第204話 リスリー怒りの視線
で、コバルとゴワケを連れて帰った。
2人は大谷さんを襲った罪を「被害者の大谷さんが許したから」ということで不問にされ。
また召喚騎士の地位に復帰した。
復帰した2人は、周囲の印象は悪いまんまだけど、前ほどはトラブルを起こしてはいないみたいだ。
俺が「俺の顔を潰したいなら前みたいに好き勝手やれよ」と釘を刺したんだけど、それが効いてるらしい。
「ごめんなさい村田君。私たちとても酷いことをしたわ」
「てっきりあの2人をその……殺したとばかり」
王城に用事で出向いたとき。
なんか元クラスメイトの女子数人に話し掛けられた。
確か名前は……
根鳥、美市、槍間……
別に仲良くは無かったんだけど、何か急に話し掛けて来た。
俺はこれから、外で待ってくれてるリスリーと一緒に、リスリーの実家に行く予定なんだけどな。
王城に行ったのもそれで。
所謂少しだけ王城の呼び出しに応じられない届け出を出しに来たんだ。
「いや、別にいいよそれは。あのときは覚悟の上だったし」
俺はそう一言返して、とっとと帰ろうとした。
俺はこれからリスリーの実家に行って、リスリーのお母さんに挨拶に行くんだから。
だけど
「ねえ、ちょっと一緒に食事に行かない?」
「幸い多分呼び出しは掛からないわよね? 今日は」
「お詫びがしたいの」
何か彼女らに腕を掴まれ、そんなことを言われた。
……そこまでしなきゃいけないことか?
殺人者が怖いのは当然だろ。
そう思って彼女らの顔を見たら……
考えが変わった。
(なんだか、肉食獣の目をしている気がする)
彼女らは俺を獲物と見ている。
頭の片隅でそう思ったんだ。
で
(ひょっとして俺の俸給が数倍に上がったとか思われてんのかな?)
そんなゲスいことを少し考えた。
俺がこの国を変えたんだということは、今は周知の事実になっている。
そのために後宮に乗り込んだことも知られてる。
だからまあ
(俸給が数倍になってるんじゃないかと思われたとしても、変じゃないよな)
実際はそんなこと無いんだけど。
確かに上がるは上がったけど、数倍なんてもんじゃない。
ホンの少しだ。
でも
俺、給料そんなに上がってないよ?
そんなことは言えないし。
失礼だろ。
なので
「ゴメン、今人を待たせているから」
そう言って強引に話を打ち切って去ろうとしたが
「じゃあいつならいい?」
「私、美味しい店知ってるから!」
……そんな追撃が。
そういやさ。
クラスの奴らに、クラスメイトと結婚したり。
この世界に呼ばれてから国に世話して貰った異性と結婚した奴が何人かいる。
で。
岩戸さんもトオルと今月結婚するらしい。
色々済んだし、潜り抜けたから頃合いだと思ったみたいだ。
「いや、だからちょっとそういうのは」
「マサヤさん」
そのとき。
リスリーの声がした。
……血の気が引いた。
その声に、確実に怒りが含まれているのを感じ取ったからだ。
慌てて弾かれるようにそちらを向くと
リスリーが旅装束で立っていて。
背負い袋を背負ってる。
で
「なかなか出て来ないから見に来ました」
「あ、悪い」
彼女は別に怒ってるふうには見えなかったけど。
声に確実に棘があった。
腹立つのかな。
……立つだろうな。
俺だって、リスリーが他の男に口説かれてるのなんて見たく無いし。
元クラスメイトの女子3人は、突然現れたリスリーに気圧されて何も言えなくなってて。
俺がその隙にリスリーに駆け寄ると、彼女は俺の腕を掴んで。
「行きましょう」
ニコニコ顔で歩き出した。
でも去り際に。
振り返って、元クラスメイト女子たちに睨みを利かせたことを、俺は見逃さなかった。
彼女のその視線は酷く冷たくて。
俺は彼女のその振る舞いに少し驚いたが……
ホンの少しだけ、嬉しさがあった。
褒められたことじゃないんだけどな。




