第51話 共に立つ彼女
コバルの怒声。
俺はその怒声に正直威圧感を感じていた。
悔しいが今のコバルは強敵だ。
まともにやればただでは済まないだろう。
だけど
こいつらは……
あのとき、ソウジの死体を踏みつけやがった。
ヘラヘラ笑いながら、焼き殺されたソウジの身体をわざと踏んでいった。
ソウジの頭を……
俺の親友の頭を……!
そしてこの惨状……!
魔族たちの住処を荒らしまくっている。
別に何も普通に生きてただけの人々の住処を。
そこらじゅうに傷ついた魔族の男たちが倒れていた。
子供の泣き声も聞こえてくる。
恐怖で萎縮するなんて、冗談じゃない!
冷静に考えたら、これは俺の悪癖だろう。
あのハゲの前から逃げるハメになったのは、このせいなんだし。
あのままあのハゲの傍にいたら、遠からず襲い掛かって返り討ち。
力を得る前に話が終わってしまうから。
だから俺は逃げたんだ。
俺のそんな部分を把握してくれていたトオルが、そのお膳立てをしてくれたから。
だけど今だけは、俺は俺の悪癖そのままの行動を取る!
「おいコバル、ゴワケ」
俺の声は震えていなかった。
自分でも意外なほど落ち着いていた気がする。
ああ? という2人の暴力的な人間そのものな輩の笑み。
その笑みが。
「これは大谷さんの命令なのかよ? ……今、お前ら大谷さんの手下なんだよな?」
俺の言葉で凍った。
薄ら笑いが凍り、次の瞬間
「うるせえ!」
「キモイんだよカス!」
2人は目を剥き、激昂した。
そしてコバルは叫ぶ。
「ぶちのめしてやる! おいリンコ! ここは俺に任せろ!」
コバルの言葉にゴワケは
「アタシの分も残しておいてよ!? まあ最悪殺してしまっても別に良いよね!? 喧嘩を売って来たのはコイツなんだし!」
そう返した。
……脅しじゃねえな。
殺る気だ。
でも、やってやる……!
俺がこいつらのヘイトを買うことで、他の人々が安全になる。
勝ち筋は全く見えて無いけどな。
でも、意地でも何かしらやってやるよ……!
俺は半身に構えて腰を落とす。
コバルに打撃はおそらく効かない。
だったら投げはどうだ?
投げって喰らった瞬間は理解できないものだし、投げという技はダメージを与えてくるのは結局はそいつ自身の体重だ。
自爆扱いになって、今のコバルにも通じるかもしれない。
まぁ「かもしれない」でしかないけどな。
確証はない。
そう、一応格闘士としての思考で勝ち筋を思案する俺の隣に。
剣を抜いたリスリーが進み出て来た。
そこで俺は動揺した。
「リスリー、キミは下がっていてくれ。危ない」
こいつら2人は危険過ぎる。
そう思ったから俺はそう言った。
焦り声だと自分でも思う声で。
だけど
「そうはいきません」
リスリーは首を左右に振った。
覚悟の決まった表情で。
「私はあなたを守るために一緒にいるのです」
……そうだった。
彼女はそういう女性だった。
自分の思う「正しい道」のためなら、命も投げ出すしプライドも捨てられる女性なんだ。
そんなこと、今まで一緒に居て気づいていたことのはずなのに。
そのとき俺は、初めて自分の選択に後悔の気持ちを持った。
彼女のことをもっと考えるべきだった、と。
そんな俺たちに対して
「いくぞオラァ! 身の程を教えてやんよ虫ケラがぁ!」
雷の槌を振り上げ、コバルが俺たちに突っ込んで来た。




