第61話 芋虫の味
次の日。
朝食の時間になったんだけど。
セレーネさんが前の日に捕獲していた食材が問題だった。
……それは
芋虫だったんだ。
セレーネさんの所持していた木製の虫かごの中で9匹ほど。
それはまだ生きててうねうね動いていた。
体長10センチくらいの芋虫で、色は褐色。
棘は生えてなかったけど、ゴツゴツした表皮をしてるあまり見目のいい虫では無かった。
えっ、これを食べるの?
さすがにドン引きしたのだけど。
「あら姉さま。これは……」
リスリーは平気な顔、というか
若干嬉しそうな顔でそれを覗き込む。
セレーネさんは
「そう。エナポムローウですわ」
すごいニコニコ顔。
この芋虫は、エナポ・ムローウというらしい。
エナポってのは木の名前で、これはそこの葉っぱにつく芋虫。
ムローウってのは主にこういう芋虫、もしくは足が4対以上ある虫を意味する言葉だとか。
で、美味いんだって。
美味いのか……
この虫を昨日、今日食べるために捕まえて来たのはセレーネさんで。
リスリーはそれを特に問題視してない。
じゃあ、俺は文句言えないよね。
でも、調理には参加しなかった。
手伝えなかったんだ。
セレーネさん、全く躊躇いなくその9匹の芋虫を両手で絞って、暗緑色の中身を押し出した。
イメージ的には絵の具のチューブから絵の具を押し出す感じ。
これは俺には真似できん。
セレーネさん曰く、それは未消化の葉っぱと排泄物らしい。
で、洗面器みたいな器の中に魔法で水を召喚し、それでその「中身を搾り取った9匹の芋虫」を洗った。
その洗った芋虫をリスリーがフライパンで炒めていく。
味付けは無し……
でも、炒めはじめるとすごくいい匂いがしてきた。
エビを炒めているような香りだった。
そして実食の段階になり、1人3匹ずつそれが回って来る。
皿の上に乗せられた炒められた3匹の芋虫……。
「うん。やはり素材の味だけで食べるのが最高ですわね」
「野外調達で食べる食材としては定番ですからね。私も野営するときによく食べました」
セレーネさんとリスリーは、それを手で摘まんで美味しそうに食べている。
この状況で、俺だけ「嫌だ」とは言えないよな……
特に、リスリーが調理してくれたんだし。
なので俺は覚悟を決めて口に入れた。
そして芋虫を炒めたものをかみ砕くと……
外側がパリッとしてて。
中身がプリプリ。
えっこれって……
(シャウエッ〇ンじゃん)
有名な粗挽きウインナーソーセージの商品名が頭に浮かんだ。
食感がまさにそれなんだ。
そして、肉の風味はエビっぽい。
これは美味い。
リスリーが芋虫を見ただけで嬉しそうにしていたのが理解できた。
当然、2匹目からは全く抵抗なく食べられた。
見た目じゃ無いな。食べ物は。
ありがとうセレーネさん。
そしてリスリー。
そんな最高に美味い食事をして。
俺たちは
「ここも入り口が入りにくくなってますね」
「そうですわ。だからこそ、狩場としては重要度が低くて狙い目なんです」
その日、攻略する予定のダンジョンの前に辿り着いた。
そこは前にゲンブを狩りに入り込んだダンジョン同様に。
深い穴の底に入り口があるタイプのダンジョンだった。




