第67話 ドラゴンを倒してその後
「マサヤさん、これを」
セレーネさんに手渡される。
赤い1枚の大きな鱗……逆鱗を。
さすがに少しだけ胸が高鳴った。
(これがドラゴンの脳を守る鱗)
手渡されたそれを感慨深く思いつつ撫でる俺。
(他の鱗より分厚くて、大きいな)
さっき何枚も鱗を力任せに剥がしまくった身としての、正直な感想だ。
ドラゴンの鱗は1枚が掌くらいの大きさだけど。
逆鱗の大きさはその倍の大きさがあった。
「これを見せれば『ドラゴンを仕留めた』ことの証拠になりますわ」
そこを意識して、俺のためにセレーネさんはこの逆鱗を拾って来てくれたのか。
さっきドラゴンを仕留める矢を放つ際に邪魔だから捨てたのに。
「ありがとうございます」
素直に俺は礼を言い、頭を下げる。
セレーネさんはそんな俺に対して
「別に礼には及びませんわ。マサヤさんにやっていただいたことが無駄に終わらないようにしただけです」
そう言ってニコリと微笑み
「ちょっとリスリー、少し手伝ってくださるかしら?」
舌を吐き出して横倒しになっているドラゴンの死骸。
そんなドラゴンの死骸の傍で、その死骸を見ていたリスリーに声掛けし
「姉さま、何でしょうか?」
振り向き返事をする彼女に
「折角だからドラゴンからとれる素材を取れるだけ取りたいの」
そう言って、リスリーと一緒に素材の剥ぎ取りを開始する。
リスリーは胴体から普通の鱗を剥がして集め始め。
セレーネさんはドラゴンの目玉にナイフを突き立てて、眼球から何かを抉り出そうとしている。
……無駄が無いな。
奪ったドラゴンの命を可能な限り回収していくような。
そんな責任感のようなものを感じた。
俺もボサっと見てるわけにもいかないので
俺は俺で、床に投げ捨てたドラゴンの鱗を集めた。
そんな素材の収集は1時間くらい続き。
「とりあえず素材収拾はこのくらいにしておいて」
袋一杯に集めたドラゴンの鱗。
そしてドラゴンの両眼から取った水晶体。
ドラゴンの水晶体は死ぬと高質化し。
文字通り水晶のようになる。
色はドラゴンの個体差があるらしい。
俺たちが倒したドラゴンは、緑色の水晶体を持っていた。
直径5センチくらいの大きさの珠だ。
色はとても綺麗だった。
しかし……
「無色透明じゃ無いんですね。水晶体って透明じゃないんですか?」
「そこも謎なんですわ。死ぬと色が変わるのかもしれませんね」
そんなことを言いながら、水洗いして宝石にしか見えなくなった水晶体2つを眺めるセレーネさん。
このドラゴンの水晶体で、品質のいい魔法の杖を作ることができるらしい。
所持して魔法を行使するだけで、使役する精霊のテンションが上がり魔法の威力が増大、精神力消費まで抑えてくれる魔法の杖を。
あと……
「これ、残念ですね」
「仕方ありません。固すぎますから」
実は俺、ドラゴンの舌を一部切り取って焼肉にしようと思ったんだけど。
固すぎて刃物が入らず、切り取るのが無理だったんだ。
焼肉にしたらタンを食べ放題なんじゃ無いかと思ったんだけどな。
(……残念だなぁ)
そんなことを俺は、ドラゴンが吐き出している舌にぺちぺちと触れながら考える。
ドラゴンの舌はヌルヌルしておらず、ざらざらしていた。
俺はこれがどんな味なのかを知りたかった。
本当に。
そう、未練のようなものを感じていた。
そこに
「では、マサヤさん。いきましょうか」
セレーネさんが俺に言う。
「祭壇を開きダンジョンコアを破壊し、ダンジョンアイテムを手に入れましょう」
弾んだ声で。
ドラゴンが守っていた祭壇……
木製の大きな門に似た藁葺き小屋……祭壇を指差しながら。




