第58話 決断
嵐は去った。
そう言うしかない、怒涛の出来事だった。
魔族たちは無事な者を集めて、火事を消火したり負傷者の手当てを行っている。
「アクアンよ火の怒りを鎮めよ!」
セレーネさんが魔族に混じって消火作業を手伝っていた。
水の精霊アクアンに命じて、水を召喚して火を消している。
何も無い空間に水が出現して、燃えている草の家に降り注いでいく。
……この件の襲撃者たるコバルとゴワケと同じ国の人間として、責任があるもんな。
私がやったわけじゃないですし、とはいかんだろうさ。
何せここの人たち、本来はアウトローなんだし。
同郷の奴らの不始末の責任はお前らが取れ、って言われる可能性は十分にある。
俺も眺めているわけにはいかない。
「手伝います!」
負傷者を運んだり、俺自身も回復魔法が使えるのでそれで治療を手伝ったりした。
死んだ人はいないみたいだったけど。
指を失うような重大な負傷をした人はいて
俺は同じ世界から来た人間として申し訳なくなった。
そして消火作業、負傷者の救護が終わった後。
俺たちは客人用の家に引っ込んで
これからのことを話した。
俺は
「……俺さ、1回王都に戻ろうと思う」
そんな俺の言葉は
「えっ、本気ですか?」
リスリーには予想外だったみたいだ。
俺は頷いた。
「……あのままハゲの傍で召喚騎士をしていたら、俺はきっと復讐を成し遂げる前に殴りかかって返り討ちにされて終わる。そう思ったから抜け出した場所だけど……」
思えばそうだった。
ソウジの仇の傍でじっと耐えて機を伺うことは多分俺にはできない。
そう思ったからやったこと。
だけど
「……大谷さんが兵団長になってくれたから、だいぶそのあたりがやりやすくなった」
大谷さん。
その変貌ぶりにはだいぶショックを受けたけど。
冷静に考えると、都合がいいと思う。
彼女は俺をそれほど嫌っているようには思えない。
コバルやゴワケと比較したらだけど……
だから話が出来ないわけじゃない。
いきなり問答無用で極大魔法で消し飛ばされたりはしないと思う。
そして彼女はハゲに仕えている。
だから俺は準備が整うまでハゲと関わらなくていい。
それどころか彼女と会話できるようになれば、ハゲの弱みを教えてくれるかもしれない。
だったら、戻った方が良いだろ。
それにさ……
「どうも俺は不良の召喚騎士と思われているみたいだ。だから今頃正式に召喚騎士として働くと言い出しても通るんじゃないかと思うんだ」
色々思うところがあって戻ることにした。
収入無しでウロウロするのは辛すぎる。甘かった。
だからなんとか受け入れてもらえないだろうか?
そんな感じで、失笑されることを言えば多分怪しまれないんじゃないか?
そう言った。
リスリーは複雑な表情を浮かべた。
彼女としては相当な決意を持って裏切りの決意を固めて、王都を出たんだと思うけど。
裏切りが明らかになっていないとはいえ、元サヤに戻るような真似をするわけだ。
……気にはなるかもしれないな。
でも
「それが良いと思います。私も異論はございません」
最終的に同意してくれた。
少しだけ、ホッとした。
リスリーのその俺への同意に
「そうですわね。私としてもそちらの方が従妹の家の取り潰し問題に即発展しないので助かりますし」
セレーネさんも同意。
こうして。
俺は恥を忍んで王都に戻って来た情けない召喚騎士として戻ることが決まった。
……まあ、その前に。
ここであと1つだけ、やっておきたいことがあるのだけど。




