第212話 俺たちの決断は
「ちょっと考えさせてくれ。あと、ありがとう」
「大谷さん。ありがとうございます」
大谷さんに礼を言い。
俺たち2人は再び自室に戻る。
……どうする?
大谷さんは多分出来るという。
それはおそらく、体感90%以上の確実性はあるってことだろう。
それ以下なら、おそらく大谷さんはそんな話をしないはずだ。
大谷さんは頭良いし。
でも
絶対大丈夫だ!
これが言えないんだな。
きっと。
……ロシアンルーレットってあるよな。
拳銃の銃口をこめかみに当てて引き金引くやつ。
あれは6分の1の確率で弾丸が飛び出て、やった奴が死ぬわけだ。
あれが仮に、1万分の1の確率だったとしたらどうだ?
引き金を笑って引けるか?
……引けないよな。
1万分の1って確率は1パーセント未満の確率だ。
限りなくゼロに近い。
だけど、ゼロじゃないんだよな。
だったら出来れば引きたくない。
1パーセント未満でも、当たれば終わりなんだ。
だから「絶対大丈夫」のお墨付きのある選択肢で無いのなら、正直恐ろしくてたまらない。
……だけど。
俺は
「リスリー」
「何ですかマサヤさん?」
部屋に戻って来て。
並んでベッドに腰掛けて。
じっと考えていたんだけど。
俺は卑怯だと思ったが
「……どうする?」
隣に座る彼女の目を見て。
情けないけど
「キミの意見を聞かせてくれ」
半ば決断を彼女に投げた。
自分一人で背負いきれないと思った。
俺だけじゃ無くて。
彼女の運命。
そして彼女のお腹にいる俺たちの子供の運命も絡んでるから。
リスリーは俺の言葉を受けて
「……行きましょう」
すぐに、そう返して来た。
早すぎると思った。
考えてないみたいに思えたんだ。
だから
「……俺の言うことだからと忖度しなくていいよ」
俺はそう言ってしまった。
だけどさ
「違います」
少し、ムっとした声でそう言い返して来た。
そのまま彼女は
「……この子が大きくなって、自分のせいで父上が故郷に帰るのを諦めたんだと思ったらどうするんですか?」
そんな、考えたくない未来を口にする。
俺たちの子が、自分の存在に罪悪感を抱くような。
そんな未来は見たくない。
確かに嫌だ。
「それに」
そしてリスリーは優しい声で。
「きっと聖女様と勇者様がお守りくださいます」
そんなことを言ったんだ。
神頼み。
嗤う奴もいるかもしれないけど。
「私たち、別の世界で生まれたのに、こうして出会って、愛し合って、子供まで授かったんです」
「だから絶対大丈夫です。運命だと思いますから」
リスリーの言葉には恐れが無いように思えた。
リスリーは異世界渡りが失敗するとは欠片も思ってない。
俺たちの出会いに運命を感じているから。
でもさ……
最後の最後は、やっぱり神様に願うしか無いのかもしれない。
ヒトの力には限界があるから。
だから俺も
「……分かった」
そうすることにした。
「一緒に帰ろう……リスリー」
俺はそっとその手を彼女の手に重ねながらそう言い。
「ハイ、マサヤさん」
リスリーは俺の頭を胸に抱えるように引き寄せて。
耳元で
「一緒にいきましょう……あなたの故郷に」
そう言ってくれた。




