第25話 賭け試合本番
そして3日経った。
賭け試合は夕方、日没後だ。
場所はダンジョン跡地……
元々、この大陸にはダンジョンという謎の建造物が存在してて。
その多くが地下迷宮の形を取っている。
そして生きたダンジョンからは、魔物が湧きだして来る特性がある。
なので、この王国領土内にあるほとんどのダンジョンは、とっくの昔にその最奥にある核……ダンジョンコアを破壊されて、ただの地下迷宮に成り果てているのが普通なんだけど。
ダンジョンコアを破壊された元ダンジョン……ダンジョン跡地が個人に売却されたり、国に有効利用されてるらしい。
賭け試合の会場になってるダンジョン跡地は、とある豪商が倉庫として買い上げているそうで。
試合の主催もその豪商とのことだ。
俺たちは約束の時間に約束の場所に出向いて、待機していた馬車に乗ってその場所に辿り着いた。
馬車に乗り込む前に、例の闇業者が
「キミ、引っ込みがつかなくなってるんじゃないの?」
「今ならキャンセルを認めてあげてもいいよ?」
そう、ニヤニヤしながら囁いて来た。
俺はそれをダンマリで無視。
闇業者はそれが面白くないようで
フン、と鼻を鳴らして
「まぁ、いいさ。警告はしたからね?」
「死ぬ瞬間に逆恨みして化けて出るのはよしてくれよ? 男ならさ?」
そう言って、俺たちより先に馬車に乗り込み、馬車の座席にふんぞり返るようにして座る。
てめえは黙ってろ。
しねえよ心配しなくても。
俺は勝つからな!
そう思いつつ、俺たちも馬車に乗り込んだ。
「マサヤ様、私はあなたが勝つと信じています」
俺の隣に座っているリスリーは俺の勝率を上げるためだと思うけど、俺に対してネガティブなことは一切言わなかった。
それが俺にはありがたい。
俺は相手を甘くは見てない。
自分の武器である「スキル」が、反則級に強いとは思って無いし。
厳しい戦いなのは分かってるんだ。
だけど
「……キミの対戦相手はねぇ……打撃格闘最強と言われるムエッタイの達人で、名前をアガッド」
闇業者は俺の心を折るつもりなのか。
楽しそうに対戦相手の説明をする。
何でも対戦相手の黄金パターンは、まずローキックで足を折り、動けなくなった相手の腕を折り。
両手両足を破壊した後、睾丸を潰し、その後腹部を踵で蹴り込んで内臓を破裂させ、瀕死になった後に首をへし折るというものらしい。
……なるほどね。
これにはありがとう、と言いたかったよ。
何も知らないよりはずっと戦いやすいしな。
「ウォン! セイダルドゥナネメルトネグ! スティエトライセップスフクタムウオーエヴネエブグニティアウロフ!」
「レッツフクタウリトヌエトドネオットイースエトエヴァーブレグネラッハエカトノエトエルビンシヴニノイプマッハ、アガッド!」
そして。
俺は今、会場に立っている。
俺と対戦相手は、同じ格好……トランクスのようなユニホーム1つの姿で会場の中央で向かいって立っていて。
傍で司会と思しきちょび髭の男がノーザリア語で声を張り上げていた。
場所は広い石の部屋で。
その広さは100平方メートル以上はありそうだ。
部屋の縦横の長さがそれぞれ10メートル以上は確実にあるように見えたから。
部屋の出入り口には鎧兜で武装した男たち。
そして部屋の中央部分に俺と対戦者。
あと司会。
その周囲を取り巻くように、身なりのいい男女……おそらく、このイベントのお客。
そこの中に、俺をじっと見守っているリスリーの姿もある。
……さて、勝つぞ。
最初から負けるかもしれないなんて考えてて、勝てる相手じゃない。
俺はそう考えて、勝つことしか考えずに対戦相手を見る。
アガッド……鋭い冷酷そうな目と尖った顎、ボサボサの頭。
そして鍛え抜いたゴリゴリの格闘家ボディの巨漢……アガッドを。
その覇気から、相手の強さは伝わって来る。
俺は自分を奮い立たせるため
「オラ来い!」
そう、鋭い声を発した。




