第39話 魔法を使ってみた
「マサヤ様おめでとうございます」
「それはそれは何より」
俺が精霊の声が聞こえたと報告すると
リスリーとセレーネさんがそう言ってくれた。
「これでどうすれば魔法を使えるの?」
まず俺は一番大事なそれを訊ねる。
精霊の存在を感じられるようになったが、ここからどうすれば魔法を使えるのか……?
俺のそんな問いに対しリスリーは答えてくれた。
それは
「精霊に呼び掛けるつもりで念じればできます」
精霊に呼び掛けるつもりで念じる……
確か、生命の精霊は
傷を治す。
感覚を鋭敏にする。
病気を治す。
……そういうことが出来るんだっけ。
だったら
(生命の精霊よ。俺の喉の調子を治してくれ)
魔法の試し撃ちとして、そう念じた。
実は今朝、ちょっと咳が出てたんだよね。
そのとき喉もちょっと腫れて痛かった。
日が昇って来ると無視できる程度にまでは治ったけど。
今も少し喉に何かある気がする。
だからまた体調が悪くなるかもしれないなと思っていた。
また明日の朝に調子悪くなるんじゃないのかとも。
所謂「体調不良のスイッチが入りかけてる状態」だ。
なのでそう呼び掛けたんだ。
すると
(あれ……?)
ずーん、と。
しんどくなった。
身体の調子が悪いっていうんじゃなくて。
なんというか……なんかしんどい。
動けないわけじゃない。
動くのが何か嫌なんだ。
これはあれだ。
道場で稽古してて、壁にぶち当たって上手く行かないときに感じたやつだ。
あと、高校受験のとき。
中3になった後、3か月後くらいに「先の長い受験勉強」を自覚してしまって。
ウンザリして感じたやつ……
何も考えたくない気持ち。
もう身体を投げ出して横になりたい気持ち。
ストレス。
面倒くささ。
そんな感じ。
精神的な疲労……
これが「精神力の徴収」ってやつか……?
「どうしましたマサヤ様?」
リスリーが俺の様子の変化に気づいたみたいで。
そう声を掛けてくれる。
「ちょっと今朝、調子悪かったから治してって頼んだらしんどくなった」
俺は億劫に思いつつ彼女にそう返す。
するとだ
「ああ、詠唱無しで精霊にお願いしたらそうなりますわ。初めてで、しかも詠唱無しなんて」
セレーネさんがそう言って俺に、そりゃそうなるよ、と言いたげにそんなことを。
そうなのか……
「ちょっとの体調不良で良かったですわ。これが本物の体調不良だったり、怪我を治すことだったらアナタ、倒れてますわよ」
嘆息混じりに。
なるほど……
「家に戻ったら、詠唱について考えましょう。そんなに難しくありませんから」
言ってセレーネさんがパイアの肉を詰め込んだ毛皮の包みを持って立ち上がる。
彼女は「帰りましょう」とは言わなかったけど……
そのまま歩き出した。
俺は
「持ちます」
さっき自分で言ったことではあるし。
セレーネさんを追いかけ、彼女が持っている包みを少し強引に持たせて貰う。
……結構重かった。
この肉、俺たちで食べきれるのか?
しかし詠唱か……
マジ、どうしようか……?




