第63話 ダンジョンの祭壇
「祭壇ってあれですか? あれ、正式名称知りませんが神社の小屋じゃないですか!?」
俺が驚きと興奮で泡を食ったようにそう捲し立てると
「ジンジャ?」
そんな俺の言葉にセレーネさんが怪訝な表情をする。
あっ、と思う。
(そっか。この人異世界人だった)
日本語普通に通じるから、日本人の常識が全部通じると錯覚してしまった。
んなわけはないんだ。
この人は日本とは別の文化圏で育った人間なんだよ。
だから
「ええと……日本の現地宗教の、神殿で神殿の宝物を納めている宝物庫そっくりなんですよ……神殿は分かりますよね?」
なるべく分かるように、神社とあの「祭壇」と呼ばれているモノを説明する。
果たして正しいのかと少し不安になったけど、多分大丈夫だと思う。
神社のご神体を納めている小屋を想像して出てくるイメージそのものな小屋だったんだ。
どこか門に似てて。
大きめの三角屋根があって。
藁葺きで。
俺が身振りを交えて、俺の言う「神社の小屋」と「ご神体」の概念を説明する。
セレーネさんは俺の言葉を真剣に聞いてくれて。
そして
「なるほど……日本では神の依り代を納めている、言わば『神の家』をこちらでは『祭壇』と呼んでいるんですね……」
すごく興味深そうに呟き。
顎に触れながら頷く。
「……実は明確な根拠は無かったんですが、私はなんとなく、ダンジョンを作ったのは日本の方なのではないかと思っていたんですが……私の仮説は強ち間違いではないのかもしれませんわね……」
ふーむ、という声が聞こえそうな態度で、腕を組み、祭壇を見つめるセレーネさん。
「姉さま、良かったですね」
リスリーの言葉に
「ええ。長年の仮説の有力な根拠が手に入って、私としては万々歳ですわ」
セレーネさんはニコリと微笑み。
俺にも
「マサヤさん、大変助かりました」
そう言って、ペコリと頭を下げられた。
別に感謝されようと思って言ったわけじゃないけど。
お礼を言われて悪い気はしない。
なので俺は
「いえいえ」
そうちょっと照れつつそう返し。
そのまま
「早速祭壇を開けてみましょう。中にダンジョンコアがあるんですよね?」
そう言って、祭壇の扉を開けに行こうとした。
だけどその前に
俺は右手をセレーネさんに両手で掴まれて、全力で引っ張られる。
で、こう言われる。
「それはちょっと待ってくださいまし」
咎める表情で。
は?
理解できなくて硬直する俺に。
セレーネさんは
「あれ、おそらくミミックですから触ってはいけませんわ」
そう言ったんだ。
ミミック。
ゲームだと宝箱に擬態しているモンスターだけど。
こっちの世界のミミックと呼ばれる魔物は、祭壇に擬態するそうだ。
で、祭壇の扉を開けてダンジョンコアをいただこうとする人間を捕食するらしい。
……あぶねー。
俺、余計なバトルを呼び込むところだったのか。
それにそういえば、番人のドラゴンが居ないのも変だ。
普通はドラゴンがダンジョンコアを守ってるんだろ?
そこで疑問に思わないといけないのに、祭壇の形状で驚いてブッ飛んでしまった。
「すみません」
これは俺が悪いので、俺はセレーネさんとリスリーに頭を下げる。
2人は
「気にすることありませんわ」
「何も無かったんですし。マサヤ様」
俺の軽率な行動を許してくれた。
その後。
部屋の壁を調査すると、隠し扉が割と簡単に見つかったので。
俺たちはそのまま先に進んだ。




