第41話 精霊使い
(あのハゲが何かやったのか?)
大谷さんが兵団長になっている姿が想像の外だったから思わずそう訊ねる。
俺の中では大谷さんは弱者で、スキルにもなかなか目覚めなくて。
辛い立場にいる女子だった。
だけどトオルは
(そうじゃないな。依怙贔屓とかそういうのじゃない)
(実力だ)
ハッキリ、そう返して来たんだ。
実力……
(どういうことなんだよ?)
ハッキリさせたかった。
状況が見えなかったから。
なのでそう突っ込んだ。
トオルは俺のその言葉に
(大谷さんのスキルは「暴力無効」だったんだ)
暴力無効……
その詳細は
肉体的に絶対的に敵わない相手からの攻撃の一切全てを無効化する。
そんな、とんでもないもので。
加えて
(大谷さんはこの世界の精霊全てに愛された存在で、そういうのを精霊使いって言うらしい……)
精霊使い。
それは……この世界でごくまれに出現する、修行なしで全ての精霊の声を聞くことができるという「生まれながらの魔法使い」のことだという。
魔法使いの最高位の存在で。
普通の魔法使いは精霊にお願いして魔法を使うのに。
精霊使いには精霊の方が従いに来るというんだ。
だから「精霊使い」と呼ばれる。
だからまとめて簡単に言うと……
今の大谷さんは、何をされても一切ダメージを受けない上に。
精霊が自分からチカラを貸してくれるので、五大精霊の魔法全てを使える状態らしい。
(大谷さんは実はこの世界に来てから、既に精霊の声を聞いていたらしいんだ)
(でもスキルに目覚めてなかったから、これだけで自分の力を見せると生意気だと袋叩きにされて潰されると思い、ずっと黙っていたって)
(ずっとずっと、耐えていたって言って……)
トオルは教えてくれた。
そこから何が起きたのか。
それは……
絶対の防御力と無敵の攻撃力。
その2つを手に入れて、大谷さんはまず最初に自分を虐めていた不良グループ……
小原と五分、そして舎弟2名を魔法でフルボッコ。
4人に土下座をさせて自分へのいじめ行為を詫びさせた。
そしてレイコ様と呼ぶように命じて……
……大谷さんのフルネームは大谷礼子なんだよ。
だからレイコ様。
そして続けて自分がこのクラスの指導者になると宣言。
文句があるなら名乗り出ろとクラスの皆に言い放った。
その結果……
誰も大谷さんの言葉に異を唱えなかった。
……だそうだ。
大谷さんがそんなことになっていたなんて。
俺がその場に居たら、言ってやりたかった。
アンタそんな真似して恥ずかしくないのか!?
って。
ソウジが絶対に辛い思いをする。
自分が救った女の子が、力を手に入れてそんなことになってしまうなんて。
ショックを受ける俺に
(大谷さんはそのままハゲに新兵団の兵団長になりたいと申し出て、ノーザリアへの全面協力を誓ったんだ)
そのとき
自分の前居た世界は腐りきってる最低の世界だった。
私がこの世界に来たのは神の導きだと思う。
だったらここに理想世界を築いて私は幸せに暮らしたい。
彼女はそう、ハッキリ言ったそうだ。
あのハゲに。
俺はそのトオルの話に……
暗く悲しい気持ちになった。
大谷さん……
キミは何も感じなかったのか?
この国を牛耳ってるあのハゲは、ソウジを虫を潰すように殺したんだぞ……?




