第40話 魔法指導と新規兵団
魔族の集落に戻って、セレーネさんが借りている客人用の家に戻り。
とって来たパイアの肉を塩焼きにしたものを食べたら、俺は精神力が回復して元気になった。
うめえええ……
肉食傾向が強いと聞いてたから、肉が臭いのでは思ったんだけど。
パイアの肉は美味かった。
背中の肉だし筋肉の塊に思えたけど、適度に脂も乗ってて。
いい感じの硬さで。
旨味も強い。
食べ出したら止まらなかった。
そしてセレーネさんは食べ残した肉を魔族に持って行って、お裾分けをした。
家の借り賃みたいなもんなんだろうな。
自分がここにいることであんたらにも利益がありますよ、というアピール。
で。
「グレイアールグレイアールデスモス」
「グレイアールグレイアールデスモス」
セレーネさんの唱える詠唱を俺は復唱する。
食後に魔法の詠唱の指導を受けたんだ。
俺はセレーネさんの詠唱を聞いて、そっくり真似をする。
だけど
俺はビシッと指を突きつけられて
「唱え方に気持ちが入ってませんわ!」
……駄目だしされる。
わけわからんので
「あの」
「何か?」
手を上げて質問をしようとする俺に。
セレーネさんが厳しい目を向けて来る。
俺は一番の疑問点を口にした。
それは
「グレイアールグレイアールデスモスって何か意味あるんですか?」
これは日本語ではない。
当然ノーザリア語でも無いはずだ。
リスリーは日本語詠唱を「日本語技能を持たない人間に内容が分からないようにするため」って言ってたしな。
だったら、じゃあ何なの?
その答えは
「そんなもの、意味はありませんわ!」
セレーネさん、キッパリ即答。
ええ……?
リアクションに困る俺にセレーネさんは
「強いて言えば、こういう言葉を大真面目に唱えられるようになることに意味があるんです」
彼女曰く、真剣にこういう言葉で詠唱をし、精霊に魔法の行使を命じることで
精霊のテンションが上がり効果が増大するんだそうだ。
で
「おそらくですが、それで精神の質が向上し、少ない精神力徴収量で精霊を満足させられるんだと思います」
……なるほど。
納得できない内容では無かった。
テンションの話は前にリスリーから聞いてたけど、精神の質の向上か。
そういう理屈は想像してなかった。
「ですから」
セレーネさんは仁王立ちで詠唱する。
「グレイアールグレイアールデスモス」
俺復唱
「グレイアールグレイアールデスモス!」
「テレがあります!」
叱責。
こうして俺は、厳しい魔法指導を受け続けた。
その晩。
家の外に1人で出て
(なぁトオル。俺、魔法を手に入れたよ)
俺はトオルに報告するために脳内で呼び掛けた。
前に地下闘技場で勝った後に1度連絡とったけど
そこから忙しくて。
しばらくぶりだ。
すると返事が返って来る。
(そうか。おめでとう)
……少し、沈んだ調子の言葉が。
何かあったのかもしれない。
なので
(……そっちで何かあったのか?)
そう訊ねる。
すると少し、沈黙があり
トオルは
(とうとうクラス全員がスキルに目覚めて)
(それで召喚騎士の新規兵団が出来たんだ)
そうなのか。
トオルは何にされたんだろうか?
トオルのスキルの内容を考えたら、前線に配置するのはアホの極みだからあり得ない。
後方支援で使うのが最適解。
そう思っていたから心配はしていなかったけど。
そこを訊ねると返って来たのは
伝令のハブ役。
みたいな役割だそうだ。
トオルは知ってる人間といつでも脳内会話出来るから、それでトオルを介して全体の情報を共有する構図にするらしい。
やっぱりそうなったか、というのが俺の正直な感想だった。
でも、それがトオルの沈んでいる理由じゃ無いだろう。
それぐらい俺にも分かる。
だから
(それ以外は?)
俺の追加の問い。
その俺の問いに、再び迷いの沈黙。
そしてトオルは
教えてくれた。
他に何があったのか。
それは
(大谷さんが兵団長になった)
……えっ?
あの……大谷さんが?




