第203話 数か月山で過ごした結果
聞き覚えのある声が男の声で。
「コバルか?」
そう言って振り向くと。
……異臭がした。
すごく酸っぱいニオイだ。
まあ、予想はしていたけど。
山の木々の間。
そこにはすっかり着ていた服がボロボロになり、驚いた表情を浮かべている小原湯治と五分倫子がいた。
コバルのやつは髭が伸び放題で、高校生らしさが消えた容貌になってた。
学生服を着ているけど、学生に見えない。
そしてゴワケは頭が金髪が伸びて根元が黒い、所謂プリン頭になってて。
セーラー服もボロボロになっていて。
スカートを残して何故か上着の代わりに獣の皮を着ていた。
……ひょっとしたら汚れすぎてしまって、女のプライドというか美意識で捨てたのかもしれない。
こんなのだったら獣の皮で上着作って着た方がマシって。
で、俺は
「よぉしばらく」
馬上からそう一言言って
「リスリー、あれを」
「分かってます」
リスリーにお願いし、用意していた着替えと。
あと、灰石鹸と手拭いその他が入った包みを渡した。
灰石鹸……格安の庶民用の石鹸で。
色は黄色い、脂の塊みたいなもの。
絶対こういうことになってると思ったから、持って来たんだよ。
「とりあえずそこに入ってる石鹸で、身体洗って来て」
この近くに川があったはず。
どうせ2人ともそこを利用してるはずだし。
「お前ら2人とも気づいて無いだろうけど、スッゲー臭いから」
で、ハッキリ言ってやった。
事実だし。
2人ともショックを受けていた。
やっぱり気づいてなかったらしい。
鼻が慣れて分からなくなってるんだろうな。
遭難者のあるあるで。
でもゴワケがちょっとショック過ぎたのか涙目になってて。
それは流石に少し悪いことをしたと感じた。
で、俺は誤魔化すように
「ショック受けてる暇あるなら川で身体を洗うんだよ! 連れて帰ってやるから!」
大声で用件を言った。
すると2人ともまた驚きの表情を浮かべる。
「えっ、帰るって」
「どういうことそれ? 意味わかんない」
そして混乱。
まあ、そうなるよな。
でもまあ
「そういう話は後でするから、先に身体洗って来いよ! あとコバルはゴワケに髭を剃って貰え! 鏡無くてもそれならできんだろ!? 剃刀も入ってっから!」
先に身体を洗って欲しかったから俺は再度声を張り上げた。
そして大体1時間くらい過ぎた後。
あの強烈な臭いが一応なくなった2人が、俺たちが持って来た着替え……飾り気の無いこっちの世界の適当な普通の服を着て。
俺の話を聞いて感涙していた。
ソウジが生き返ったことと。
そしてソウジ自身が
「お前らのやったことは別にどうでもいい」
そう言ったという話を。
そんな俺の話を聞き
「俺、正井に謝るから!」
「アタシも謝る! 爪を7枚くらい剥がして謝る!」
何か興奮してそんなことを口走っている。
俺はそんな2人に、頭を掻き毟りつつ
「謝るのはいいけど、相手のことよく考えろよ? あと爪を剥がすのはドンビキするから絶対止めろ」
そう言って、一応釘を刺した。




