第46話 ダンジョンアイテムが欲しいのだが
半日歩いた道を、同じくらい時間を掛けて歩いて戻る。
草原を歩いて、俺たちの現在の滞在先である魔族の集落へと。
日がだいぶ傾き、沈みかけている。
完全な夜になるまでには帰りたいところだ。
そこで
「これからどうするんですの?」
セレーネさんはそう俺に今後どうするのかを訊いて来た。
これで俺は最低限必要だと考えていた魔法を全て取得した。
だが、俺はこれで完璧だとは思わない。
できればダンジョンアイテムという奴も手に入れたいと思っていた。
これだけ力を揃えれば良いだろって、そんなことを言ってられるかよ。
俺は必ず勝たないといけないんだ!
だから
「ダンジョンアイテムって手に入らないでしょうか?」
訊ねた。
頭の片隅で「難しいだろ」と思いながら。
セレーネさんは
「それは厳しいですわね」
苦い声だった。
そりゃそうだよなぁ。
何故って。
ダンジョンアイテムがある限り、ダンジョンからは魔物が湧き続ける。
そして魔族は基本的に、それを食料を安定して得る手段として利用しているんだ。
つまり、ダンジョンアイテムを取ってダンジョンを終わらせるのは、魔族にとっては死活問題。
魔物が湧かなくなって安定した食料を得ることが出来なくなり、最悪飢えることも考えられるわけだ。
だとしたら。ダンジョンアイテムを求めるのは無理がある。
「ダンジョンアイテムって売ってますか?」
だったら王国内で流通して無いかと思ったんだけど
「売ってるわけありませんわ。ダンジョンは有限で、ダンジョン1基につきたった1つしか取れない品ですのよ?」
半分くらい呆れた声でそう返された。
まあ、確かにそうだよな。
冷静に考えたら出回ってるはずがない。
多分全部国有なんだと思う。
仮に売ってても、恐ろしく高額になるはずだ。
それこそ、一生かかっても払えないほどに。
「マサヤ様、焦られるのは理解していますが、ダンジョンアイテムは……」
そこにリスリーからも遠慮がちに否定的な言葉が来た。
曰く、ダンジョンアイテムはダンジョンコアを破壊すると取得できるけど。
一度破壊するともう元には戻らないらしい。
そしてダンジョンコアを破壊しないと、中にどんなダンジョンアイテムが入っているのかも分からないそうだ。
(つまり、ダンジョンアイテムを求めてダンジョンを攻略しても、その縄張りの魔族の恨みを買うだけで何も得られない可能性が十分にあるわけか)
そりゃ割に合わないな。
納得するしかない。
断念すべきだ。
魅力は大いに感じるけどな。
きっと俺が欲しいと思える性能があるダンジョンアイテムもあるだろうし。
「マサヤ様、さらなる力を手に入れることより、今は既に手にした力を使いこなすことを考えましょう」
そこにリスリーからのアドバイス。
確かにそれはそうかもしれない。
まず手に入れた魔法の力をどうやって自分のものにするか。
そっちの方が重要だよな。
「精霊は難しい表現を好むんだっけ」
なので魔法詠唱の話をする。
精霊はあまり単純な会話言葉で詠唱されるのを好まないそうで。
だから回復魔法の詠唱が
生命の精霊ライブラよ、その命の祝福賜らば我その癒しの力、勇者を奮い立たせる力とせん
……こんな感じになるらしい。
なんか、漢詩の書下し文みたいな。
「ええ。回復魔法の詠唱は私の使用しているものを使えば問題無いですが、アーシズの魔法は私は使用できませんので」
一緒にこれから考えていきましょうか。
リスリーはニコニコとした笑顔を浮かべ、俺にそう言ってくれた。
助かる。
経験者が居た方が心強いもんな。
「ああ、お願いするよ」
そう彼女の言葉にそう返した。
……そのときだった。
「ちょっと、待って下さいまし!」
セレーネさんが緊張感の伴う声でそう鋭く発する。
俺たちもその声に動きが止まった。
ただならぬ雰囲気。
セレーネさんは続ける。
それは……
「魔族の集落が燃えていますわよ!?」




