第68話 ダンジョンコアとダンジョンアイテム
ダンジョンアイテム……。
一時期は、さらなる力を得るために手に入れることを欲したアイテム。
それが今、俺の目の前にある。
思わず俺は息を呑んだ。
俺はこれから、限られた人間でしか立ち会えない瞬間に立ち会う……!
「罠なんかは無いんですよね?」
一応確認をした。
俺の言葉にセレーネさんは
「はい。罠の類は無いですわね。私の知る限り、そんな例は無かったはずです」
肯定を返してくれる。
だったら……
俺は緊張で手が震えたが
気合を入れて
思い切り、その観音開きの扉を開く。
鍵は掛かっておらず、簡単に開いた。
少しだけ拍子抜けする。
ダンジョンコアなんて、とても貴重なものが入ってる入れ物なのに。
ダンジョンコア……
実際に目にしたそれは、輝いていた。
光の塊に見える。
ただ、触れた。
触ると固い感触がある。
だけど、材質は分からない。
何かが輝いているのが分かるだけ。
実体化している光の珠。
それが一番適当な表現かもしれない。
「それを手に持ち、壊すことをイメージしてください」
セレーネさんの助言。
言われて俺は両手でダンジョンコアを祭壇から取り出した。
手の中にある正体不明の光の塊。
その大きさはバレーボールぐらい。
俺は、それがガラスか陶器で出来ているとイメージして。
それが粉々に砕けるところをイメージする。
その瞬間だった。
輝く珠が形を変える。
バレーボール大の光の珠から
緑色の布のブーツに。
布のブーツ……
イメージ的に妖精が履いてそうなそうなブーツだった。
脛あたりまで覆う構造になってて。
底の部分だけ、ゴムのように固い素材で出来てる。
(これがこのダンジョンのダンジョンアイテム)
さすがに感動があった。
危険を潜り抜け、やっと手にした「そう簡単には入手できないレアアイテム」なんだ。
(これ、どういうアイテムなんだろうか?)
そしてそう考えたとき。
頭の中に一気に情報が流れ込んで来た。
ダンジョンアイテム名:天空の長靴
効果:任意で空気を足場として立つことができる靴。
(空気を足場に出来る靴……)
攻撃力があるものではないけど。
応用の利きそうな効果だと思った。
ただひとつ問題は
さっきも言ったけど、デザインが妖精が履きそうなイメージなんだ。
これは魔族に差し出す予定だけど。
仮に俺たちのものになるとしても。
正直、俺は履きたくなかった。
こんなファンシーなもの、俺が履くと正直キツイ。
男が履くものではない。
それにさ……
本気で戦う場合、俺は素足を選択肢に入れたいんだ。
靴を履くと、足回りの安定性が無くなる。
だとしたら
「なぁ、リスリー。ちょっとこれ、履いてみてくれる?」
「えっ、マサヤ様?」
なんとなくだ。
魔族に渡す前に、使って見たかったんだよ。
自分たちで。
試さないのは勿体ないと思ったんだ。
これぐらいアリだろ。
俺が差し出した天空の長靴を、リスリーは戸惑いながら受け取ってくれて。
そのまま床に腰を下ろして、現在履いている革の長靴を脱いで履き替えてくれる。
それをなんとなく眺めていたけど、リスリーが素足になったときになんとなく目を逸らした。
なんか、見ちゃいけないと思ったんだ。
そしてその履き替え作業に要した時間……僅か数分。
その結果
「面白いですね。何も無い空間に階段があるみたいです」
まるっきし階段を昇るやり方で。
リスリーが何も無い空間を上り下りする様子を見て
俺は思わず拍手をしていた。
すげえな! ダンジョンアイテム!




