第134話 出撃命令
「思わないな!」
ハッキリ言った。
それは違うだろ!
「何でよ!?」
大谷さんは目を吊り上げて怒りの声をあげる。
そして
「私があいつらに何をされたか知らないの!?」
「毎日殴られた!」
「毎日気持ち悪いって言われた!」
「そして……」
「おばあちゃんの形見のお守りをどこかに捨てられたわ!」
「その仕返しで甚振ってやって何が悪いのよ!」
鬼のような表情で、大谷さんが自分が受けた被害を並べた。
……どれひとつとして「それぐらい何だ」とは言えない。
特に最後は酷過ぎる。
クズの所業。
それだけであいつらをゴミと呼んで差し支えない。
だから大谷さんがあいつらを憎む気持ちは当然だと思う。
だけどさ……!
「だからといって、相手の大切なものを同じように破壊したり、盾に取ってやるのは違うだろ!」
「やってること同じ下種じゃないか!」
俺が下種という言葉を使ったとき。
大谷さんは俺を射殺さんばかりの強い眼で睨みつけて来た。
そして
「何が下種よ! そういうのをね! 偽善って言うのよ! 知ってた!?」
そう吐き捨てる。
偽善……
俺の頭の中にリスリーの笑顔が浮かんだ。
俺だって、リスリーを人質に取られて脅されたら、大嫌いな奴に絶対服従してしまうかもしれない。
だからアイツにとってゴワケは、それぐらい大切ってことだろ……?
その気持ちを察して口にすることが偽善なのかよ……?
……ふざけんな!
俺は
「そういうふうに、嫌いな奴にいくらでも残酷になれる奴ばかりだから、俺たちの元居た世界は……」
「大谷さんが言う、クソな世界だったんだよ!」
そう衝動的に口にしていた。
その瞬間
パチンっ!
……いきなりだ。
いきなり、大谷さんの平手打ちを喰らった。
……やった大谷さんは怒りの表情のまま涙を浮かべていて。
そして
「信じられない……! クズの肩を持つなんて……! 正義面することがそれほど気持ちいいのかかしら?」
肩で息をするようにフゥフゥ息を吐きながら。
大谷さんは
勢いよくこの部屋のドアを指差した。
そして
「兵団長としてあなたに命じるわ! あの猿2匹をぶちのめしてここに引っ立ててくるか、奴らが盗んでいったダンジョンアイテムを全部回収してきなさい!」
「その際に勢い余ってブチ殺してしまっても別に良い! 私が許す!」
「ただし、それが出来なかったらあなたに罰を与えるわ! 覚悟なさい!」
興奮状態で、怒号のような声で俺にそんな命令を下す。
コバルとゴワケの捕縛命令。
捕縛できない場合は、持ち出したダンジョンアイテムの全回収。
……無茶苦茶だ。
ゴワケはともかく、コバルは雑魚無双がある。
一筋縄ではいかんだろ。
それを俺にやれとか……
無茶振りに近い。
だけどさ
「……分かった」
俺にだって意地がある。
ここで泣きを入れて前言撤回はやりたくない。
それに……
そもそも論として、俺はこの国を変えるというそれ以上の無茶振りをされてるんだ。
だったらいいさ
「やってやるよ」
そう言って俺は、寝かされていたソファから起き上がり。
真っ直ぐにドアに向かい、この部屋を出た。
「謝りたくなったらいつでもいいわ! そしたら命令を撤回してあげる!」
……そんな言葉を背中で聞きながら。




