第138話 お前のせいだ!
俺の呼び掛けに
「……出て来ませんね」
リスリーが俺の隣で厳しい表情でそう呟く。
俺は
「あの馬、どうみてもダンジョンアイテムで調教された馬だよな?」
そこを指摘する。
リスリーは俺の言葉に頷いて。
「ですね。偽物を作れる環境でもありませんし」
そう肯定。
偽物は作れない。
ダンジョンアイテムもだけど、囮用の馬を用意するのも現実的では無い。
それはそう。
だったらやっぱりここにいるだろ。
……奴ら、黙っていれば嵐が過ぎ去ると思っているのか。
それとも……
そのとき
「小原湯治! 五分倫子!」
リスリーが俺の隣で声を張り上げた。
ギョッとして俺は目を向ける。
何故なら……
「今すぐ出て来ないと、小屋ごと焼き討ちです!」
「私たちはあなたたちを別に殺してもいいって言われてるんですよ!」
その声には怯えが全く無くて。
ハッタリとは思えない強さがあった。
……まあ、確かに「別に殺してしまっても良い」とは言われてるけど。
だからといって、こういう脅しをする発想が俺には無くて。
(騎士だからかな。即座にこういう言葉が出てくるのは流石というか)
「ありがとう。リスリー」
ボソリと俺は礼を口にする。
俺の言葉にリスリーは
「当然でしょ」
なんとも無しな感じでそう返してきて。
本当にありがたいと思った。
そして、だ。
リスリーの思惑通り。
焼き討ちするぞという脅しは無視できなかったらしい。
山小屋の入り口が開き、そこから学生服とセーラー服を着た2人が。
こっちを凄まじい目で睨みつけてくるコバルとゴワケが姿を現した。
「やあ、馬鹿なことをしたな」
再会早々。
俺は2人にそう言った。
俺の言葉に
「黙れキモ男!」
ゴワケが激昂し
「お前が邪魔しなければあのドブスの命を取って、アタシたちが天下を取っていたんだ!」
……俺が気絶している間に、大谷さんが言ったのかもな。
ゴワケはあのとき俺が何をしたのかを理解していた。
そして
「クズッ! キモ過ぎッ! 死ねよッ!」
……酷い語彙で、俺を罵倒して来る。
俺はそれを無視し
「……お前ら、他人を舐め過ぎなんだよ」
言ってやった。
それに対して即座に
「ハァッ? 意味不明なこと言うなッ!」
ゴワケが噛みついてくる。
まるで脊髄反射だ。
俺は
「……何でお前ら不良たちが大谷さんのいじめに遭ってたか分かるか? 分かってないだろ」
意味不明、という言葉に対する答えを口にする。
こいつらが大谷さんにいじめられていた、という事実。
その事実を聞き、2人は目を吊り上げ
「そりゃ仕返しだろうがよっ!」
「そうよ! キモ過ぎ! 腐ってる!」
喚き散らす。
仕返し。その通りだ。
だけど
「……それだけじゃねえよ。やっぱお前ら何も分かってない」
そう。
それだけじゃないんだ。
こいつらはそれが分かってない。
だからこそこいつらは行動を起こしたし。
今、こうなってるんだ。
俺の言葉が相当ムカついたらしい。
今度はコバルが
「言ってみろよ!」
脅すように返して来る。
「お前、俺たちを馬鹿にしてやがんな!?」
……完璧に怒りまくった調子で。
何度も言うけど。
本当に分かってねえんだな。
だから大谷さんを虐めていたんだろうが。
正直残酷だと内心思いつつ。
俺は言った。
「じゃあ言ってやるよ」
2人の目を見つめながら
「簡単だ……誰もお前らが酷い目に遭っても、ざまあみろと思いはしても怒りに駆られたりしないからだよ!」
その……とてもとても、残酷な真実を。




