第207話 異世界召喚魔法の仕組みは
リスリーの実家訪問で結婚の許可を貰って数か月後。
トオルの屋敷で
休みの日である命曜日。
「異世界召喚の魔法ってのはさ」
大谷さんが屋敷のリビングで俺たち相手に研究中の魔法の話をしてくれた。
皆、ローテーブルに置いたお茶のボトルからカップにお茶を入れ、それを片手に大谷さんの話を聞き入っている。
「巻き込み、なんだよね」
「巻き込み?」
大谷さんの言葉に俺がそう返すと。
大谷さんは真面目な顔で頷いた。
「そう巻き込み」
「何に巻き込むの?」
元岩戸さんが突っ込んで訊ねる。
(トオルと結婚して名字が変わったから「元」だ。その左手薬指には、トオルとお揃いの指輪が光っている……)
ここに来たときは俺とリスリー相手以外は言葉が固かったが
「それは……元々、異世界に行きたいなと内心思ってる人間ですね」
今では敬語だけど、普通に話せるようになっていた。
大谷さんは少し興奮してる。
研究してて分かってきたことを俺たちに話すのが楽しいのかもしれない。
「で、本来ならその人間だけ召喚するところを、周囲にいる人間も巻き込んで召喚するんです」
……なるほど。
あの日の朝。
そういうことが起きていたんだな。
「何故そういうことをしたのって……コストの問題か」
元岩戸さんは質問しながら、自分で答えに辿り着く。
「そういうことですね」
そして大谷さんが大きく頷き、肯定。
異世界召喚は連発できる魔法じゃ無いしな。
やるならごっそりいっときたいじゃないか。
……ごっそりされる方じゃたまったもんじゃないけどな。
そう毒づいていたら。
「獲物が沢山いることも分かったりするのか?」
そこにソウジが質問する。
するとすごく嬉しそうに
「起点になる人間の周囲の様子を見る魔法ってものもあるんです」
大谷さんはそう返した。
それで人が沢山いると分かったら、魔法を発動させる。
そういう流れらしい。
(なるほどな)
そのときふと
起点になる人間の周囲が分かるというなら
(俺たちが召喚されたときに誰が起点になったのか分かるのか?)
そんな疑問が頭に沸いたけど。
流石にその疑問は訊ねなかった。
構造上、俺たちがこんなことになったのはそいつが
現実から逃げたい。異世界に行きたい。
なんて、現実逃避をしていたせいだ。
でもさ、そいつだって別にこうなることを望んでいたわけじゃないだろ。
自分の妄想に巻き込まれて、30人以上の人間が異世界に拉致されることなんて誰が分かるって言うんだ?
だから訊ねなかった。
誰も。
……いや
「大谷さん、その起点になった奴が誰か分かったとしても、絶対に公表しちゃダメだぜ?」
トオルが真面目にそう釘を刺した。
それに対して大谷さんは
「それぐらい分かってます。見くびらないでください」
少し心外だ、という色の声で返す。
その言葉にトオルは
「だよな。スマン」
今の言葉はあくまで確認だ、気を悪くしないでくれ。
笑みを浮かべてそんな調子でそう返し
自分のカップのお茶を飲み干して
「……その異世界召喚の魔法のメカニズムも色々な意味で、公表しない方が良いよな」
そう呟いた。
ソウジはその言葉に頷く。
「だな。危険な魔法だから秘密を保持する意味合いの他に、システムが分かったら犯人捜しで余計な面倒が起きそうだ」
冷静に、魔法のメカニズムを公表した場合に起きそうな二次被害について口にする。
俺もその辺は同感だったよ。
今更犯人捜ししても意味無いじゃないか。




