第22話 大谷さん
大谷さん。
……ソウジがいじめから庇った子だ。
雰囲気が暗くて、小柄で、痩せっぽちで。
自分の気持ちを口に出して言うのが苦手な女子だ。
髪の毛はくせ毛で、天パが掛かってる。
そのせいか、あまり髪を伸ばして無い子だった。
暗いだけで特に悪い人間では無いと思うけど。
ソウジ以外誰も庇わなかった。
不良グループに目を付けられるのが嫌だったからだ。
(大谷さんは大丈夫なのか?)
元の世界ではソウジがいたから彼女はいじめの標的から抜け出せたけど。
こちらの世界に拉致されて、そのソウジを殺された。
また、酷い目に遭ってるんじゃないのか……?
スキルに目覚めていないなら特に。
俺のそんな言葉に
(一応、あのときみたいな暴行は受けてないみたいだけど、馬鹿にされてるよ。無能ネクラ女って)
返してきたトオルの言葉は罪悪感に満ちていた。
彼女を庇えていないことが負い目になってるんだ。
自分が動くことで、恋人の岩戸さんが酷い目に遭う可能性を考えてしまって、動けないんだと思う。
その悔しさで、俺は
「くそがっ」
俺は、寝ていたベッドのマットを叩いていた。
……なんとなくこれ以上、話すのは良くない気がした。
俺にとっても、トオルにとっても。
なので
(ありがとう。また連絡する)
(ああ。試合に勝ったら勝利報告してくれ)
そう言って、俺たちは会話を打ち切った。
念話会話を終えて、俺はベッドから起き上がった。
3日後の賭け試合まで、泊まる宿の部屋。
リスリー曰く、冒険者が好んで泊まる宿屋らしい。
特に飾り気がない、簡素な部屋に見える。
板間で、壁も壁紙みたいなものが何も無い。
部屋の備品はベッドがあるだけの簡素なもの。
あまり広くない。
値段は訊かないことにした。
もう決まったことだしな。
……ただでさえ「俺とリスリーが同室」ってことに「ちょっとそれマズいだろ」って思ってるのに。
これ以上面倒事を増やすのは良く無いだろ。
料金の問題で。
彼女が言って来たんだ。
マサヤ様、同じ部屋で寝起きしてください、って。
一応俺は「男女で同室はマズいだろ」って言ったけど。
彼女は「それは宿泊費を倍にしてでも避けなければいけないことですか?」と真剣な顔で言って来て。
さすがにそれを押し通すような意志力は俺には無かったんだ。
まぁ、ここまでリスリーと旅をしてきて。
俺は彼女が悪い人間じゃないのは確信してるし。
外見も普通に綺麗というか、可愛いし。
嫌なわけではないんだ。
でもさ……
色々気になるだろフツー。
俺、彼女居たこと無いんだぞ?
……しかし。
腹が減ったな……
リスリーは帰って来ないし。
部屋を出て、下に降りて行ったきり。
彼女が勝手に出歩くなんてあり得ないけど、一体何をしてるんだろうか……?
そう思い、ちょっと様子を見に行くために部屋を出て。
階段を降りて食堂スペースの大部屋に行ったとき。
俺は目を疑った。
リスリーが、金属製のジョッキみたいなものを複数持って、客に給仕をしていたからだ。
服装も冒険者風の装備ではなく、ウエイトレスに相応しい緑色のワンピース服になってる。
胸元が大きく開いてて、かなり煽情的な雰囲気を感じる服だった。
そんな衣装を身につけて、酔客相手に愛想笑いを浮かべながら。
酔客の喧騒の中、彼女は働いていた。
……えっ、どうして?
リスリー、何やってんの?
どうしてこんなことになってるの?




