもなくなる。
彼女は別に俺の召使でも奴隷でも無いのに、仕事丸投げって何様だよ。
非常に引っ掛かる。
なんとかしたい。
「お待たせしました。おそらくこれで上にマサヤ様の帰還が伝わるはずです」
そしてリスリーが笑顔で俺に成果報告をしてくれるところに
俺は
「ちょっとさ、リスリー」
お願いをした。
「俺に本格的にノーザリアの言葉を教えて欲しい。今ので俺、流石にマズいと思ったんだ」
俺のそのお願いにリスリーは
「えっ、覚えて下さるんですか? 我々の言葉を?」
――何故だか、すごくうれしそうに見えた。




