第30話 比較的平和とは
先に進むに従って、足場が平らに近づいて来て。
木の数も少なくなってくる。
山のエリアが終わりに近づいている……
そしてさらに先に進むと……
リスリーがさっき言った通り。
開けた場所に出た。
見渡す限りの草原。
王国側の領土と違い、整備されている様子がまるで見受けられない。
手つかずに見える土地だ。
「ここが魔王領なんだな……」
名前の物騒さに似合わない。
ただの未開の土地に見える。
魔王領なんて言われると……
ドラゴンが空を舞ってて、ゴブリンが闊歩してて。
そこらじゅうで魔法が飛び交っている、草一本生えてない不毛の大地。
そんなイメージを抱きがちだけどそうじゃない。
ただ、王国の支配が及んでいないだけの場所なんだな……
「さて、では魔族の集落に向かいましょう」
リスリーはそう言って迷う様子も見せずに歩き出す。
「場所分かるの?」
「大体は聞いてますし、彼らは縄張り意識が強いので」
こっちを発見したら、おそらく向こうから接触して来るはずです。
俺はリスリーのその言葉に
魔族は無法者の集団なんだろ?
いきなり弓矢や魔法で襲ってきたらどうするんだ、と思ったが……
多分、そういうことをしないから「比較的平和な部族」なんだろうな。
そして1時間くらい歩いただろうか?
それは突然来た。
……いきなり、目の前に矢が突き刺さったんだ。
ギョッとして、少し肝が冷える。
あからさまな警告。
「魔族か?」
そう俺は先行して歩いているリスリーに訊ねようとした。
だけどその前に
「……何やねんお前ら。見ない顔やけど王国のモンかいな?」
向こうから来たんだ。
向かいにあった大岩の影から。
毛皮の服を着た数人の男たち……
こっちに敵意を向けて来る異様な男たちが。
どこが異様かというと、身体のバランスがおかしいんだ。
全体的なフォルムは普通の人間と変わらないんだけど……
まず、筋肉量が全然違った。
まあ、筋力に開きがあるとは聞いてたけどさ……
大胸筋の発達具合が、まるで達磨のように感じる。
で、ずんぐりした印象があるんだけど、背は低くない。
多分、頭の大きさの比率が俺たちより大きいんだと思う。
手足の短さもあって、達磨のイメージの体型だ。
つーかさ
言葉、大阪弁なんだが……?
魔族は日本語、しかも大阪弁を話すのか?
リスリーは特に驚いてないように見える。
知っていたのかもしれない。
「はじめまして魔族の皆さん。これは、お近づきの印です」
突然警告の矢を射て来た魔族たちにリスリーは怯えた様子も見せず、包みを差し出す。
男たちはそれを見て、弓矢を下ろした。
「なんやなんや、お客さんかいな」
「甘い菓子と酒をくれるなら話は別やがな」
さっきまで発していた凶暴なオーラはどこへやら。
ニコニコ顔に変化する魔族の男たち。
男たちは包みを目の前で開封して
「ほほう……中身はヨーカンと酒やね。酒は葡萄酒か……?」
「いや、ブランデーやでこれ。材料は確か同じモンのはずやけど……」
ワイワイと中身について話をしている。
見る限り好評のようだ。
大丈夫なのかな……?
気にはなるが、俺からはどうしようもない。
男たちは包みを元に戻し、大切そうに抱える。
そして
「ここに入って来たゆうことは、何かしらワシらに用事があるんやろ? モノはもろたから手伝うたるわ」
そう言い。
俺たちに手招きをした。
「ついてきぃ」
そしてその言葉を言って。
彼らは歩き出した。




